picture impression of the novel “Mujina” by Yakumo Koizumi 1904

 

―――紀ノ国坂を駆けに駆けた。前はまっ暗で、なにも見えなかった。彼はひたすら走りつづけて、ふり返って見る勇気すらなかった。ようやく、はるか向こうに蛍の光ほどの、提灯のあかりが見えた……。
「へえ、女の見せたものって、こんなものじゃなかったんですかい?」
そば屋はそういって、自分の顔をつるりとなでた―――


 

 

『むじな』 小泉八雲「怪談」より 1904年
上田和夫訳 新潮社 小泉八雲集 1975年