電車で空席が2席あった。丁度左右の扉の中間で乗車した瞬間、2席の争奪戦が巻き起こった。私は右扉の前から三番目だったので、初っ端から獲得圏から外れ傍観していた。獲得したのは右扉の私より前の2人だった。左扉の一番前だった中年女性はコンマの差で敗れ、その瞬間嫌そうな顔を露骨に表した。当然だと思うけど、そのとき私は「こんなおばさんにはなりたくね」と反射的に思った。そして、一瞬でそんな自分に冷めた。たぶん中年女性じゃなかったら、私はそんな風に将来の自分を重ねて考えることもなかったし、偏見ばかりで物事を決めつける自分がすごくいやだった。なにより、人のことをとやかく言う前に私も獲得圏外ながら、虎視眈眈と誰かのミスを待ち、座ることを諦めてなかった。分かりやすく見えてないだけで、高望みをしていた私は圏内で正当に戦った彼女たちよりよっぽど図々しい。
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