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   トピックⅠ 雇用契約と業務委託契約
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新型コロナウイルスの影響もあり
副業を認めている会社も多くなってきました。
特に個人事業主として業務を行い、「業務委託契約」を
締結することが増えてきています。

通常の、従業員として雇用契約を締結することと
業務委託契約を締結することの違いや注意点を確認していきます。


□ 業務委託とは

業務委託契約は、業務を他の会社や個人といった外部に
委託する契約のことを言い
雇用契約は締結せず、対等な立場で依頼を受けるものです。
これを受けた側は、労働力ではなく
仕事の成果を提供することになります。
労働者ではないため、時間的な拘束もなく
委託された業務を遂行すること、
もしくは成果物を完成させることで、「報酬」を得ることになります。


□ 雇用契約と業務委託の違い

私たちが一般的に締結している「雇用契約」は
会社と労働者が締結する契約になります。
労働者は、定められた時間の労働力を会社に提供し
その対価として「給与」が支払われます。

具体的な違いは下記の通りとなります。

【雇用契約】
(1)契約形態・・・・・・・雇用契約
(2)雇用主・・・・・・・・会社
(3)提供物・・・・・・・・労働力
(4)会社の指揮命令・・・・あり
(5)労働時間の概念・・・・あり
(6)対価(受け取る金員の意味)・・・賃金(労働の対価)
(7)公的保険加入・・・・・あり
(8)税法上の取り扱い・・・会社で年末調整を行う

【業務委託】
(1)契約形態・・・・・・・業務委託契約
(2)雇用主・・・・・・・・なし
(3)提供物・・・・・・・・業務の遂行、成果物
(4)会社の指揮命令・・・・なし
(5)労働時間の概念・・・・なし
(6)対価(受け取る金員の意味)・・・報酬(遂行、成果物への対価)
(7)公的保険加入・・・・・なし
(8)税法上の取り扱い・・・個人事業主のため確定申告必要

主な点を書き出しましたが、
雇用契約は労働者であるため、労働基準法等の法律が適用され
時間管理等が必須となります。
業務委託契約は
労働基準法の適用外となることから労働時間の管理が必要ないため、
いつ、どこで仕事をしてもよく、
業務の遂行や成果物を提出することができれば
報酬を受け取ることができます。
副業をする場合に、この業務委託契約を選択することが多いようです。


□ 雇用契約と業務委託の判断

昨今、現在就業中の従業員を
雇用契約から業務委託に変更できるかどうかの
お問い合わせを多くいただいております。

会社としては、労働者との契約を
雇用契約ではなく業務委託契約にすることにより、
労働基準法等の法律の適用がなくなり

・時間外、休日、深夜割増手当が不要
・社会保険等の加入不要
・辞めさせる場合、解雇ではないため容易にやめさせることができる

等といったことから、
人件費の削減につなげられると考えることが出来るからです。

ただし、業務委託という名目であっても
実態が雇用契約であり労働者性が認められれば
労働法の適用となります。
では、業務委託の場合の労働者性の判断は
どのような基準で判断されるのでしょうか。
労働者性が高いと判断される項目をあげておきます。

1. 業務遂行上の指揮監督
会社の指揮命令を受けて業務を行っている場合。

2. 諾否の自由
仕事の依頼、業務指示等を
引き受けることや拒否することができるかどうか。
拒否する自由を有しない場合には、
指揮監督関係を推認させる要素と考えられる。

3. 通常業務以外の業務の従事
会社の命令により通常予定されている業務以外に
従事させられている場合は
指揮監督を受けていると考えられる。

4. 時間的、場所的拘束
勤務時間、勤務場所が指定され管理されているときは
指揮監督下にあると考えられる。

その他、
給与所得として源泉徴収を行っていること、
労働保険の適用対象となっていること、
契約書が請負契約書ではなく「雇用契約書」となっていること
等に該当すると、労働者性が高いと判断されます。

安易な契約変更は、後々大きなトラブルとなる可能性があるため
きちんとした手続き、対応が必要となります。


□ 高齢者の業務委託

令和3年4月1日施行の高年齢者雇用安定法の改正で、
70歳までの就業確保が努力義務となります。

この努力義務の対象となる措置として、
定年や継続雇用を70歳までに引き上げるほか
「高齢者が希望するときは70歳まで継続的に
業務委託契約を締結する制度を導入」することが含まれています。
今後、高齢者については
業務委託契約に切り替えて就業させることが可能になりますが、
詳細がまだ発表されておりませんので、
わかり次第、メルマガでお知らせいたします。


□ 労働者性を争った裁判事例

業務委託契約であっても、労働者性を争った裁判がいくつかあります。
その事例をいくつか挙げておきます。

〇労働者性が否認された事例1(日本放送協会事件:大阪高裁H27.9.11)
【事件のあらまし】
放送受信料の集金や放送受信料の締結等を内容とする
有期委託契約を締結していた者が本件契約を途中解約されたことについて
本契約は労働契約であり不当解雇であると主張した事案
【判決】
集金等の稼働日数や稼働時間が自らの裁量に任されており
時間的な拘束性が相当低く、
本契約においては第三者への再委託が認められていることがあり
労働者性は否定された。

〇労働者性が否認された事例2(ソクハイ事件:東京地裁H25.9.26)
【事件のあらまし】
「運送請負契約書」、「業務委託契約書」と題する契約を順次締結し
バイクメッセンジャーとして稼働していた者が
会社から契約終了を告知され
本契約は労働契約であり不当解雇であると主張した事案
【判決】
メッセンジャーが稼働日数や稼働時間が自ら決定することができ
配送拒否をすることも妨げておらず、
その自由度が比較的高いことから労働者性は否定された。
 

〇労働者性が認められた事例1(イヤシス事件:大阪地裁R1.10.24)
【事件のあらまし】
リラクゼーションサロンを経営していた会社において
整体等の施術を行っていた者たちが
業務委託契約ではなく、労働契約であると主張し
時間外割増賃金等の支払いを求めた事案
【判決】
報酬は歩合制であったが、従事時間が8時間に満たない時は
報酬が減額されていたこと、
契約書には「遅刻」や「始末書」などの労働契約を前提とした
文言が記載されていたことから
労働基準法上の労働者に当たると認められる、とした。

〇労働者性が認められた事例2(アサヒ急配事件:大阪地裁H18.10.12)
【事件のあらまし】
運送委託契約書を締結し運送業務、引っ越し業務等を行っていた者が
会社から契約終了を告知され
本契約は労働契約であり不当解雇であると主張した事案
【判決】
引っ越し業務は会社の指示で行われていたこと、
業務日報やタイムカードを提出して
業務内容や就業時刻等を報告していたこと、
しかも会社の求めに応じて、委託業務の範囲、接客、服務等の
「運転委託誓約書」を提出していたが
接客、服務、報告義務等が記されており、
運送委託契約とは性質の異なる規定がおかれていたことから
労働基準法上の労働者に当たると認められる、とした。