「人って死んだらどうなるの?」と子どもに聞かれたら | NPO法人子どもグリーフサポートステーションのスタッフブログ

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大切な人を亡くした子どものサポート活動を行う、子どもグリーフサポートステーションのスタッフブログです。

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前回の記事では「遊びの大切さ」について書きましたが、先日、グリーフプログラムに参加した子どもと印象的なやり取りがありました。


あるプログラムで、私はお父さんを亡くした女の子と一緒に遊んでいました。
その時、その子は私にふと「ねぇ、人って死んだらどうなると思う?」と聞いてきました。

私はそのとき、(ん…?死後の世界のことかな…?でもそんなこと私は知らないしなぁ…。何と答えたらいいんだろう…?!)と考え、困ってしまいました。

でも、グリーフプログラムでは、ファシリテーターは子どもをそのまま写し返すことが基本となるので、私は「う~ん…死んだらどうなるんだろうねぇ?」と聞き返しました。

すると、その子は、「人はね、死んだら天国に行くためのテストを受けなきゃいけないんだよ」と教えてくれました。

そして、その子のお父さんも今、テストを受けているのだそう。
プログラムに参加する前夜に、その子の夢にお父さんが現れて、テストを受けることを伝えていったそうなのです。

「お父さん、テストに受かるかな?」と私が聞いたら、
「うーん、分かんない!」と言い、その子とのその会話は終わりました。


なんだか非現実的に思える話ですが、その子にとっては、亡くなったお父さんとのつながりを感じた大切なエピソードだったのだと思います。
「死んだらどうなると思う?」という問いは、死んだらどうなるかを聞きたいのではなく、自分の話を聞いてもらうためのキッカケとしての問いだったようです。

その子にとっては、お父さんは天国に行くために頑張っているんだ、と思うことで、お父さんとのお別れに、少しずつ折り合いをつけているのかもしれません。


似たような出来事がもう一つあります。

別の子と一緒に遊んでいたときのことです。
その子もまたお父さんを数年前に亡くしているのですが、その日は、ヘビのぬいぐるみを使って一緒に遊んでいました。

はじめはヘビを投げ合ったり、引っ張ったりして遊んでいたのですが、ふとその子はヘビのぬいぐるみを掴んで、「ガブっ」と、私を噛ませる動作をしました。

その時私は、「あ、ヘビにガブってされた。ヘビにガブってされたらどうなっちゃうかな?」と聞きました。

その子は、「死んじゃうんだよ」と言いました。

私は、死んだふりをしました。そして、「これからどうなるの?」と聞くと、「エンマ様のところに行くんだよ」とその子は言いました。

「エンマ様のところに行くんだね。エンマ様のところに行ったらどうなるのかな?」と聞くと、

「生き返れるかもしれないんだよ。でも、課題をクリアしなきゃいけないの。」と言いました。

それから、その子はエンマ様になりきり、私にさまざまな課題を出してきました。

それは、部屋を走って一周することだったり、ジャンプをすることだったり、ボールでドリブルすることだったり。
何回も何回も課題をこなし、ようやくエンマ様の許しを得て、私は生き返ることができました。


…と思ったらまたヘビに噛まれて死に、課題を繰り返すこと2回。私はだいぶヘトヘトになってしまいましたが…(笑)

その子の作り出す世界に入り込み、体験することができた時間でした。



このように、グリーフプログラムでは「死」をテーマにした遊びが展開されることがよくあります。

ときに、「なんだか縁起の悪い遊びだなぁ…」とか、「ハッピーエンドの遊びにさせたい!」と思ってしまうこともありますが、そこはぐっとこらえて、子どもの遊びにとことん参加することが大事です。

死を安心して表現できること、それに付き合ってくれる人がいるという環境だからこそ、子どもたちは様々なことを表現してくれるのだと思います。


私たちは、その表現を邪魔したり誘導したり評価したりすることなく、受け止め、付き合います。

子どもがどのような心理でその遊びをしているかは、子どもにしか分からないことですが、それでいいのだと思います。子どもが知ってほしいと思ったら、自ら伝えてきます。

子どもは自分の気持ちに対処していく術を既に持っています。それが「遊び」なのです。
だから、私たちは安心・安全な環境を作って、子どもの遊びに付き合うだけで、子どもは自然と自分の気持ちに対処していきます。


これからも子どもたちの力を信じて、安心・安全な環境を作っていきたいと思います。