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トピックⅠ 社有車の労務管理~事例から学ぶこと~
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Vol.44で、マイカー通勤の労務管理について
ご紹介しました。


では、業務に社有車を使う場合には、
どのようなリスク管理ができるでしょうか。


以下、まだまだ記憶に新しい、
2つの事故を挙げて、考察してみましょう。


■事故の概要


▼2012年4月 祇園暴走車事故


 花見で賑わう京都市祇園に
 業務中配達に向かう軽自動車が暴走し、
 次々と人を撥ねて
 通行人7人が死亡、12人が重軽傷を負いました。


 事故を起こした容疑者本人も死亡しましたが、
 本人にてんかんの持病があったこと、
 その後の捜査で、
 事故当時に発作状態であった可能性が
 高いとの見解が示されています。


 そして、今年3月になって、
 京都府警は
 事故を起こした容疑者本人の勤め先であった会社の社長を、


 本人のてんかんの持病を知り、
 事故を引き起こす危険を予見できたはずであるのに
 社有車の運転を指示していたとして、


 業務上過失致死傷容疑で
 京都地検に書類送検しました。


 このような、持病を引き金とした事故で、
 雇用主である会社が刑事責任を問われるのは
 極めて異例とのことです。


 更に、事故の被害者遺族からは
 自動車損害賠償保障法などに基づく
 使用者責任が生じるとして、
 会社と容疑者の両親に対し
 6,100万円の損害賠償を求めた
 訴訟を提訴されています。


▼2011年4月 栃木県鹿沼市クレーン車暴走事故


 集団登校中だった生徒の列にクレーン車が突っ込み、
 生徒6人が撥ねられ死亡しました。


 クレーンを運転していた被告本人はてんかんの持病があり、
 事故当時発作を起こしていたことが判明しています。


 被告本人は持病を隠して就職しており、
 年1回会社が行った定期健康診断で
 異常は発見されず、
 本人からの病気の申告も無かったということです。 


 この事故で勤め先の会社に
 刑事責任は問われていませんが、
 被害者遺族からは、被告、被告の母親、会社に対し、
 3億7770万円の損害賠償を求める訴訟を
 提訴されています。


■会社の責任


てんかん患者の人権の問題、
自動車免許取得・更新時の持病申告の取扱い等、
簡単に答えを出すことが難しい問題を含んではいるのですが、
会社の人事労務管理の面から見て、
これらの事故から考えさせられる点はたくさんあります。


▼両者の相違点


 京都市祇園の事故では、
 雇用主、会社は「刑事責任」と「民事責任」を
 訴追されることになりましたが、


 鹿沼市の事故では、
 会社は「刑事責任」は問われず、
 「民事責任」の訴追のみです。


▼刑事責任


 刑事責任を問われた理由は、
 「会社が本人の持病を知っていたか否か」
 という点です。


 京都市祇園の事故
  ⇒数々の証言等から会社が事故を起こした本人の持病を
   把握していた可能性が高いとされました。
    (但し会社は知らなかったと主張しています。)


 一方、鹿沼市の事故
  ⇒事故を起こした本人が持病を隠しており、
   会社も本人に健康診断を行い、
   健康であるという認識であったようです。


 ※京都市祇園の会社で事故を起こした本人が会社の定期健康診断を
   受診していたかどうかは不明。


▼社会的信用の失墜
 
 しかしながら、仮に刑事責任は問われなかったとしても、
 社有車で事故をおこしてしまったという事実に対し、
 社会的信用の失墜は免れず、
 更に、民法715条の「使用者責任」、
 また、事故を起こした車両は会社のものなので、
 自動車損害賠償保障法(自賠責法)3条の
 「運行共用者責任」を問われて
 多額の損害賠償を請求されます。
  
   ※Vol.44のトピックⅠもご参照ください。


■事故を防ぐ為に有効と考えられる対策~6つのポイント~


【1.採用選考時に病気の既往歴を確認する】


 業務に車の運転がある為等、
 業務の特性上必要な範囲であれば、
 求職者に既往歴の質問をすることは
 可能と考えられます。
 トピックⅡのQ&Aもご参照ください。


【2.健康診断の徹底】


 雇入れ時健康診断、定期健康診断等の法定健康診断の
 受診を徹底し、
 従業員の健康状態を把握しましょう。


【3.運転記録証明書、無事故・無違反証明書等の提出を求める】


 鹿沼市の事故の運転手は、
 過去10年間に12回事故を起こしており、
 以前にも小学生を撥ね、
 重症を負わせる事故を起こしていました。


 過去の運転記録証明書の提出を本人に
 求めることにより、
 この人物が自動車運転業務に適するか否か
 判断の材料とすることができます。


自動車安全運転センター
各種証明書のご案内はこちらから
http://www.jsdc.or.jp/certificate/


【4.安全教育の徹底】


 上記2つの事故は運転手本人自身の、
 持病が引き金となる交通事故を
 引き起こすかもしれない危険性の自覚が
 足りなかったとも言われています。


 両者とも運転免許証更新の際、
 本人がてんかんの持病を申告していません。


 また、発作を止める服薬を医師の指示を守って
 行っていなかったとされています。


 鹿沼市の事故の運転手は、
 前夜チャットに夢中になり、
 睡眠不足の状態であったことがわかっています。


 会社の就業規則や車両規程に、
 「睡眠不足、体調不良により運転に適さない体調の時は、
 運転を禁止する」等記載して、
 日頃からの安全運転、体調管理の重要性を
 研修等で啓発し、周知徹底することが大切です。


【5.従業員からの報告】


 京都市祇園事故の運転手は事故前にも
 発作を会社内で発症し、
 複数の同僚従業員が目撃したと証言しています。


 このように業務への支障をきたす恐れを
 同僚が察知した場合、
 同僚が会社や上司へ報告するよう
 日頃から教育を行い、規定作成、窓口設置等の措置を
 講じておくべきと考えられます。


【6.日頃から従業員の観察を行う】


 会社は従業員に対し、
 安全配慮義務(労働契約法5条)を有しています。


 普段より、快適な職場環境作り、
 健康に配慮した労務管理、安全教育を行うとともに、
 従業員の勤務態度や生産性の低下などの
 異変をいちはやく察知する目を養うことも大切です。



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もしもの事が起こることの無いよう、
日頃より適正な採用、適正な配置、
適正な教育を行うことが、
ひいては会社、労働者を守ることになります。

不明点・ご相談は
二十一世紀総合研究所まで
お問い合わせください!

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