□ 管理監督者をめぐる裁判事例

管理監督者に当てはまるかどうかを争った裁判がいくつかあります。
その事例をいくつか挙げておきます。


●管理監督者が否認された事例1
(日本マクドナルド事件:東京地裁H20.1.28)
 

【事件のあらまし】
就業規則において店長以上の職位の労働者を
労働基準法第41条2号の管理監督者と扱っているところ
直営店の店長が同条の管理監督者は該当しないとして
過去2年分の割増賃金等を求めた事案
 

【判決】
管理監督者性を否定
店舗の責任者としてアルバイトの採用や育成、シフト作成など
店舗運営において重要な職責を負っていることは明らかではあるものの
経営者と一体的な立場で会社全体の経営には関与していない、
また自分の労働時間を自由に決定する裁量はあったもの
月100時間を超える時間外労働があるなど長時間労働を
余儀なくされていたことから、労働時間に関する
自由裁量性があったとは言えない、
等として管理監督者とは認められませんでした。


●管理監督者が否認された事例2
(育英舎事件:札幌地裁H14.4.14)

 

【事件のあらまし】
学習塾の営業課長は管理監督者には該当しないとして
割増賃金等を求めた事案
 

【判決】
管理監督者性を否定
人事管理を含む運営に関する管理業務全般を行っていたが
裁量的な権限は認められていなかった、
出退勤についてはタイムカードの記録が求められ
他の労働者と同様の勤怠管理が行われていた、
給与等の待遇も他の労働者と比較して
それほど高いものではなかった
等により、管理監督者とは認められませんでした。


●管理監督者が肯定された事例
(セントラルスポーツ事件:京都地裁H24.4.17)

 

【事件のあらまし】
スポーツクラブのエリアディレクターは
管理監督者には該当しないとして割増賃金等を求めた事案
 

【判決】
管理監督者性を肯定
人事に関して最終決定権はなかったものの、
人事考課等の機密事項に一定程度接しており、
予算を含めこれらの事項について一定の裁量を有していること、
遅刻、早退、欠勤によって賃金が控除されたことがないこと、
エリアディレクターの年俸月額と、
時間外割増賃金が支給された下位の従業員と比べ
給与が逆転することはなく、基本給において倍近い差があった
等により、管理監督者と認められました。

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今までの裁判事例では、ほとんどの場合
管理監督者を否定された判決となっております。
なお、賃金の時効が令和2年4月より
今までの「2年」から「5年」
(当分の間は「3年」)になりました。
これにより、裁判等で
管理監督者として認められなかった場合、
時間外割増賃金を5年(3年)前までさかのぼって
支払うことになると、その金額は
かなりの額になると予想されるため注意が必要です。