◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
  トピックⅠ 休業時の補償
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

いつもは元気に出社していても
急に体調が悪くなったり、ケガをしたり
といった事態に見舞われ、会社を休むこともあります。
長期間、仕事を休まなければならないときには
経済的にも心配になってきます。

今回は、長期間の休業をした場合
保険でどのような補償があるのか、
そのシーンごとに確認していきます。


□ 休業と補償
休業といっても、その理由は様々です。

・私傷病による休業
一番多いのが、自身の体調不良により休む場合だと思います。
病気やケガなどで長期間休む場合、
健康保険から「傷病手当金」が支給されます。
なお、健康保険に加入している人が対象となります。

・業務上、通勤途中の病気・ケガによる休業
業務中に起こった病気・ケガや通勤途中のケガの場合
労災保険から「休業(補償)給付」が支給されます。
これは、正社員、アルバイトなど雇用形態にかかわらず
すべての労働者が対象となります。
なお、休業開始から4日目より支給され、
支給のない最初の3日間については
会社が「休業補償」を労働者に支払わなければなりません。
この額は、「平均賃金の6割以上」となっています。

・出産、育児等による休業
出産や育児で休業する場合
産前産後の期間は、健康保険の「出産手当金」が支給されます。
育児休業中は最長、子が2歳になるまで
雇用保険の「育児休業給付金」が支給されます。
出産手当金は、健康保険に加入している人、
育児休業給付金は、雇用保険に加入している人が対象となります。

・介護による休業
親や配偶者、子の介護で休業する場合
雇用保険の「介護休業給付金」が支給されます。
なお、雇用保険に加入している人が対象となります。

・会社の指示による休業
業務が減ってしまった、
資材の調達ができず仕事ができない等
会社の指示により休業する場合には
会社が「休業手当」を
労働者に支給しなければなりません。

例えば、新型コロナウイルスに感染した労働者がいた場合
会社の消毒清掃で他の労働者も休業させた、
家族等が感染し労働者本人は陰性であったが
会社側が休業を指示した 等、
会社の命令で休業させた場合にも同様に、
休業手当の支払いが必要となります。
なお金額は、「平均賃金の6割以上」となっています。


□ 各補償の内容

(1)傷病手当金
私傷病で支給される「傷病手当金」は
病気やケガで働けない場合に健康保険から支給されるものです。

【支給要件】
  ・業務外、通勤外の病気やケガであること
  ・連続して4日以上、働けないこと(公休、年次有給休暇含む)
  ・給与が支給されていないこと

  医師により、労務不能と判断され
  連続して4日以上休んでいることが必要です。
  4日は欠勤だけでなく、公休日や年次有給休暇で休んだ日も含まれます。

【支給対象者】
  健康保険に加入している人

【支給額】1日あたり
  支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準月額を平均した額
  ÷30日×2/3

【支給期間】
  支給を開始した日から1年6か月まで
  ただし最初の3日間は支給されず、4日目から支給されます。


(2)休業(補償)給付
業務上および通勤途中のケガ等で支給される
「休業(補償)給付」は
ケガ等で働けない場合に労災保険から支給されるものです。

【支給要件】
  ・業務上、通勤上のケガ等であること
  ・4日以上、働けないこと(公休、年次有給休暇含む)
  ・給与が支給されていないこと

  傷病手当金とは違い、連続して休んでいることの必要はありません。
  例えば、2日休んで3日目は出勤し、
  4日目以降に休んだ場合でも
  休んだ日の通算4日目から支給対象となります。
  なおここでいう「休み」は欠勤だけでなく、
  公休日や年次有給休暇で休んだ日も含まれます。

【支給対象者】
  すべての労働者(役員は除く)

【支給額】1日あたり
  給付基礎日額(平均賃金の6割)の80%
  (休業補償給付60%、休業特別給付金20%)

【支給期間】
  支給を開始した日から1年6か月まで
  ただし最初の3日間は支給されず、
  4日目から支給されます。

業務災害の場合の独自ルールとして、
最初の3日間は会社が
平均賃金の6割以上の休業補償を
支払わねばなりません。
通勤災害の場合には、最初の3日間の
休業補償は不要です。

(3)出産手当金、育児休業給付金、介護休業給付金
女性が妊娠した際の産前産後休業の期間は
健康保険の「出産手当金」、


男女問わず、育児休業の期間は
雇用保険の「育児休業給付金」、
 

介護休業の期間は
雇用保険の「介護休業給付金」が支給されます。

【支給要件】
▪ 出産手当金、育児休業給付金
  ・出産・育児のために休んでいること(産前産後期間、育児休業期間)
  ・給与が支給されていないこと
 

▪ 介護休業給付金
  ・常時介護を必要とする状態の対象家族を介護するために休んでいること
  ・給与が支給されていないこと

【支給対象者】
▪ 出産手当金

  ・健康保険に加入している人


▪ 育児休業給付金、介護休業給付金
  ・雇用保険に加入している人
  ・2年間で、11日以上働いた月が12ヶ月以上ある人

【支給額】1日あたり
▪ 出産手当金
  支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準月額を平均した額
  ÷30日×2/3


▪ 育児休業給付金、介護休業給付金
  育児・介護休業開始時賃金日額×支給日数(通常30日)の67%
  (育児休業の開始から6ヶ月経過後は50%)

【支給期間】
▪ 出産手当金
  出産予定日以前42日(多胎妊娠は98日)から
  出産の翌日以後56日目まで
 

▪ 育児休業給付金
  子が1歳となった日の前日まで
  ただし保育所に入れなかった場合等は、子が2歳になる前まで
  延長して受給することが可能です。
 

▪ 介護休業給付金
  対象家族1人につき通算93日間まで

(4)休業手当
休業手当は、会社が労働者を休ませた場合に
その労働者に平均賃金の6割以上を支払うものです。
具体的な休業の理由は、
経営悪化による休業、資材不足による休業、
機械トラブルによる休業、電気などの供給不足による休業等です。
最近では、新型コロナウイルス感染症への
感染が疑われる労働者を、会社側が自主的な判断で
休業させるによる休業も
この休業手当の支払いの対象となります。

【支給要件】
  使用者の責に帰すべき事由による休業であること

【支給対象者】
  すべての労働者(役員は除く)

【支給額】1日あたり
  平均賃金の6割以上

【支給期間】
  休業した期間

なお、新型コロナウイルスの影響により
休業させられた労働者のうち、
休業手当の支払いを受けることができなかった労働者に対し、
厚生労働省から
「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」の
支給があります。

厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html