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  トピックⅠ 育児休業 ~その期間に受給できる給付金~
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前回は産前産後についての話でしたが
今回は、その後の育児休業について説明していきたいと思います。
産前産後とは違う給付金となるため
若干手続きが違いますので、その点も確認していきます。


□ 育児休業とは
原則1歳に満たない子を養育する従業員が
申出をした場合、会社は休業を与えなければいけません。
(育児介護休業法 第5、6条)

 

原則、会社は育児休業を拒むことはできず
労働者から申し出があった場合には
休業させなければなりません。

 

ただし、事前に労使協定を結ぶことにより
下記の労働者については
育児休業を認めないことができます

 

・雇用された期間が1年未満の者
・1年以内に雇用関係が終了することが明らかな者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者
(育児・介護休業法 第6条第1項、第7条)

 

また産前産後休業は女性従業員のみ休業可能でしたが
育児休業は性別を問わないため、
男性でも取得可能です。

 

なお、女性従業員自らが出産した場合については
産前産後休業が優先されるため、
この期間については育児休業の期間には含まれません。

 


□ 育児休業の延長
育児休業は原則「子が1歳に達するまで」に
取得することが可能ですが
子が1歳到達時に次の事項に該当している場合には
1歳6か月、2歳まで育児休業を延長することが可能です。

 

・保育園に入れない場合
・子を養育する者が、

 ケガ、病気等により養育することが困難となった場合      

                                   等

 


□ 育児休業中の給与と育児休業給付金
産前産後休業と同様に、
ノーワークノーペイの原則により
育児休業中の働いていない期間について、
会社は給与を支払う必要はありません。

 

産前産後休業中の給与を補填するための制度が
健康保険の「出産手当金」でしたが、
育児休業中の給与は雇用保険の
「育児休業給付金」制度により補填されます。

 

会社を休み、賃金の支払いを受けなかった場合に
産後57日目から原則子が1歳に達する日までで支給されます。

(男性は出生日から受給できます)

 

●育児休業給付金の額
 育児休業開始時賃金日額×支給日数(通常30日)の67%
(育児休業の開始から6か月経過後は50%に減額

 

●受給できる従業員(要件):以下の条件をすべて満たす方
・雇用保険に加入している者
・育児休業開始前2年間に

 賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上ある者
・育児休業期間中の1か月の出勤日数が10日以下である者
・休業開始時の賃金に比べ80%未満の給与額である者

 

雇用保険加入期間が短い方や給与が80%以上支給されている方などは
支給要件から外れますのでご注意ください。
また、上記の要件を満たす育児休業取得中の男性も受給できます。

 


□ 育児休業中の社会保険料免除
育児休業中は、産休中と同じく
届出をすることにより
その社会保険料が従業員分・会社分ともに免除になります。

 

●免除される期間
「育児休業等開始月から育児休業終了予定日の翌日の月の前月」まで

厚生年金保険については、保険料免除期間も
休業前の保険料と同じ額を支払ったものとみなされ
将来もらえる年金額が減ることはありません。

 


□ 育児休業終了後の月額変更
育児休業が終了し職場復帰したものの、
時間外勤務ができなかったり、時短勤務となったりと
出産する前より給与額が下がる場合があります。

 

給与の固定的賃金に変動がある場合、3か月経過後、

2等級以上の変動で「随時改定(月額変更)」に該当しますが、

 

育児休業明けの場合、1等級の変動であっても
月額変更を申し出ることが可能です。
(下がりの月額変更)

 

●月額変更の対象となる方
・出産前の標準報酬月額に1等級以上の差がある方
・育児休業終了日の翌日が属する月以後3か月のうち
 少なくとも1か月おける勤務日数が17日以上であること

 

ただし、保険料が下がり給与からの天引きが少なくなる一方、
その後に出産手当金や傷病手当金を申請する場合に
下がった標準報酬月額により金額が決定されることにより、
受け取る手当の額が少なくなる場合もあるため、
手続の際は従業員の同意が必要です。

 


□ 育児休業終了後の年金額低下の防止
時短勤務等で月額変更となり保険料が下がる場合、
将来もらえる年金額も下がってしまいます。

そのため3歳未満の子を養育する従業員が申出をすることにより
出産前の高い標準報酬で将来もらえる年金額を算定してもらえます。

 

この制度を
「厚生年金保険養育特例期間標準報酬月額特例」といい、
申出書を提出することで
支払う保険料を下げつつ
将来の年金額は高いままの標準報酬で計算することができます。

 


□ 育児休業復帰後の従業員に対しての会社の配慮
育児休業から復帰した従業員に対して、
会社はいくつかの配慮をする必要があります。

 

・育児時間の確保 (労働基準法 第67条)
生後満1歳に満たない子を育てる女性は、
1日2回、各々少なくとも30分、
その生児を育てるための時間を請求することができます。

 

・育児のための時短勤務(育児介護休業法 第23条)
3歳に満たない子を養育する従業員に対し、
1日の労働時間を6時間とする短時間勤務制度を
設けなければなりません。

 

・所定外労働の制限(育児介護休業法 第16条)
3歳に満たない子を養育する従業員が請求した場合は
所定外労働が免除となります。

 

・時間外労働、休日労働の制限(育児介護休業法 第17、19条)
小学校就業前の子を養育する一定の従業員が
請求した場合は、1か月24時間、1年間150時間を超える
時間外労働および深夜労働をさせることはできません。

 

・子の看護休暇(育児介護休業法 第16条)
小学校就業前の子を養育する従業員が請求した場合は、
1人につき1年に5日、2人以上の場合には
1年に10日まで、病気、けがをした子の看護または
子に予防接種や健康診断を受けさせるための
休暇を与えなければなりません。

 

・育児休業を理由とする不利益取扱いの禁止
(男女雇用機会均等法 第9条)
妊娠、出産と同様に、育児休業を取得することを理由として、
減給、雇止め、解雇等は禁止されています。

 

育児休業から復帰した後、復帰する従業員も多くなりました。
ただし時短勤務を希望する従業員も多いため
その点の配慮は必要でしょう。

 

 

<参考>ハローワークインターネットサービス 育児休業給付
https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_continue.html#s2