Wright B Flyer Aircraft Museum: Miamisburg, OH USA
日本の大きな都市には「区」という行政区域があります。
東京都渋谷区
大阪市住吉区
福岡市中央区
今回は、この「区」の英語表記についてのお話です。
日本の行政区「区」は、 “Ward” と表記します。
大阪市住吉区:Osaka City, Sumiyoshi Ward
福岡市中央区:Fukuoka City, Chuo Ward
“Ward”という言葉は、ロンドン城壁の門を防衛する軍事的な役割も持ち合わせた小さな行政地域の呼称として使われたのが始まりのようです。その語源は「出入り口を監視する」、「防御する」という古英語からきています。現在では、市の中にある選挙区を表す言葉として使われています。
台湾にも「區」という行政区があります。こちらは ”district” という表記が使われています。
東京23区の英語表記には、”Ward”でなく”City” という名称が使われています。なぜ、City という名称を使うのかは正確にはわかりませんが、それぞれの区で「英語表記」の指針をホームページなどに掲載しています。
中野区の「区名の英語表記の変更について」という1993年の通知が区の名称を「CITY」とした経緯を説明しています。
「国際化の進展に伴い、行政や市民レベルで内外の交流が活発化しているが、そうした際に用いる区名の外国語表記は、自治体としての特別区の性格を的確に表現するものでなければならない。
中野区では区名の英語表記について、ロンドン及びニューヨーク市の「BOROUGH」(自治権をもつ行政区)が、東京の特別区の実態に最も近似しているとの判断から、従来からこれを「区」の表記に使用してきた。
* 中略 *
なお、新しい英語表記については「CITY」が大勢であり、当区もこれを採用することとする。」
政令指令都市では、県の下に市があり、その市の中に区があります。一方で、東京23区は、東京都直下に特別区があります。そのため、東京都の区は市と同等の権限を持っています。このことも「区」を”City”と呼ぶ一因になったのかもしれません。
Google Maps の住所表記も、東京都23区は CITY となっています。
区の住所表記は、どう書くのでしょうか。住所表記には、「区」をそのまま “-ku”とする自治体が多いようです。
東京都庁の住所:
▸ 都庁ホームページ
8-1 Nishi-Shinjuku 2-chome, Shinjuku-ku, Tokyo
▸ Google Maps
2 Chome-8-1 Nishishinjuku, Shinjuku City, Tokyo
どちらでも理解できるので、どちらでもよいかとは思います。(役所に努めている方は、そのガイドラインに従うのがよいかとは思いますが。)個人的な意見としては、郵便物を送るときは、配達してくれる方が理解しやすい表記になっていればよいのではと思います。
東京都台東区の通達では、台東区は “Taito City”、住所表記は “Taito-ku" としています。北九州市門司区のガイドラインでも、住所表記は”-ku”と記載されています。
地名や住所に関するガイドラインが各省庁、さまざまな行政機関から発行されています。表記に悩んだら、参考にしてみるのもよいかと思います。
一方で、表記に関しては、一つの正しい答えがあるわけではなく、表記の「揺らぎ」があります。そのため、一般的に使われている表記、各種ガイドライン、その土地で使用されている表記などを見比べながら、自分なりに適切だと思うものを使っていけばよいかと思います。
国土交通省地理院:「地名等の英語表記規程」平成28年3月
「区は表音のローマ字表記の Ku を Ward にして表記するものとする。ただし、東京 23 区は表音のローマ字表記の Ku を City にして表記する。」
https://www.gsi.go.jp/common/000138865.pdf
内閣官房・情報通信技術総合戦略室:標準ガイドライン群 ID:1015-2
5.8 英語住所の表記例
英語住所の表記法は、住所表記関連組織が自組織の住所を記述している方法
を参考にする。
札幌市 英語表記ガイドライン:
(2) 機構名称に区名等をつける場合
機構の名称に区名等をつける場合、英訳しないでローマ字で表記する。
例)中央区 Chuo Ward Office
× Central Ward Office
https://www.city.sapporo.jp/kokusai/documents/2023_ikkatsu_eigo_hyoki_guideline_e.pdf
写真について
アメリカ・オハイオ州にあるライト・フライヤー・モデルB 博物館。ライト兄弟が設計した Wright "B" Flyer のレプリカを展示しています。この模型は1/2の大きさです。1910年5月25日、弟オーヴィルは、82歳の父親を乗せて約7分間、高度100m飛行しました。フライト中父親は、“Higher, Orville, higher!” と叫んだそうです。このフライトが父にとって最初で唯一のフライトでした。
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