第7サティアン
ある日
俺は電車に乗っていた。
ハルバル渋谷へ向かう東急東横線第7車両。
しかしその日
第7車両は強烈な匂いに包まれていた。
そこには
ボロボロの服を着た一人の老人が音も立てずに眠っていた。
第7車両のど真ん中で。
第7車両は両サイドだけ乗車率が上がり、中心部は人が寄り付けないサンクチュアリと化していた。
まさに“第7サティアン”
そして
俺は、そんな震源地のすぐ右隣に居て、黙々と本を読んでいる…
フリをしている。
匂いの震源地の真隣で
本に視線を落とした俺は衝撃を受けていた。
『なんなんだ、この凄まじい破壊力の匂いは…』
今までに出会ったことのない香りに、俺の体は異常をきたしていた。
鼻腔を強制的に駆け上り、頭痛を誘発していた。
本の漢字が認識出来ず、ゲシュタルト崩壊を起こし始めた。
しかし、
俺は、そこから動かない。
なぜなら
匂いに嫌悪を感じながらも、隣の車両に行く勇気もなく、第7サティアンの端に陣取るような弱虫と一緒にされたくない。
この匂いは確実に喧嘩を売ってきている。
ならば俺は逃げない。
むしろ
嫌でも匂うなら、こっちから嗅いでやる。
んんー。
これは!
“寂れた港の腐った佃煮”だ。
なぜこんな匂いを発することが出来るのだ。
す、す、すごい。
周りの軽蔑の視線をよそに、俺は衝撃と感激に浸っていた。
いや、
ラリっていた。
渋谷に着く。
この匂いは、果たして映像でも伝えられるのだろうか。
そんな疑問を抱え、家路についた。
風呂に入ろうと服を脱いだ。
ん?
こ、こ、これは
靴下が同じ匂いだった。
二日目だった。
破壊力は雲泥の差はあるが。
意外なところに“共通点”は転がっているものだ。
例えば足許に。
役作りの糸口を俺はみつけた。
高橋宙無
