Angel Down 狂乱する少女編 第11話『運命の糸』 | 東方自伝録

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注意事項


1、これは東方projectの二次創作小説である


2、オリキャラが登場するのである


3、原作設定一部崩壊、キャラ設定一部崩壊しているのである


4、これらの要素のひとつでも嫌なのであるなら、すぐに戦略的撤退をするのである


5、以上のことが大丈夫ならば、スクロールで読んでいってくれ








非想天とは、別名「有頂天」ともいい、仏教で28天ある天界の一番上にある無色界の頂上、非想非非想天(非想非非想処天)の通称である。
非想非非想とは、麁想はない状態(非想)であるものの無想の境地には至っていない(非非想)ということ。
つまり、神のみぞ知る地といえば分かるだろうか?
そんな地で、各界の神と呼ばれる者達が、この地へ集結していた。

何故神が集まっているのか?
理由は、神のみぞ知ることだろう。


続々と神と名乗る者が集まっていくなか、
天人である比那名居 天子は、その様子をただ黙ってみていた。


「一体……何の騒ぎなのかしら?」


彼女の呟きに、竜宮の使いである永江 衣玖が淡々と答える。


「総領娘様。これは……何かとてつもない何かが起きている気がします。どうしましょう?」


「中々興味深いじゃない。衣玖、私たちも神様たちの後を追うわよ!」


「えっ?」


衣玖の戸惑いの様子を裏目に、天子はすでに走り出していた。
だが、天子の勢いはすぐに止まることになった。









「あぅ!?」


どうやら誰かとぶつかったみたいだ。
衝撃でその場に座り込んでしまった。


「いたたたたたっ……」


鼻を硬いものにぶつけてしまい、そこからくる痛みで涙目になっていると、
ぶつかったと思わしき人物が話しかけてきた。

その見覚えのある懐かしい顔を見て、鼻の痛みがどんどんと引いていくような気がした。
正確に言えば、鼻の痛みより興味を引くものが目の前にあったからである。


「あ、レウお姉様ッ!!」


視線の先には、レウ=サーペンター。通称、レウお姉様がいたからである。


レウ=サーペンター。

薄紫の腰ほどまである長髪と、長くスラリとした長身が特徴の少女である。
紫色の蛇のような瞳と、西洋人形のように白く透き通った肌がレウという少女の魅力を引き立てる。
先ほどから少女と指しているが、レウも神の一人なのである。
二つ名は神堕ち。その名の通り、神としての位は低いほうである。
だが、輪廻を司る蛇神としての戦闘能力は高さは神の中でも恐れられるほどである。

天子はレウのことを「レウお姉様」と呼んでいるが、
これは、天子が天人として育っていく過程で、レウが関わってくるからである。

天子がまだ幼かった頃、当時蛇神として名高かったレウと出会った。
出会いは偶然。それこそ、運命と言ってもいい。
お互いに退屈だったのだろう。天子は暇つぶしの相手としてレウを対戦相手として選んだ。
もちろん、レウは二つ返事で引き受けた。退屈だったから。
結果は、レウの圧勝。
それがきっかけとなり、私はレウのことを「レウお姉様」と呼び、慕うようになっていったのである。


「どうしたの、天子ちゃん。そんなに慌てて」


「えっ、あ、いや……。お姉様こそどうしたんですか? こんなところにいらして……」


「私? 私も一応神の端くれだからね。今日の緊急集会に呼ばれちゃったんだ」


「緊急集会?」


「ええ。噂だけど、幻想卿で何か大変なことが起こっているらしいの」


「幻想卿に……?」


「おっと、そろそろ急がないといけないかな。じゃあ天子ちゃん。また後でねっ!」


彼女はそう言うと、足早に去っていった。
彼女の後姿を見つめながら、衣玖にこう呟いた。


「衣玖」


「はい」


「これは多分、前代未聞の異変だわ。私たちも行くわよ!」


これは行くしかない。
地上ですっごく面白そうなことが起きてるみたいだしねっ!
ここで祭りに参加しなきゃ天人だなんて名乗れないわ。


「どこにですか?」


「決まってるじゃない!」


「地上によ!」


地上で一体何が起こっているのか。
それは私の好奇心を埋め尽くしてくれる異変なのか。
私は、それが気になって仕方なかった。
地上では、私の想像を上回るような出来事が展開されているとも知らずに……。










非想天の中心地点に位置する聖堂。
ここでは神界の裁判員たちが日夜討論を繰り広げているのである。
他にも地下牢獄があったり、裁判所があったりもする。
当然そんな施設もあるのだから、それを守る番人も存在する。
その部隊の名が、葬送部隊。通称:ブリアル。
ブリアルというのは、英語で埋葬という意味。
その名のとおり、神に刃向かう者たちを処刑したり、警備を担当したりと幅広いジャンルで活躍している。
基本的に天人で構成されているが、それ以外の種族もいる。
吸血鬼や妖怪、また他の世界から幻想入りした人間なども含まれている。
そういった異色の部隊なのだが、彼らは今はこの聖堂にはいない。
現在神王の座についているゼウスが遠方へ出かけているため、その身辺警護についているのだ。
今は彼らもいないので、結構警備が薄くなっていると思われているがそんなことはない。
神たちも何人かは常備しているし、聖堂ごと別次元に転移させることもできる。
侵入者は何者でも入ることはできないし、侵すこともできない。
それが、この聖堂。

ここに、各界の神たちが続々と集まってきていた。
神たちは半年を周期に定期的にここに集まっているのだが、
今回は異例の事態ということで、緊急で召集されているのである。

ある程度の神々が自らの席に座ったのを見計らい、司会進行役である秋姉妹が話を始める。


「神々の皆様、お忙しい中わざわざ天界までご足労頂き有難うございます。今回の緊急集会の進行役をさせてもらいます、秋静葉です」


「同じく進行役を務めさせてもらいます。秋穣子です」


静葉は神々を一通り見回した後、話を続けた。


「……まだ、何名かいらっしゃらないようですが、時間が時間ですので始めさせていただきたいと思います」


「今回の議題は、皆様すでに耳に入れているかと思いますが、幻想卿で起きている異変についてです」


穣子がそう言うと、一人の神が手を上げた。
あのレウ=サーペンターであった。


「あのさ、私そのことについてよく知らないんだけど……。順を追って説明してくれないかな?」


彼女の質問に対し、姉妹はしばらくの間お互いを見つめあったが、
すぐに視線を元に戻し、こう言った。


「分かりました。では、順を追って説明致します。時間も惜しいので、簡単にですけど」


「お願いね」


「まず、事が起こったのは、今から4時間前です。レウ殿は、ゼロという人物を知っておいでですか?」


「ゼロ? 噂だけなら……。確か外界から来た人間で、ヴァンパイア・ハンターだったはず」


「ええ。その人物のことです。実は、彼の身体の中には、別の人物が紛れ込んでいたのです」


「別の……人物?」


「はい。名は、イリス・スカーレット。スカーレット姉妹の長女で、450年前のルーマニアでの内戦を引き起こすことになった張本人です」


イリスという名が出てから、急に辺りが騒がしくなった。
神々の間でも、危険視されているのだ。イリス・スカーレットという人物は。


「イリス・スカーレット……。確か、随分昔に、レミリアに聞かされたことがあるわ」


「私には、血を分けた姉がいる、と」


「そうですか。では、話は早いです。そのイリスがゼロの身体を乗っ取り、幻想卿に住む者たちを次々と襲撃しているのです」


「なっ……!?」


レウは呆然としていた。
少なくても、以前レミリアから聞かされた姉の話とは、全く一致しなかったのだ。
レミリアの話だと、怒ると怖いが優しくて、頼りがいのある人物だと聞いていた。
だが静葉の話では、関係ない者たちまで葬っているという。
一体、何が彼女を変えたのだろうか……。


――これは……調べてみる必要がありそうね。


そう彼女は考え、静葉に視線を戻した。


「さらにイリスだと思われる人物の仕業により、博麗大結界の要である陰陽鬼神玉が破壊され幻想卿は現在消滅の危機に陥っています」


静葉の言葉に、再び辺りがざわめきはじめた。


「静粛にお願いします。次に、別件のことについてです。神綺殿、お願いします」


静葉の言葉を聞いて、レウの隣に座っていた銀色の髪色をもつ少女が立ち上がり、前に出た。
皆の視線が彼女一点に集中する。


「えっと、神綺です。これでも、魔界の神を勤めさせてもらっています。さて、私から別件について話したいと思います」


「まず、別件というのは、実はイリスの手によって紅魔館が襲撃された後、イリスを危険視をした私たち魔界勢は、魔界の精鋭たるメンバーを集め、イリス討伐に向かわせたのですが……」


「誰を討伐に向かわせたのですか?」


レウが彼女のほうを見ながら、質問をする。


「サリエル、エリス、ユキ、マイ、夢子の5名です」


その名を聞いた途端、再び辺りが騒がしくなった。
魔界の精鋭メンバー。どれも飛びぬけて魔力の高い者たちで、神々の間でも有名な人物たちばかりであったのだ。


「……まさか、そのメンバーたちが、たった一人の吸血鬼に殲滅されたのですか?」


レウの質問に対して、神綺は横に首を振った。


「確かに、貴女の言うとおり、彼女たちは一瞬のうちに殲滅されました。ですが、紅魔館でやられたわけじゃないんです」


「それは……どういうことですか?」


「秋姉妹の話によると、イリスは紅魔館から一歩も外には出ていないらしいです。サリエルたちは紅魔館の道中で殲滅させられました」


「つまり……彼女たちを倒したのはイリスではないと言いたいのですね?」


「まだそうと決まったわけではありませんが……恐らくは」


そこで、穣子が再び口を開いた。


「……ということです。つまり、第三者が絡んでくるわけです。少なくとも、私たちの動きを知っていて、尚且つ、魔界の精鋭たちを一瞬にして殲滅することができるほどの力を所有するもの」


皆の視線がある人物に集中する。


「そのことについて、どう思われますか? クロト殿」


穣子から話を振られたのは、一人の神であった。
いや、神というよりは、どちらかというと少女であった。

腰まである黄金色の長髪に、青く透き通った瞳。
西洋人形のように白く透き通った肌は、少女そのものであった。
さらに、子供くらいの身長も少女ということを強調していた。

運命の三女神の長女であり、『全ての事柄の運命を操ることができる程度の能力』をもつ神である。

その実力は神の中でも特に優れており、神の中でも最強とも謳われていた。
ただ、その能力があってこそ、彼女は誰にも信用されないのだ。
すべての運命を自在に操ることができると言っても過言ではない能力。
だからこそ、何か異変があると、全て彼女の仕業だと思われたのだった。
もちろん、彼女の性格次第で、変わったのだろうが……。

彼女の性格は、誰から見ても信用のできない性格なのであった。
常に妖しげな笑みを浮かべ、相手に考えを読ませない、そして、何をやらかすのかまるで分からない。
それが、彼女という神なのである。


「ふふ……それはどういう意味なのでしょうか?」


「言葉どおりの意味ですよ、クロト殿。私たちの行動は秘密裏に行われていました。
 だから、私たちの行動をすべて掌握するには、運命を見ることができない限り不可能なのです」


「だからと言って、私たち3女神が関与したという証拠はあるんですか?」


「いえ、無いです。そもそも、証拠など出てくるはずもありませんから。
 貴女は運命を司る神。証拠などいくらでももみ消すことができますからね」


「ちょっと穣子! 言い過ぎよっ!!」


慌てて静葉が止めるが、クロトは妖しい笑みをしながらクスクスと笑っているだけだった。


「いいのよ、静葉さん。そう疑われても仕方ないもの。でもね、これだけは言わせてもらうわ」


「私たち運命の3女神は、今回の異変には一切関わっていない、と」








少しの間、辺りはまるで誰もいない空間のように静まった後、静葉が重い口を開いた。


「分かりました。これにて、今回の緊急集会は、私、秋静葉の言葉により終了とさせていただきます」


静葉の言葉により、今回の緊急集会が幕を閉じた。
聖堂内がざわついている中、穣子は怒りの表情で静葉に話しかける。


「姉さん、あいつらをこのまま素直に返しちゃっていいのっ!? あいつらは絶対に今回の異変に……!」


そこまで言った後、静葉の指によって口を押さえられた。


「駄目よ。穣子。前も言ったでしょ? 本音は心に秘めるもの、と」


「でも、姉さん!」


「穣子。今は、我慢の時よ。じっと耐えるのよ。そうすれば、必ず尻尾が出るわ」


静葉の言葉に、穣子は首を縦に振る。


「分かったよ、姉さん。我慢するよ」


その言葉を聞いて、静葉は微かに笑った気がした。









同じ頃レウは、一人で聖堂内のある部屋にいた。


「……」


どうやら、何かを探している様子である。
数分探した後、ついに目的のものを手に入れることができた。


「これね……実物を見るのは初めてなんだけど……」


彼女がその手に取ったもの。それは……。

宇宙や人類、すべての生物の過去、未来が綴られているCD-ROM。
アカシックレコードと呼ばれているものであった。







同じ頃、聖堂内のとある一室にて、運命の3女神たちはここで、コーヒーを飲みながらソファーでくつろいでいた。
クロトがひとつ溜息を吐いた後、会話を始める。


「全く、あの姉妹たちにはうんざりするわ」


愚痴を零しながら、再びコーヒーを啜る。
その様子を二人の姉妹は見つめていた。

一人は、黒に近い緑色の髪色をもつ長髪の少女、次女であるラケシスである。
姉妹の中で1番の身長を誇り、その白く透き通った肌が彼女の美しさを表していた。
常に日本刀を所持しているが、それは彼女の趣味である。
無口で感情らしいものを見せず、クロトの言うことを何でも聞く操り人形のような少女である。

もう一人は、ラケシスとは正反対の性格で、

喜怒哀楽の差は激しい少女、三女のアトロポスである。
ピンク色の髪色に、ショートヘア。幼さが残る顔つきが彼女の魅力である。
胸も身長も、クロトと同じくらいである。


「ねぇねぇ、クロトお姉様」


アトロポスが好奇心に満ちた瞳で私に話しかけてくる。


「何かしら?」


「さっきの集会のときには、私たちは一切関与していないって言ってたけど……。本当に?」


アトロポスが妖しき笑みを浮かべながら、私に問う。
私もアトロポスを同じく、妖しき笑みを浮かべながら答える。


「さぁ? どうかしらね」


私の答えに、アトロポスが頬を膨らませながら、怒った口調でいう。


「あ、ずるーい! 私たちにだけなら教えてくれてもいいじゃんかぁ!
 せっかく、お姉様の言葉に従って、あの魔界の者たちを嬲り殺しにしてきたのにさ」


「こら、アトロポス! 誰が聞いているか分からないから、そんなことを大声で言うんじゃないの」


「……はーい」


彼女を怒声で叱り、渋々頷く。


「まぁその件についてはいいわ。折角面白くなってきたのだから、これを利用しない手はないわ」


「秋姉妹や神綺たちも再び何かを仕掛けてくるはずだわ。イリスの暴走を止めるためにね。
 でも、折角暴走しているもの。止められるわけにはいかないわ」


「だから、貴方たちにやってもらいたいことがあるの」


私の言葉を聞いて、アトロポスが嫌がる素振りを見せる。


「またぁー? もう遊ぶのも飽きたんだけど」


「あ、冷蔵庫に私の分のブラッド・カステラがあるんだけど……。アトロポスにあげようかなー?」


ブラッド・カステラという単語に、瞳をキラキラとさせながら私の顔を見つめる。


「ホントに!?」


「ただし、私の言うことを聞いたら、だけどね」


「分かった! なんでも言ってよ!」


「ふふ。頼みっていうのはね……」









「貴女たちに、今から言う人物を殺してほしいの」





満身創痍リスト:


パチュリー・ノーレッジ
十六夜咲夜
レミリア・スカーレット
犬走椛
射命丸文
小悪魔
サリエル
エリス
ユキ
マイ
夢子


                   To be continued...


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