◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
   トピックⅠ 賞与の社会保険料
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

年末になると賞与を支給する会社も多くなるでしょう。
賞与を支給する際、給与と同じく所得税や保険料を控除しますが
社会保険料の控除の計算方法は給与と異なります。

今回は賞与の定義と
賞与から控除する社会保険料において
計算方法のどの点が違うのか、
どのように計算するのかを確認していきます。


□ 賞与とは
賞与とは、賃金、給与、賞与、手当その他
いかなる名称を問わず
労働の対償として受け取るもののうち
年3回以下の支給のものをいいます。

その中で、賞与となるもの、ならないものは
下記の通りです。

【賞与とされるもの】
・賞与、ボーナス、期末手当、決算手当、夏季手当、冬季手当、
  繁忙手当、年末一時金、期末一時金など、賞与性のもので
・その他定期的に支給されるものでなくとも、
  一時的に支給されるもの

【賞与とされないもの】
・年4回以上支給される賞与
・結婚祝金や大入袋など、労働の対償ではないもの

年4回以上支給される賞与は、
4回目以降については「給与」とみなされ
12か月で割った金額を毎月の給与額に加算された額が
給与の標準報酬月額となります。


□ 賞与から控除するもの
 賞与を支給する際、控除するものの
  対象者と計算方法に注意しましょう。
  所得税は支給者全員が該当し、
  雇用保険は雇用保険加入者のみ、
  社会保険は社会保険加入者のみ控除が必要となります。

●社会保険料
社会保険料は、毎月の給与の計算方法とは異なります。
給与は、給与額が変動しても
標準報酬に合わせて原則前月と同様の額が引かれますが
賞与においては、賞与の額によって計算されます。
また1年間に支給された賞与の額の上限も決まっています。

●雇用保険料
給与と同じく
総支給額×3/1000(一般の事業)
で計算します。

●所得税
「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」
から計算します。
国税庁:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和3年分)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2020/data/15-16.pdf


□ 賞与の社会保険料の計算
社会保険料の計算は、
賞与の額から1,000円未満を切り捨てた金額(標準賞与額)に
保険料率をかけて計算します。

<例>賞与額 123,456円 東京都の協会けんぽ加入の場合
 1.賞与総支給額の1,000円未満の端数を切り捨てる。
      賞与額123,456円の場合⇒123,000円
 2.上記1で1,000円未満を切り捨てた額に直接、
      健康保険・介護保険(40歳以上65歳未満の方)、
      厚生年金保険料率を掛ける。
      保険料額に1円未満の端数が出た場合、
      50銭以下は切り捨て、51銭以上は1円に切り上げる。
 
 (1)健康保険料率:49.2/1,000
          123,000円×49.2/1,000=6,051.6→6,052円
  (2)介護保険料率:9.00/1,000
          123,000円×9.00/1,000=1,107→1,107円
 (3)厚生年金保険料率:91.50/1,000
     123,000円×91.50/1,000=11,254.5→11,254円

なお、標準賞与額の上限は、
健康保険で573万円
厚生年金保険で150万円となっています
(毎年4月1日から翌年3月31日までの累計額)


□ 退職者、育児休業者等の賞与の社会保険料
退職者、産前産後休業や育児休業期間中の方の
賞与の社会保険料は注意が必要です。

1. 退職者の賞与の社会保険料
退職月に賞与を支給する人には社会保険料を控除しません。
ただし、月末退職の方のみ控除します。
例えば、賞与の支給日が12/10の場合、
12/30に退職する人・・・保険料を控除しない
12/31に退職する人・・・保険料を控除する

すでに退職している人に賞与を支給した場合には
社会保険料を控除しません。

2. 産前産後、育児休業中の方の賞与の社会保険料
産前産後休業期間、育児休業期間は
申出書を提出することにより、給与および賞与の
社会保険料が免除されます。

免除される期間は、
「休業開始月から終了予定日の翌日の属する月の前月まで」
となります。
免除期間に賞与が支給される場合には、
社会保険料は控除しません。

なお、それ以外の休職者は社会保険料の免除規程がないため
通常通り控除してください。


□ 賞与支払届の提出
賞与を支給したときは、「被保険者賞与支払届」を
支給日から5日以内に提出しなければなりません。
該当者は、社会保険に加入している人のみとなります。
そのため、パート等で社会保険未加入の方については
提出の義務はありません。

産前産後、育児休業期間中の方については
社会保険料の控除はなくても
賞与支払届の提出は必要です。

また、賞与が支給されなくても書類提出があります。
賞与支払予定月に賞与の支払いが行われなかった場合は
「賞与不支給報告書」の提出が必要です。
忘れずに提出しましょう。