「ないねえ……」
「うん、このあたりで落としたみたいなんだけど……」
ふたりで探し始めて小一時間ほど経っただろうか、もう日が暮れて、あたりは暗くなろうとしていた。4人でおそろいの大切な石だったのに……。
「雪枝や、残念だが暗くなってきたからもうやめにしよう。今日はこれ以上探しても見つかりやしないさね」
ダイばあさんが不意に顔を上げて言った。
「そうだね……」
「今日のところはもうしょうがない。だけどまた明日来ような?」
「うん、ありがとう岬ちゃん」
「礼は見つかってからだよ。それにあたしゃダイだ。岬じゃない」
「あ、ごめんなさいダイおばあさん。なんでかな、間違えちゃった……」
岬か……、どこに引っ越してしまったのだろう。好雄も朔司も、もう会えないのだろうか。
「あの石ね、神社に落ちてるらしいんだけど、好雄くん朔司くん岬ちゃんと4人おそろいの特別な石だったんだ」
「ほお、そんな大切なものをなくしちまったんかえ」
「うん。お守りの石。4人おそろいだから持ってれば必ずまた会えるって去年もらったんだけど、今年みんなとは会えなかった。石もなくしちゃったよ……」
「まだなくなったと決まったわけじゃないさ」
「でもなくしちゃったから、私たち、もう会えないのかな?」
3人の行き先は結局わからずに、大切なものもなくしてしまった。
くやしい、淋しい、悲しい、そんな思いがこみ上げてきた。
「おっと、こんなところで泣きなさんな。もう大きいんだから」
ダイばあさんは懐から古風な手拭いを出すと、私の目元を拭いてくれた。それでも私は悲しくて仕方がなかった。
「だって、だって、3人ともどこに引っ越したのかわからないんだもん……。もう、会えないよ……」
芦切沢に帰ってから泣かなかったのに、今になってあふれてきた涙が頬をつたう。
「会えるさ」
「え?」
顔を上げると、普段からあまり表情を変えないダイばあさんが珍しくにっこりと笑っていた。
「きっと会えるさ。あてはなくとも生きてりゃそのうち会える。そういうもんさね。だからめそめそしなさんな。もう泣き虫じゃないんだから」
ダイばあさんも、私を泣き虫じゃないというのか……。私は泣いてばかりいるのに……。私は大きく深呼吸をして、ごしごしと目をこすった。
私は泣き虫じゃない。3人にもそう言われたんだった。泣くのはもうやめよう。
「でも、やっぱり会えないよ。私は東京に帰るし、3人ともどこにいるのか全然わからないから」
「そうだねえ、やっぱりすぐには会えないかもしれないさね」
「うん、また来年会おうって約束したんだけどね……」
「そうかえ」
私はまた下を向いた。下を向くとまた涙がこぼれてきそうになる。
「雪枝、3人と一緒で、楽しかったかえ?また会いたいかえ?」
少し間をおいて、ダイばあさんが聞いてきた。
「楽しかった。また会いたい……」
私はうつむいたまま答えた。
「うむ。もしかすると本当に会えないかもしれないけ。だけれども雪枝、もし会えなくても、いじけちゃいけないよ」
「うん……」
「確かに行き先がわからないんじゃ、この先ずっと会えなくてもそれは仕方のないことかもしれんさ。けどな、いいか雪枝、もし会うことができなくても、その楽しかった思い出は大切に胸の中にしまっておくんだ。そうしてくじけずにさ、その思い出をはげみにして、前を向いてやっていくんだ。でも下を向いて振り返ってばかりじゃいけないよ。思い出は思い出として大切にしまってさ、それで前へ進んでいくのさ」
思い出は思い出として……か。いつかまた会えると信じていても、いつまでも思い出にすがって立ち止まっていてはいけない……。