制服デートっていいなぁ〜





 私、古幡宇奈月。TA女学院二年生。
放課後は大体パーラークラウンでバイトをしている。
今日も私は甘い物に囲まれて楽しくバイトをしている。
そこにこのクラウンにあるスイーツに負けないくらい甘いカップルが一組、テラス席に座っていた。
私はそこに注文されたメニューを持って向かった。

「いらっしゃい、うさぎちゃん。それに地場くんも」
「宇奈月ちゃん、お邪魔してますぅ~」

地場衛君と月野うさぎちゃん。
うさぎちゃんの方は先に常連になって仲良くなったまこちゃんの友達で、最近よく来てくれるようになった。
そして、地場くんの方はーー

「って宇奈月ちゃん、まもちゃんのこと、知ってるの?」
「うん、元麻布の生徒さん達とTA女学院は中学の時から文化祭とかで何かと交流があるの」
「へぇー、そうなんだ」
「ああ、何度か古幡さんとも喋った事があるな」
「じゃあ学校でのまもちゃんってどんなでした?」
「うーん、一言で言えばクールボーイかな」
「ふーん、クールなまもちゃん見てみたぁい」
「よせよ」

目の前にいる地場君は、クールボーイとは程遠い。うさぎちゃんに知らない顔を暴露され、狼狽えている。何だか面白い。
こんな地場君を見られる日が来るなんてと私は注文された新作のパフェとコーヒー、そしてりんごジュースを目の前に置きながら意外な一面を見られて得した気分になる。

「じゃあ、ごゆっくりぃ~」

地場君とは学校同士が信頼関係にあり、イベント関係では何かと交流がある。
地場君とは同い年という事もあって何度か会っていた。
勿論、それだけじゃなくてこの外見でしょ?
うちの学校の生徒たちもかっこいいと言っていて、その噂でもちきり。
毎日女子に待ち伏せされては告白されているけれど、どんな相手でも速攻断ると有名だった。
私は高嶺の花だし、何ならそっち系が好きなのかと疑っていたくらい。
だから地場君が女の子とこうしてここで楽しそうにしていることが単純に驚いたし、意外だった。
しかもまこちゃんの友達のうさぎちゃんが彼女だなんて、それもびっくりで。

「制服デートか~、良いなぁ~」

学校帰りに寄ってくれたのか、二人は制服のまま。つまり、制服デート。
学生同士でしかできない今だけの特権。
違う学校で、しかも中学生と高校生の二人。学校も通学路も違うのにわざわざ帰りに待ち伏せしてここに来てくれたって事。

実は前にもバイトに向かう前に地場君が女の子と歩いている所を目撃した事があるの。
その時も制服で、仲睦まじく腕を絡めてベッタリくっ付いていて、オマケに視線を合わせては見つめ合い、人目をはばからずキスしているのを遠くで見かけて私は目を疑った。
あのクールな地場君が公衆の面前で堂々と彼女への愛情を表現するだなんて思いもしなかったから。

こうして堂々と制服デートが出来る二人が羨ましい。
私が通う学校は都内でも有名なお嬢様学校。制服も可愛いと有名。制服で歩いているだけで目立つ。ナンパもよくされる。
その為校則で“制服デートを禁ず”と言う項目がある。
だから、うさぎちゃんと地場君みたいに制服デートをしている学生カップルを見ると人一倍羨ましい。
羨ましがられている女子高に通っているのに矛盾してておかしいでしょ?
でもこれがTA女学院の実態。

「地場君、本当にうさぎちゃんの事、好きなんだなぁ~」

テラス席でパフェを食べている二人も、道端で遠くから見ていた時と同じようにラブラブ。

「はい、まもちゃん、アーン」
「ん、美味い!うさこも、アーン」
「んんん~、おいちいー」

今だって二人して食べさせあいっこしては見つめあって幸せそう。パフェの中に入っているアイスが溶けるんじゃないかってアイスの心配をしてしまう程。
これは今まで告白した女の子達が瞬殺だったのも頷ける。
うさぎちゃんって言うこんなにも可愛くて愛らしい子が好きだから他の女の子が目に入らなかったし、興味なかったのね。
その後も二人をチラチラ見ていたけれど、話を色々しながらうさぎちゃんは百面相になり、それを地場君は愛おしそうに見つめたり、優しい声で囁いたり、うさぎちゃんの頭を優しく撫でていた。

「宇奈月ちゃん、ご馳走様~。又来るね!」
「古幡さん、これからもうさこをよろしく」
「ありがとうございました~」

暫くして食べ終わった二人はレジでそう言って支払いを終えて帰って行った。
こちらこそ、熱々ラブラブで甘々な二人を見せられて、ご馳走様よ。なんて心の中で呟きながら二人の後ろ姿を見送った。
うさぎちゃんの“又来るね”は、それは地場君と?それともまこちゃん達と?なんてのは愚問だよね。




おわり