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   トピックⅠ 法定三帳簿
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労働基準法によって
作成や管理を義務付けられている書類は
適切に作成や保管がされていないと
労働基準法違反となり、処罰の対象となることがあります。
今回はその中で「法定三帳簿」と言われるものについて
確認していきます。

□ 法定三帳簿とは
 法定三帳簿とは、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」を言い
 労働基準法で作成、保管が義務付けられています。

 ①労働者名簿 (労働基準法第107条)
  使用者は各事業場別に労働者名簿を、
  各労働者(日々雇い入れられる者を除く)について調製し
  労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省で
  定める事項を記入しなければならない。

 ②賃金台帳 (労働基準法第108条)
  使用者は各事業場別に賃金台帳を調整し、
  賃金の基礎となる事項及び
  賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を
  賃金支払いの都度遅滞なく記入しなければならない。

 ③出勤簿等 (労働基準法第108条関係)
  労働基準法の本則に明文の規定はありませんが、
  「使用者は労働時間を適正に把握する管理する責務を有していること」
  とされています。
  そのため通達の
 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」
  に従って労働者の始業、終業時刻等の確認をする必要があります。

  また働き方改革により、労働安全衛生法第66条8の3で
  「厚生労働省の定める方法により、
  労働者の労働時間の状況の把握をしなければならない」
  とされています。
  この「方法」として出勤簿やタイムカードを備え付けることが該当します。

厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html


□ 記入すべき事項
 三帳簿には記入すべき事項が定められています。

【①労働者名簿に記入すべき事項】
 ・労働者の氏名
 ・生年月日
 ・履歴
 ・性別
 ・住所
 ・従事する業務の種類
 ・雇い入れ年月日
 ・退職年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合はその理由を含む)
 ・死亡の年月日及びその原因

「従事する業務の種類」は
労働者が30人未満の事業場の場合
記入は不要です。

「履歴」の記入内容は特に法律の定めはなく
一般的には、社内の異動や昇進などの履歴を記入します。
異動等があった場合には、その都度労働者名簿を更新しましょう。

厚生労働省 労働者名簿ひな形ダウンロード
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/


【②賃金台帳に記入すべき事項】
 ・労働者の氏名
 ・性別
 ・賃金計算期間
 ・労働日数
 ・労働時間数
 ・時間外、休日及び深夜労働の時間数
 ・基本給、手当その他の種類ごとにその金額
 ・控除項目とその額

労働者名簿は、日々雇い入れられる者の作成は義務付けられていませんが
賃金台帳はすべての労働者分を作成、保管しなければなりません。


【③出勤簿等に記入すべき事項】
 ・労働者の氏名
 ・出勤日
 ・始業、終業の時刻
 ・休憩時間

出勤簿は法律で記入内容が定められているわけではありませんが
会社が賃金台帳に転記することや
労働時間を適切に把握する義務があることから
上記の内容を記入することが必要です。


「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に
関するガイドライン」によると
(1)原則
  ・使用者が自ら現認することに確認すること
  ・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の
    客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること
 
(2)やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合
  ・自己申告等を行う者に対しても、
    自己申告制の適正な運用等のガイドラインに基づく措置等について
    十分な説明を行うこと
  ・自己申告により把握した労働時間と
    入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に
    著しい乖離がある場合には実態調査を実施し補正すること

 等とされています。

厚生労働省 
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000187488.pdf


□ 保存期間
 書類には保存期間が法律で下記の通り定められております。

 ・労働者名簿  退職日、解雇日、死亡の日から5年間
 ・賃金台帳   最後に記入した日から5年間
 ・出勤簿    労働者が最後に出勤した日から5年間

ただし経過措置として、当分の間は「3年」とされています。
同じ「5年間(3年間)」でも起算日が違うため
その点注意が必要です。

退職時の離職票申請等で、上記の書類が必要なことがあったり
また役所の調査等で提出を求められることがあります。
必要事項をきちんと記入し、保存しておくことが必要です。