今日は、ほんの出来心だった。


鏡の前でふと、「このままの自分でいいのかな」と思った瞬間、手が動いていた。

 

脱色クリームを眉に塗りながら、
なんとなく“変わりたい”とか“リセットしたい”とか、
そんな言葉を浮かべていたけれど、
本当はもっと単純だったのかもしれない。

 

— ただ、自分の顔を、見慣れすぎて飽きていたのだ。

 

10分後。


明るくなった眉が鏡越しにこちらを見つめてくる。


少し軽く、少し頼りなく、それでいて正直そうな顔。


まるで、無理して大人ぶっていた子どもが
「もういいよ」と言って笑ったみたいだった。

 

人は、髪を切ったり、服を変えたりするたびに、
“他人の目”ではなく“自分の目”を整えているのかもしれない。

 

眉を脱色したら、
ほんの少しだけ自分の本音が見えた。


それは「変わりたい」でも「戻りたい」でもなく、
“いま”の私を見てみたい、という静かな願いだった。