「袋、いりますか?」
たったそれだけで、人生の選択を迫られている気がした。
エコバッグを持っている日は胸を張って「いりません」と言えるのに、なぜか忘れた日に限って妙に迷う。たった数円の袋ひとつなのに、選んだ瞬間、自分の小ささとか、環境意識とか、面倒くささとか、色々なものが透けて見える気がするからだ。
レジ袋をもらえば楽ができる。
でも、もらわなければ「ちょっと良いことをした気分」がついてくる。
人間って不思議だ。利益と正しさの間で、日常の片隅でも小さく揺れている。
結局その日は、「お願いします」と袋を受け取った。
罪悪感を抱きつつも、買った豆腐と牛乳を安全に家まで運びたいという、現実的な理由の勝利だった。
でも、家に帰って袋を畳んで引き出しにしまいながらふと思う。
人生って、こんな“ちょっとした選択”の連続なのかもしれない。
大きな決断よりも、日々の些細な「いりますか?」が、いつの間にか自分を形作っているのだ。
今日もまた、レジで問われるだろう。
「袋、いりますか?」
そのたびに、私は小さな哲学の分岐点に立つ。












