グリーフプログラムには、大切な人を亡くした子どもたちが集まり、いっしょに遊んだり、おしゃべりをしたりします。
プログラムにはファシリテーターと呼ばれるボランティアがおり、子どもたちに寄り添い、ともに過ごします。
子どもたちはファシリテーターといっしょに遊ぶこともあれば、子どもたちどうしで遊ぶこともあります。
すると、子どもたちどうしでケンカや言い争いになることも、たまにあります。
先日のプログラムで、こんなことがありました。
男の子のA君が「おはなしの部屋」で遊んでいたところ、年下のB君も、「おはなしの部屋」に入って来ました。
A君はそれまで1人で部屋を独占して遊んでいたのですが、B君が入って来て、騒がしく遊び始めたので、A君はB君がちょっと部屋を出た隙に扉を閉め、「おはなしの部屋」に閉じこもってしまいました。
A君はとても不機嫌な様子で、ファシリテーターの「どうしたの?扉を開けてくれない?」という声かけに対し、断固として「イヤだ。だって(B君のことが)うるさいんだもん」と言います。
その間、B君は扉の外から部屋をじっと見つめていました。部屋の中に入りたそうな様子です。
ファシリテーターは困ってしまいましたが、「A君は誰も中に入って来てほしくないんだね。B君は中に入りたいんだね。」と、指示も仲裁もせずに見守りました。
しばらく閉じこもりは続きましたが、ある瞬間、A君は急に扉を開けて、「もういいよ!」と、部屋の外に飛び出していきました。
A君はその後、他の部屋で何事もなかったかのように、他の遊びに夢中になっていました。
A君にどのような気持ちの変化が起きたのかは分かりませんが、どのようにかして、自分の気持ちに折り合いをつけて、部屋をB君に譲ったのだと思います。
B君はおはなしの部屋で思い切り遊んでいたようでした。
子どもどうしのいさかいがあった時、大人はつい手を出して、審判したり仲裁したりしてしまいたくなりますが、子どもたちは自分で問題を解決する力があるのかな、と感じた一件でした。
グリーフプログラムに来る子どもたちを見ていると、子どもたちは大人が思う以上に様々なことを考えているし、力を持っているなと感じます。
日々、そんな子どもたちに驚かされますし、それが楽しみでもあります。
子どもの成長に触れることができるのは、ファシリテーターの醍醐味かな、と思います。