昨年5月5日に珠洲地震が発生し、その復興途中だった今年元旦、能登半島地震が再び珠洲を襲った。

ほとんどの建物が被害を受け、未だライフラインも整っていない。

そんな中、その珠洲から親子3名がご来店された。

家は倒壊し、父親は屋根の下敷きになったが、息子に助けてもらったと笑い話のように話す。

母親は珠洲焼の作家で、これから作品を窯から取り出そうとした時に地震が起き、全て破れてしまったと明るい表情で話す。

3人で金沢にきて、物資の買い出しとお風呂に入りに来た。

本来なら我々が元気を与えなければならないのに、逆に元気を貰った。

「過去の話はせず、未来の話をしましょう」と言われた時、もう切り替えている事に気がつく。

珠洲焼の器で飲む日本酒やビールは美味しい。

「それでは、明るい未来に向けて皆んなで乾杯しよう。」と私が持ちかけた。

珠洲焼は黒くシンプルだが、不思議と温かみを感じて、私が好きな器のひとつ。

日本酒はまろやかに、ビールの泡はきめ細やかに、花を生けると長持ちする。

そんな素晴らしい珠洲焼を伝える事も私の役目と思い、これからは店でも多くシーンで使っていきたい。

その親子は3時間かけて、また珠洲に戻っていくのだが、辛さを見せない強さを学ばせて貰った。

いつか珠洲で乾杯したいと思う。