かわいくなりたい

家族写真で自分ばかりに目がいく。客観的な姿は鏡の前の自分とは全然違った。普段鏡の自分としていろんな人に振る舞っていたと思うと恥ずかしくて、勘違い自体もきもい。後悔は写真でスカしてる自分を超えて、さらなる過去に戻る。マッチングアプリで出会った男の人たち。みんな体目的だから行為になるとどんな子でも持ち上げる。服を脱ぐ前に恥ずかしがって見せると「恥ずかしがるんだ、可愛いね。」その言葉に浮かれて私はしばらく可愛い子な素振りでそういう格好をしていた。可愛いは脱がせるためだけのルートなのに。

　ホームで電車待ってる間の３分間、色んなことに頭を巡らせても、意識はまた外見に戻ってくる。若干左頬骨の方が上がってる気がしてきて、左目が押されて細くなってるんじゃないかと違和感。電車が来て、ガラスに映る自分を見たくなくて、列の先頭から離れる。いつもは絶対座りたいから女性専用車に乗るけど、今日は座ることはどうでもいい。でも、乗車すると女性しかいない空間に守られている気分。外見のコンプレックスの陰には潜在的に異性が存在することを確信する。視界には片足をぶらんと脱力した、アリスみたいなブルーの大きい襟のワンピを着た女の子。彼女の目を見るとアイプチが施されていて、もしかしたら自分と同じ感情かもしれないと思うと安心した。

あー、可愛くなりたい。心の中で整形を考えるけど、リスクを思うとしり込みする。退職金で大金を得たが、健康保険に入っていないことを言い訳に行動に移してないのは願望と同時に怖がる自分がいるから。整形顔が理想ではないのは一理ある。本当は過去出会った人に整形したとバレるのが、すれ違う人でさえ怖い。そして、もし整形したあとも現状が変わらなかったら、自分の心の問題を認めざる得なくなるのが怖い。

外見のせいでメンタルが弱いと思ってた。もしかしたら違うのかもしれない。強い志で努力を続けるメンタルがないから外見に変化がないんだ。コンプレックスと言い張るなら努力しろ、このカス。これは鼓舞ではなく、ただのネガティブ。解決法が見いだされても、根本が追求できたとしてもどうしようもない私は明日も同じ考えでぐるぐる生き続けるんだ。