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トピックⅠ 内定取り消しについて考えよう!
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現在毎週水曜夜10時より放映中のドラマ
「ダンダリン 労働基準監督官」をご覧の方はいらっしゃいますか。
毎回人事労務問題を抱える会社と、
主演の竹内結子さん扮する
労働基準監督官ダンダリン(段田凛:人名)が
ドタバタで対峙する流れです。
実際に様々な人事労務問題に直面する
このメルマガをお読みの
経営者の皆さま、人事ご担当の皆さまには
大変興味深い内容となっていると思います。
「ダンダリン」第4話で
Oスポーツ新卒内定者の学生が、
Oスポーツの経営状態が悪化したことにより、
内定の取り消しをされたことを知ったダンダリンが、
「研修まで実施しておきながら、
会社が一方的に内定を取り消すというのは
解雇とみなされます。
解雇予告期間も設けられず、
予告手当も支払われていないとすれば、
それは労働基準法違反になります!」
と糾弾していました。
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【労働基準法第20条】
解雇予告・解雇予告手当とは
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、
少なくとも30日前にその予告をしなければならない。
30日前に予告をしない使用者は、
30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
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内定取り消しをする時も、解雇なの!?
解雇予告手当が必要なの!?
とびっくりする方も多いと思います。
そこで、具体的な事例を通して考察してみましょう。
下記は、最高裁で争われた事例ですが、
その後~現在に至る、
内定取り消しに関する裁判所や役所の基本的なスタンス
となっているのでご紹介します。
■大日本印刷事件最判昭和54年7月20日
【事実概要】
AはB社の入社試験を受け、
結果文書で採用内定の通知を受け、B社に誓約書を提出した。
入社予定日の2ヶ月前にB社より
採用内定取り消しの通知がAに届いたが、
その理由は記されていなかった。
実はB社はAの選考試験の中で、
性格が陰気という印象を受けており、
採用までに人物確認を行っていたが、
結局陰気という印象を打ち消す材料が見つからず
内定を取り消したものだった。
Aは、B社の採用内定取り消しは
合理的理由を欠き無効であると主張、
従業員の地位確認、賃金支払い、
慰謝料を請求する訴えを提起した。
【争点】
①採用内定の法的性質
②本件における留保解約権の行使は許されるか
【判決要旨】
争点①について
会社の採用試験に応募し(労働契約の申込)、
採用内定通知を受けた会社に
誓約書を提出したことにより、
会社が誓約書記載の採用内定取り消し事由に基づく
解約権留保した労働契約、が成立している。
※つまり内定者は試用期間中の労働者と地位的には変わらない
争点②について
採用内定の取り消し事由は、
採用内定当時知ることができず、
また、
知ることが期待できないような事実であって、
これを理由として採用内定を取り消すことが
採用内定に留保された解約権の趣旨、目的に照らして、
客観的に合理的と認められ
社会通念上相当として是認されるものに限られる。
よって、
本件留保解約権の行使は、
社会通念上相当として是認することはできず、違法である。
■採用取り消しが有効な場合とは
上の判例より、
・会社は自由に採用取り消しができるわけではない。
・たとえ、誓約書に記載された内定取り消し事由に
該当していたとしても、
それが全て認められるわけではなく、
・客観的に合理的であり、
社会通念上相当として考えられる極めて
限定的な場合に限られる、
ということがわかります。
解雇権を濫用した解雇が無効とされる
労働契約法16条
とほぼ同じように考えられていることに
注意が必要です。
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【労働契約法第16条】
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、
無効とする。
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具体的にどのような場合に
採用取り消しが認められるか否かについては、
Q&Aもご参照ください。
■内定取り消しの手続き : 解雇予告手当は必要か?
冒頭でご紹介した
ドラマの中でダンダリンが言った
「内定切りは解雇予告、解雇予告手当が必要」
というセリフ。
実際の内定取り消しで、
解雇予告、解雇予告手当が必要かについては、
厚生労働省通達の中に以下のような記述があります。
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【新規学校卒業者の採用に関する指針】
事業主は、やむを得ない事情により、
どうしても採用内定取り消し
又は入職時期繰り下げを検討しなければならない場合には、
解雇予告について定めた労働基準法第20条
及び休業手当について定めた同法第26条等
関係法令に抵触することのないよう
十分留意するものとする。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/jakunensha05/pdf/pamphlet.pdf
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採用内定取り消しに至った経緯・理由を
誠意を持って十分に応募者に説明し、
同意を得るよう努力することが
最も大切であると考えますが、
場合によっては、
労働基準法第20条の解雇予告・解雇予告手当に
準じた取り扱いを行うことが
応募者に納得してもらう為の
有効な一つの手段となり得ます。
会社としては経済的損失を受けますが、
例えば入社後試用期間を設け、
試用期間中の賃金、諸手当を本採用後よりも
低く設定することにより、
解雇予告手当等の損失を
少なく抑えることができます。
一方的に内定取り消しをしたりすると、
内定取り消し自体が無効であるとして
・応募者から従業員としての地位の確認
・数ヶ月の賃金相当額
・慰謝料等
高額の損害賠償の支払を求めて
訴訟を提起されるリスクがあります。
応募者に対してはできる限り誠実で慎重な対応を行うことは
リスク管理の一つと考えられます。
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採用内定の段階で、
通常応募者は他社への就職活動を
終えることが一般的です。
このことから内定取り消しは
応募者の就職活動に大きな影響を及ぼすことになり、
原則避けるべきと言えます。
※厚生労働省の通達もご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/jakunensha05/pdf/pamphlet.pdf
万が一内定取り消しを
せざる得ない状態になったとしても
内定者のためにも、会社のためにも
十二分に慎重な対応をとらなければなりませんね。
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