WBCで優勝を決めて抱き合って喜ぶ大谷翔平や、ダルビッシュ有ら日本代表の選手たち=西岡臣撮影、朝日新聞

 野球の国際大会、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で3大会ぶり3度目の優勝を果たした日本代表。選手の奮闘に拍手喝采を送り、手に汗握り試合に見入るファンも大勢いたと思われます。優勝を決めた22日を前に、朝日新聞が18、19日に実施した世論調査からも、日本勢への熱い視線がうかがえました。一方、偶然の可能性もありますが、波及効果かも、と思わせる現象もみられました。

(朝日新聞記者・君島浩)

  【グラフ】WBCへの期待と、ある質問の答え…パラレルな関係? 「活躍が楽しみ」東北・大阪で9割

WBC「楽しみ」東北と大阪府で9割

調査は、東京ドームでの1次ラウンドと準々決勝を終え、マイアミでの準決勝、決勝を前にした時期に行われました。

 WBCでの日本の活躍を楽しみにしているかどうかを尋ねたところ、「楽しみにしている」は80%に達しました。

「それほどでもない」は18%でした。

 地域別にみると、東北で「楽しみにしている」は90%を占めました。「それほどでもない」はわずか7%でした。 メジャーリーグでの活躍同様、二刀流で大会MVPを獲得した大谷翔平選手エンゼルス)は岩手県出身。さらに昨年パ・リーグで史上最年少の完全試合を達成し、WBCで先発陣の一角を占めた佐々木朗希選手(ロッテ)も同県出身です。

 ビデオリサーチによると、日本戦の試合の世帯視聴率(関東地区)は軒並み40%を超えましたが、佐々木選手が登板した3月11日のチェコ戦の岩手地区の視聴率は60%を上回りました。世論調査の結果も、こうした熱気を裏付けていると言えます。

 一方、大阪府でも「楽しみにしている」は89%にのぼりました。 大阪府出身の選手といえば、ダルビッシュ有選手(パドレス)です。日本チームの兄貴分、選手たちのまとめ役として優勝に貢献しました。 東北高校(仙台市)時代に甲子園で活躍していますので、東北人にも親しまれている選手です。

 世論調査結果を男女別にみると、「楽しみにしている」は男性81%、女性80%とほぼ同じでしたが、年代別では少し差がみられました。

 <WBCへの期待>

 Q あなたは、野球の国際大会、ワールド・ベースボール・クラシックで日本の活躍を楽しみにしていますか。それほどでもありませんか。

   【楽しみにしている】/【それほどでもない】 全体=80%/18% 18~29歳=76%/21% 30代=69%/30% 40代=75%/23% 50代=85%/14% 60代=83%/17% 70歳以上=89%/10% *その他・答えないは省略。コンピューターで無作為に電話番号を作成し、固定電話と携帯電話に調査員が電話をかけるRDD方式で、3月18、19の両日に全国の有権者を対象に調査した。

 

 固定は有権者がいると判明した981世帯から506人(回答率52%)、携帯は有権者につながった2178件のうち798人(同37%)、計1304人の有効回答を得た 40代以下は80%より低く、30代は69%と唯一60%台になりました。 それに対し、50代以上は80%を超え、70歳以上では89%を占めました。 中高年の圧倒的な野球人気を示すと同時に、サッカーなど他のスポーツにも目を向けている若い世代との温度差が感じられます。

内閣支持率とパラレルの関係?

さて、この年代別の傾向を眺めていると、別の数字の傾向と似ていることに気づきました。 それは今回の岸田文雄内閣の支持率です。

 支持率は全体では40%で、前回2月調査の35%から上昇しました。 40代以下は40%より低く、30代は24%と唯一20%台になりました。それに対し、50代以上は40%を超え、70歳以上では51%を占めました。

 <内閣支持率(年代別)> 

Q あなたは、岸田内閣を支持しますか。支持しませんか。

    【支持する】/【支持しない】 全体=40%/50% 18~29歳=35%/46% 30代=24%/66% 40代=32%/61% 50代=43%/48% 60代=46%/47% 70歳以上=51%/41% *その他・答えないは省略 折れ線グラフにするとよく分かりますが、WBCで日本の活躍を「楽しみにしている」という人の割合と内閣支持率を年代別に並べると、ほぼパラレルになっています。 <WBCへの視線と岸田内閣支持率(年代別)>  

   【WBCで日本の活躍を楽しみにしている】/【内閣を支持する】 18~29歳=76%/35% 30代=69%/24% 40代=75%/32% 50代=85%/43% 60代=83%/46% 70歳以上=89%/51% また、WBCで日本の活躍を「楽しみにしている」という人の内閣支持率は45%と高め、不支持率は47%と低めで、拮抗しています。

 一方で「それほどでもない」という人の内閣支持率は20%とかなり低く、不支持率は62%と3倍以上になっています。 <WBCへの視線と岸田内閣支持率>  

  【内閣を支持する】/【内閣を支持しない】 全体=40%/50% WBCで日本の活躍を楽しみにしている=45%/47% それほどでもない=20%/62% *その他・答えないは省略 古代ローマ時代、市民が権力者から与えられた食べ物と娯楽に満足し、政治に無関心になったことを揶揄した「パンとサーカス」という言葉があります。

 イベントの熱狂が政治への不満をやわらげたのではという推測も大会を巡る話のタネにはなるかもしれません。