世界が静かだった。
そしてその静けさが、思っていたよりうるさかった。
通知も流行も、誰かの成功報告も失敗談も、今日は一切入ってこない。なのに、胸の中ではずっと小さな音が鳴り続けていた。
「置いていかれていないか?」
「みんな何してるんだろう?」
そんな、普段はSNSのざわめきに紛れて聞こえなくなっている自分の声だ。
SNSを開かない一日は、思っていた以上に自分と向き合う時間が長い。
気をそらすタイムラインがないと、ゆっくりとした孤独が広がってくる。
でも不思議と、その孤独は悪いものではなかった。
散歩をすれば、街の音が心に届く。
コーヒーを飲めば、香りの深さに気づく。
ぼんやり空を見上げれば、雲の形がやけに丁寧に見える。
SNSを閉じてみてわかったのは、世界はこんなにも“自分の速度”に合わせてくれるということだ。
開けば外に引っ張られ、閉じれば内側が広がる。
そんな単純なことを、ようやく思い出した。
たった一日だけの“非接続”でも、心の電波は少し強くなる。
また明日から繋がるとしても、今日はこの静けさを大切にしたい。














