昭和初期
私、境原英樹が体験した事をお話したいと思います。
先日ある電車に乗った際、私の前のシルバーシートにとても品の良いご高齢のご夫妻が座っていらっしゃいました。ご主人はとてもおしゃれなスーツに身を包み、ポケットポーチもとてもお似合いでした。奥様はビシッと和服を着こなし凛とされたいました。
私が最も感銘を受けたのはお二人の言葉使いでした。とても丁寧で品格のある日本語とはこういう物を言うのかと思いました。お互いを尊敬しまた深い思いやりをお持ちの方達なのだなととてもうらやましくもなりました。自分も年を重ねたら、この方達のようになりたいと切に思いました。
お二人の会話を聞いていてふと思いました。これはどこかで見た光景だぞと。そうです小津監督の作品によくある光景です。私の目の前が昭和初期にタイムスリップしてしまったかの様な錯覚に陥りました。ここだけが時間がゆったりと流れ、私は小津ワールドへと引き込まれたのです。俳優ならこのリアリティーを出せたらどんなにいいだろうと、これこそが説得力なのだと。
何故いざ演じるとなるとそれが出来ないのか?何故説得力が無くなるのか?色々な要素が考えられますが、自分の場合楽器が良くないのだと思います。その時その時に必要な音が出ない。これでは今私の目の前にいるお二方のような演技は出来ない。改めて痛感しました。
