愛称



『愛称(まもうさ)』


「衛さん」


正式に付き合い始めて2ヶ月余り経ったある日の事、いつもの様にうさぎとデートをしていた。

あの日以来俺たちはお互い暇さえあればデートを重ね、愛を育んでいた。それこそ他のセーラー戦士達に冷やかされ羨ましがられるほどにラブラブ街道を進んでいた。

ただ1つ変わらない事があるとすれば、今も呼び方がよそよそしいって事かな?


「その呼び方、他人行儀で嫌だな」


そう言う自分もうさぎ呼びのままだから人の事は言えないが…。


「え?衛さんって呼び方?」

「そう、それ!どこか壁を感じる」

「ん~衛さんのが呼び慣れてるからなぁ~困っちゃったなぁ…」

「2人だけの愛称考えようぜ」

「何がいいかな?衛、とか?」

「それは元基と同じ呼び方だから嫌だな」


親友の元基に嫉妬とか、俺も心が狭いな。

元々うさぎが好きだったのは元基だ。

彼女がいると知っていてもアタックしようとしたほどで、元基と知らず悪口を言うと大泣きした事もある程。

それなのに何故か


「そっか…じゃあ、衛、だからまもちゃんってどうかな?」

「まもちゃんか…何か可愛い呼び方だな笑」

「ダメ?」

「いや、うさぎらしくていいな!それで行こう!」


えらい可愛い呼び方になったが、うさぎらしくて単純に良い呼び方だと思った。大学や今までも当然だがそんな風に呼んでる奴いたこと無かったし、特別な感じがする。

それに単純にうさぎらしくて可愛い呼び方に納得したし、しっくり来てしまった。


「じゃあまもちゃんもうさぎじゃなくて違う呼び方考えて?私もレイちゃんと同じ呼び方されるのやだもん!」


俺が元基に嫉妬したように、彼女もレイちゃんに対して嫉妬しているようだった。何だよこれ、可愛いかよ?


「参ったなぁ~じゃあうさこってのはどうだ?」

「うさこか~…うん、可愛い♪気に入った!」

「じゃあうさこで決まりだな!」


こうして2人の呼び方が晴れて決まったわけだけど…。


「まもちゃん?」

「ん?何だ、うさこ?」

「まぁ~もちゃん♪」

「どうした?」

「もう!まもちゃんのにぶちん!」

「だから何だよ?」

「名前!もっと呼んで欲しいの!」

「そんなのこれから先いっぱい呼ぶんだから何も今でなくてもいいだろう?」

「そーゆー問題じゃないの!今、いっぱい呼んで欲しいの!呼んでくれなきゃ帰んない!」

「…分かったよ、うさこ」

「うふふっまぁもちゃん♪」


愛称が決まり、嬉しくて仕方ないといった様子のうさこは俺の愛称をやたらと連呼し、俺にも自分の愛称を何度も言う様に強請ってくる。


「うさこ」

「まもちゃん」


こうして愛称が決まった後、しばらくの間お互いに名前を呼びあっていた。

周りからはバカップルだと思われていただろうけど、付き合いたての俺達にはそんな事は関係なかった。





おわり