最近の慢性疲労症候群に関する米国の動き(4)ー慢性疲労症候群への公衆衛生的アプローチ | 「慢性疲労症候群(ME/CFS)」と「制度の谷間」界隈の備忘録

「慢性疲労症候群(ME/CFS)」と「制度の谷間」界隈の備忘録

慢性疲労症候群(ME/CFS)・線維筋痛症(FM)患者で、電動車椅子ユーザー。医師診断PS値8ですが、感覚的には「7寄りの8」。
Twitterでの、情報共有に限界を感じ、暫定的にブログを立ち上げました。

更新できる気はあまりしないので、不要になったら閉鎖するかもしれません。

間があきましたが、過去2回のブログ記事
http://ameblo.jp/cfs-tanima/entry-12162043807.html
http://ameblo.jp/cfs-tanima/entry-12163343428.html
の続きで「アメリカでの慢性疲労症候群(筋痛性能脊髄炎/全身性労作不耐疾患)の国を挙げての取り組み」についてです。


今年2月のCDC病例検討会の、第二演者 エリザベス R. アンガー博士による「慢性疲労症候群への公衆衛生的アプローチ」のプレゼンを取り上げます。

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)とは、アメリカ連邦政府の内閣機関、保健福祉省(HHS)の主要下部組織の一つです。

各ページに記載しておりますが、当方は医療職ではないことをあらかじめご了承いただき、詳細はぜひ原典をあたっていただければ幸いです。


重要と思われる点は、下記になりますが
ぜひ全文ご覧ください。



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CDC Public Health Grand Rounds
Chronic Fatigue Syndrome: Advancing Research and Clinical Education
2016年2月16日 CDC 公衆衛生グラウドラウンドセッション(病例検討会)
慢性疲労症候群:研究の進展と臨床教育


2)エリザベス R. アンガー博士
CDC 新興・人畜共通感染症センター(NCEZID) 甚大病原体情報・病理学(DHCPP) 慢性感染症部門 部長 (※組織名正式日本語訳未確認)
「慢性疲労症候群への公衆衛生的アプローチ」 (pdf p.16-p.31)
https://www.cdc.gov/grand-rounds/pp/2016/20160216-chronic-fatigue.html

https://www.cdc.gov/grand-rounds/pp/2016/20160216-presentation-chronic-fatigue-H.pdf (※pdf注意)

https://youtu.be/0SnJy5AOSd8?t=17m45s
※上記サイト、pdf、YouTubeリンクは、共にCDCの公式ページです。


■CFSの疫学的情報(p.17)
CFSはどの程度一般的か?
・少なくとも100万人のアメリカ人がCFSに罹患(有病率0.2%-0.7%、人口調査から推定)
 ・診断がついているのは、わずか約20%
 ・ほんどの患者が発症5年以上経過しているが、医学的ケアを求め続けているのは約50%にすぎない

どのような人が発症するか?
・男性よりも女性で3~4倍多い
すべての人種や民族が影響を受ける
 ・少数民族と社会経済的に恵まれない中で、より高い負担がかかることが示唆される
幅広い年齢層
 ・40-50歳の人が有病率が一番高い
 ・小児および青年も罹りうる


■CFSによる経済負担と、医療利用への障壁(p.18)
患者、その家族、雇用者、社会が、多大なコストを負担

・米国での直接医療費で、推定年9-14億ドル(990億-1,540億円 ※1$=110円換算)
 ・これらの費用の四分の一近くは自己負担で支払われた
・米国での生産性の損失で、推定年$9-$37億ドル(990億-4,070億円)
 ・CFS患者は、障害者雇用枠では採用されにくい
 ・介護者の雇用が影響を受ける可能性がある
 ・25歳前の発症者は、フル教育受給の機会を奪われ、生涯年収が制限されることが多い


■患者が直面する重大な医療へのバリア(p.19)
・ジョージア州での調査(2007-2009年)では、CFS患者の55%が少なくとも一つは、医療に対する障壁を抱えていることが報告された
 ・経済的問題によりケアを求められない人が10%いる(2005年度の国民健康調査においての国民平均の約2倍の数値)


■CFSの感染リスク要因(p.20)
感染症
ある特定の病原体の関与というものは認められていない
・ウイルスおよび非ウイルス性病原体、例えば、エプスタイン・バーウイルス、ロスリバーウイルス、Q熱(コクシエラバーネティー)、ジアルジア
急性感染症の重症度がその後のCFS診断を最も予測


■CFSの非感染性リスク要因(p.21)
・ストレス要因
 ・物理的外傷および有害事象
 ・アロスタティックロード(ー慢性ストレスに対する神経内分泌応答の生理学的影響)
 ・メタボリックシンドローム
遺伝学
・双子や家族の研究では、相加的遺伝効果と環境の影響が支持された


■ME/CFS マルチサイト臨床評価(MCAM)(p.22)

結果を混乱させうる調査研究における患者の不均一性
・罹患期間、症状の重症度、合併症の状態、服用薬
・用いられる症例定義の違い、それらの適用され方
MCAMは医師の臨床専門知識を活用できるようME/CFS患者のケアと治療に特化し設計された
・症例定義の基準ではなく、臨床判断に基づいて登録 ーエビデンスに基づいたデータを提供することで症例定義やCFSのサブグループに対処する
・診療所間や他の条件での症状の重症度との比較を可能にするために、質問票を用いて、主要疾患領域に関する標準化されたデータを収集
・臨床検査や薬の使用に関するデータを収集


■7 MCAM Clinics Funded Since 2011(p.23)
(※下記7医療機関が当該臨床評価に参加した)

Mount Sinai Beth Israel, New York City, NY (Benjamin Natelson, MD)
Institute for Neuro Immune Medicine, Miami, FL (Nancy Klimas, MD)
Open Medicine Institute Consortium
Bateman Horne Center, Salt Lake City, UT (Lucinda Bateman, MD)
Hunter-Hopkins Center, Charlotte, NC (Charles Lapp, MD)
Open Medicine Clinic, Mountain View, CA (Andreas Kogelnik, MD)
Richard Podell Medical, Summit, NJ (Richard Podell, MD)
Sierra Internal Medicine, Incline Village, NV (Daniel Peterson, MD)


■MCAM Study Sample – Baseline (471 patients)(p.24)
登録時の平均年齢 48歳
発症時平均年齢 38歳
罹患期間平均 - 14年
74%女性
・90%白人
・平均BMI26.6
・77%以上 大卒者
・94% 被保険者
・75% 就労せず
・14% 失業給付を受給


■多くの患者に症状は共通、しかし重症度が異なり、機能状態に影響(P.25)
診療所間の患者における病気の特性の違いはほとんどない
患者全体では、症状の重症度において広範な分布


■機能状態は、実質的に健常対照と比較して低下(p.26)
(p.27)例外は、メンタルヘルスや情緒的機能の維持


■MCAM Summary(P.28)

データは疾患の重大性機能障害の大きさを確証している
分析は、全体としてCFS集団の異質性を示す
・クリニックの間の患者変動は、有意であるように見えない
研究は進行中である
・経時的な疾患特徴の指標を集める
・研究対象患者群(小児、引きこもり、新規発症)と対照群を登録(疾患群と健常群)
・疾患の潜在的バイオマーカーを見極めるために生体試料(血液と唾液)を収集
・使用データは、異なる原因または治療に対する反応を反映する患者サブグループを見つけるために使用される
専門クリニックで照会された集団は、CFS集団を代表するものではない
・医学界への知識普及の必要性を強調

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