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トピックⅠ 防ごう!自己都合退職トラブル
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現在毎週水曜夜10時より放映中のドラマ
「ダンダリン 労働基準監督官」
ご覧になっていますか?


“Express21” 72号では
「ダンダリン」第4話にちなんで、内定取り消しについて
取り上げました。


今号は「ダンダリン」第5話で取り扱っていた
退職に関するトラブルについて
取り上げてみることにします。


■ストーリー概要


スイーツ店で働く人気パティシエKさんは、
会社を退職したいのだが、
社長が退職を認めてくれない。


Kさんより相談を受けたダンダリンは、

 「民法627条により、
 一定の期間をおいた通知をすれば労働者は
 合法的に会社を辞めることが出来ます。」

と主張するけれども、
スイーツ店経営の社長は逆に
Kさんを損害賠償で訴えると言い出す。


こじれまくった二者の関係だったが、
結局

Kさんは内容証明で退職届を提出し、
社長は退職を認める代わりに
Kさんの作るある人気スイーツを
今後も店で製造販売することと、
Kさんが後輩パティシエにその作り方を
責任持って指導する(つまり引継ぎを行う)


という双方が譲りあったwin-winの結果で収まる。


■従業員の意思による退職(自己都合退職)


今回のように、
従業員側が退職したい意思を持つ場合、


法律的に厳密には、次の2種類


①自主退職(辞職)
②合意退職


に分けられます。


辞めたいという意思を伝える方法は、
法律に規定はないので、口頭でもいいのですが、
その意思表示があやふやにならないようするために、
またトラブル回避の意味でも、
書面(退職願や退職届)を提出することが一般的です。


①自主退職(辞職)


 会社が同意するかどうかに関係なく、
 従業員が一方的に雇用契約を終わらせるもの。



自主退職(辞職)については、
労働基準法に定めはありませんが、
民法にその定めがあります。


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 【民法627条 1項】
  当事者が雇用の期間を定めなかったときは、
  各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
  この場合において、
  雇用は、解約の申入れの日から2週間を
  経過することによって終了する。


 【民法627条 2項】
  期間によって報酬を定めた場合には、
  解約の申入れは、次期以後についてすることができる。
  ただしその解約の申入れは、
  当期の前半にしなければならない。
  ※つまり、月給制の場合、月の前半に退職を申し出た場合は
   翌月以降に退職が成立する。


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ドラマ「ダンダリン」の中で
パティシエKさんは、②の合意退職に至らなかった為、
「退職届」を内容証明で提出し
一方的に辞めることを通告しました。


つまり①の自主退職(辞職)の方法を取って
辞めようとしたわけです。



②合意退職


 従業員からの退職の申し出(退職の願い)を受け、
 会社との合意に至り労働契約を終わらせるもの。


なりふりかまわず強引に
従業員が退職するような場合は
①にあたりますが、

従業員からの自己都合退職は
通常②として取り扱われています。


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  就業規則に記載されている、
  従業員から自己都合退職する場合の手続方法、
  手順については「合意退職」について定めたもので
  あることが一般的です。
   ※「合意退職」を会社から申し入れた場合は
     「退職勧奨」扱いとなります。


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■退職の自由


確かに労働者には職業選択の自由(憲法第22条)があり、
退職の自由(民法第627条)があるので、
それを不当に制限するような
長い退職申し出期間を就業規則に定めている場合には、
公序良俗違反で無効になる可能性もあります。


しかし、特に中小企業では、
従業員の退職に伴う新たな人材の採用や、
業務上の引継ぎの必要から、
退職の申し出をもっと早く(1ヶ月前、2ヶ月前)に
申し出てほしいと考えるのも当然です。


引継ぎをしっかり行い、
双方とも感情のこじれることのない、円満退職となるよう
したいものです。


Q&Aもご参照ください。



■損害賠償は認められるのか


ドラマ「ダンダリン」で

スイーツ店経営者が
「辞めるなら損害賠償請求をする」と
Kさんに突きつけました。


実際は、会社が起こした従業員に対する損害賠償請求が
認められることはごく限定的です。


裁判例では、従業員の義務違反が認められる場合でも、
故意・重大な過失がある時に限り損害賠償責任を認めたり、
仮に損害賠償責任を認めた場合であっても、
賠償額を制限されたりします。


「ダンダリン」の中で経営者がKさんを訴えると
言ったのは、Kさんを繋ぎ止めるためでしたが、
得策ではありませんでした。


■労働者の辞職と損害賠償責任


以上からすれば、
期間の定めのある契約を結んでいる労働者が
やむを得ない事由がないのに期間途中で辞職する場合
(やむを得ない事由があっても、それについて
 労働者に過失がある場合)、


および、


期間の定めのない契約を結んでいる労働者が、
2週間前の申し入れをすることなく突然辞職した場合には、
契約違反による損害賠償責任が発生する可能性があります。


しかし、裁判例上、
労働者の責任が認められた事例はほとんどありません。


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 <ケイズインターナショナル事件>


  特定の業務を担当させるために、
  期間の定めなく採用した労働者が
  その4日後から欠勤を続けて辞職してしまったため、
  その業務に関する契約を取引先から打ち切られた
  という事案において、
  労働者に対する損害賠償請求を認めたものが
  みられるにとどまります。
  ただし、賠償額は退職後に合意された金額の
  約3分の1に限定されています。

       (東京地判平4.9.30 労判616号10頁)


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