イビチャ・オシム監督のコメント

Amebaでブログを始めよう!

【日本代表 vs サウジアラビア代表】試合後のオシム監督(日本代表)コメント06-09-04

●AFCアジアカップ2007予選大会 グループA
9月3日20:30キックオフ(現地時間)サウジアラビア・ジェッダ
日本代表 0-1 サウジアラビア代表
得点者:73' アルドサリ(サウジアラビア代表)
-----------

●オシム監督(日本代表)

Q:中盤でボールを取るのに苦労したようだが?
「チャンスの数はどっちが多かったかを考えてほしい。日本か? サウジアラビアか?
(質問者が「日本」と答えると)それが試合の内容を表していると思う。全体として悪い内容の試合ではなかった。中盤のボールについてはそういう試合もある。サウジアラビアは中盤に人数を多くかけ、いい選手もたくさんいた。日本は左サイドに問題を抱えていた。しかし、問題はそこにあったわけではない。最大の問題は15分くらいまでの間で、相手にボールをプレゼントし続けてしまったこと。経験がないのかもしれない。相手がタックルに来たわけでもないのに、10回ボールを奪って10回相手に渡してしまった。それは今日だけではなく日本が抱える問題だ。
しかし、いい部分も悪い部分も両方あった。今回の我々は準備に時間をかけられなかった。サッカーはオートマティズムが必要なもの。特にオフェンスの選手に問題が集中していたかもしれない。これは一朝一夕で直る問題ではないかもしれない。教育を受けていないからだ。選手たちは学ばなくてはいけない。悪い癖がついているのかもしれない。つまり、サイドでボールをもらったらすぐにクロスを上げてしまうというようなことだ。考えていないプレーが多かった。それを除けばアグレッシブに戦うことなどもよかったとは思う。日本の方が内容的にはよかった。結果として負けたわけなので、ジャーナリストのみなさんはもっと厳しい質問をしていい。サポーターのみなさんも怒っていい。もしブラジルだったら延々と負けた理由を話し続けているだろう。でも目指す方向は間違っていない。今日は結果が逆になってしまった。選手たちに言いたいことはたくさんあるけど、冷静に考えることができるまで待つことにする。試合のあった翌日に日本を出て、飛行機に乗って時差ぼけもあります。選手たちにとっては大変気の毒な状況だったと思う」

Q:今日の負けは若い選手にどういう影響を与えると思うか?
「負ける場合もあるんだということを最初に学ばなければならない。しかし、内容はよかったと思う。もしこの内容で勝ってしまっていたら、分からなかったこともある。失礼な言い方だが、サウジアラビアは内容うんぬんではなく1-0で勝ったわけですから、内容を忘れてしまってもいいと思う」

Q:最初の15分間パスがつながらなかったのは、受け手と出し手のどちらの問題か?
「多分、白(サウジアラビアのユニフォーム)と青(日本のユニフォーム)の区別がつかなかったのだろう(笑)。よくあることだ。これまで対戦したことのない相手と戦う場合、特にブラジルスタイルの相手と戦うときに多い。ブラジルスタイルというのは、動きながらそこに来るのを予測するようなスタイルのこと。慣れていない選手は相手にパスを出してしまう。相手側もそういう狙いで動くので、注意深く動かなくてはならない。改善する方法としては、もっとアグレッシブに動くことです。スキル向上も悪くはないが、それは一朝一夕ではできないものだ」

Q:巻には何か問題があったのか?
「巻だけが問題だったら少しはマシだった(笑)。巻は他の選手の足りなかった部分を補っていた。そういう選手が疲労してゴール前でチャンスを失うことはよくある。彼はゴール前で待っているタイプではない。今日の試合は中盤全体に問題があった。つまり、前線で巻と田中達が頑張っても遠藤、アレックス(三都主)、阿部、鈴木啓太が連動しなくては攻撃ができない。冷静に確実にやれば1点、2点、3点取れたと思う。
最初の話に戻るが、負ける方がいい場合もあります。主導権を握って、チャンスを作って、点も取れていれば、何も気づかないだろう。今日の試合は今後研究する材料がたくさんあるように思う」

Q:イエメン戦に向けてメンバーを替えるのか?
「24人連れてきたのはそういう意味だ。巻も問題があるらしいし(笑)。他の選手も問題があると言ってくるかもしれないし(笑)」

Q:中盤で押し上げができなかったのは、どこに原因があると考えているのか?
「一口では言えない。中盤にはさまざまな要素がある。まず、対戦相手はどんなチームか、自分たちがどういうプレーをしたのか、リスクを冒したのか冒していないのか、サイドは機能したのか、片方ができて片方ができていないのはなぜなのか…といろんな角度から考えられる。機能しなかったのが経験のある選手の方(左サイド)だっただけに、非常に残念ではある。
まだ理想のチームが出来上がっているわけではない。不完全なままリスクを冒すことも時には必要だ。あらゆることが手に入るわけでもない。ハッキリしているのは優れたストッパータイプの選手が不足していること。背が高くてしっかりボールさばきのできるDFだ。すぐにはプレーしなくてもベンチで控えていて動ける選手もそうだ。そんな選手がいるだろうか。みなさんの方がだくさん試合を見ているだろうし、逆に聞いてみたい。誰かご存じではないか?
ストッパーというのは時にミスを冒すものだ。MFを含めて、闘莉王、坪井、阿部、鈴木のように攻撃に参加してリスクを冒せる選手がいない。大事なのは味方のことよりも、対戦相手のことを考えることだ。今日のサウジアラビアは優れた選手がたくさんいた。その点でサウジアラビアの方が優れていた部分があったのかもしれない。
選手たちに、負けた原因は君たちが走らなかったからだと言うつもりはない。それは不公平というもの。サッカーは学ぶことが多いです。選手を代えれば点が取れるのであれば代える。しかし、例えば、サイドラインで交代選手が待ち構えているだけで、誰が交代するのかと試合に集中できなくなる選手もいる。後から投入した選手の方が酷いプレーをする場合もある。
今日の試合では、第4の審判が選手交代に時間がかかりすぎたという問題もあった。こちらの交代選手が待っている間に失点してしまったのだ。Jリーグの試合でも5試合くらい見たことがある。千葉が負けた試合とか。連鎖反応なのだろうか(苦笑)。だから負けたことを正当化するつもりはないが、私はそういうディテールを分析しているということだ。
今日の試合でもう1つ言うと、私のチームは残り数分の時間帯で、闘莉王が前線で競り合う準備をしているのに、DFラインで4回も5回もDF同士でパス交換をしていた。それはまさに自己破壊。これもマイナーなディテールの問題だ。彼らは20歳を過ぎた大人なのに…。
話を戻すと、今日は負けて本当によかったのかもしれない。負けて痛みがないいわけでないし、私の胸も痛いけど、選手たちはどうなのか…。
これから帰りのバスに選手たちと一緒に乗りたくはない。歩いて帰ります(苦笑)」

【日本代表 vs サウジアラビア代表】前日練習後のオシム監督コメント06-09-03

●オシム監督:

Q:今回はハードスケジュールだが?
「そのハードスケジュールというのは年間通してのことか?それとも秋がいつ始まったかということか?秋はもう始まりました。ご心配なく(笑)。スケジュールはもう決まってしまっている。変更できないことにあれこれいっても仕方ないだろう。私はポジティブに考えるようにしている」

Q:短期間で2試合あるが、高温多湿のサウジアラビアと高地のイエメンでは練習方法を変えるのか?
「サウジアラビアは高地ではない。気温が高いがJリーグで暑い8月に何試合かこなしてきている。そういう条件だからできないとは言いたくない」

Q:アウェーの戦いになるが?
「ホームもアウェーも意識していない、ただし、初めて代表に選ばれた選手などがいて試合経験の浅いことを心配している。しかしこれをチャンスと捉えて、試合に出場して経験を積んでほしい。一般論から言うと、ホームの方がプレッシャーを感じ、アウェーが気楽に感じることがある。しかしこの時期のサッカーはホームが有利なことも知っている。それでも戦わなければいけない。試合が始まれば分かるでしょう」

Q:昨日と今日の練習メニューの1つ1つが短いと感じたが、選手がなれてきたからか?
「今日の練習が短かったとは思わないが、そう感じられたのはインテンシブにやれたから。今は選手がお互いに知り合っている状況だ」

Q:サウジアラビアと日本はともにアジアカップを3回優勝しているアジアのライバル関係にあるが?
「人生もそうだが、サッカーはどれだけ勝ちたいかと思う度合いによる。私にとってはあらゆる国際大会が大事。それがプロ選手としての姿勢だ。サウジアラビア戦はブラジル戦と同じように戦うつもりでやる。ただし私の戦術は特にない。サッカーをするだけだ。サッカーは相手によって変わる。相手をリスペクトしなければならないのは言うまでもない。理想は内容が伴った結果だ。どちらも求められないなら、今のチーム状態を見極めなければならないけれども、残念ながらいつもメディアは結果を求める。結果が報道され、内容がどんなによくても3日後に忘れられている。時として試合後すぐに忘れられることもある」

Q:サウジアラビアについてどう思うか?
「日本同様、ワールドカップに何度も出ている国。それ以上、私が言うのは失礼に当たる」

Q:サウジアラビアは日本に長く勝っていないが、なせだと思うか?
「私はこれまでの対戦に詳しくないし、指揮を採ったわけでもないし、当事者でもなかった。今後は新たな歴史を組み立てることになる。日本もサウジアラビアも勝てない理由はお互いにない。世界的にチーム力の差がなくなりつつある。私にとってサッカーは人生であり、ほんの小さなニュアンスの差で違いが出る。私はいつも相手をブラジルだと思って戦っている」

Q:明日の試合については?
「お互いにアジアの強豪同士。情報を持っている。それを選手がどう生かしていくかで、ゲームが始まるだろう」

Q:今回の日本代表にドイツワールドカップに出た人が4人しかいないのはなぜか?サウジアラビアの気候の影響は?
「ワールドカップに出場した一部の選手は引退した。代表からの引退を表明した選手もいる。失望したのかもしれない。同時に日本は4年後の南アフリカワールドカップに参加したいと思っている。4年のスパンを考え、能力を加味してメンバー選考を行った。代表監督は代表チームを私物化しているわけではない。私の一存でチームの選手を選んでいるわけではないことを理解してほしい。世界のサッカーの進歩に追いついていくためにも、日本代表にはもっとアグレッシブな選手が必要だ。走る能力の高い人だ。世界のサッカーはそういう方向に進んでいる。美のための死んでいいという選手が入る余地が少なくなってきた。個人的には残念なことだが、今のサッカーはそうだ。人生もそうではないですか?昔の旅行は汽車や歩きでのんびり行ったものだが、今はみんな飛行機を使う。うまく応えられたかどうか。みなさんにお任せします。気候に関しては言葉で言うよりも、みなさんが汗だくになっているだけで分かると思う。ここに座っているだけでも大変なのだから、走る選手のことを考えてみてほしい」

Q:DFにケガ人が出たらどうするのか?
「どうしたらいいと思うか?解決策があったら教えてほしい。私は何度か話してきたが、複数のポジションのできる人を使いたいと思っている。DFもそうだ。それで負けるなら進歩ではなく後退になってしまう。私の考えは守備、攻撃の選手という区分けはない。その局面で選手たちが判断できる。全員の力が合わせられるチームを考えている。必要なら巻をストッパーにして、闘莉王をFWにすることもありうる。やってみても面白いかもしれない。実際にそういう必要が出てくるかもしれない。またお会いしましょう」

【日本代表 対 イエメン代表 試合終了後のオシム監督コメント】06-08-16 

●アジアカップ2007予選
8月16日(水)19:20/新潟ス/40,913人
日本代表 2-0 イエメン代表

得点者:'70 阿部勇樹、'91+佐藤寿人

●オシム監督(日本代表):
Q:後半開始から羽生選手を入れた意図と、指示の内容は?
「そんなに面白い問題でしょうか? 羽生のプレーは、そんなにすばらしくもひどくもなく、平凡なものでした。指示は単純で、サイドに開けということです。彼には詳しくは説明しませんでしたが、サイドに開くことで相手もサイドに開かせることができる。イエメンには小さく早い選手がいたので、彼を羽生に付かせることでスペースが生まれると思いました」

Q:セットプレーまでの展開が大事だと先日の会見でおっしゃっていましたが、満足のいくものでしたか?
「FKまでにどういうプレーがあったかということですか? 大事なのは、審判がプレゼントしてくれたFKなのか、相手がファウルでしか止められないプレーをしたのかということです。相手が苦し紛れのファウルで止めるようなプレーを繰り返すことが重要です。そこまでは満足ですが、そこからは事前の打ち合わせとは違う蹴り方をしてしまった。相手がもっと強くて、このようなミスを犯したら、取り返しのつかない結果になりかねないところだった。今日はFKとCKを合わせて20回以上あったと思うが(実際には28本)、日本のように技術のあるキッカー、阿部や遠藤、三都主、闘莉王などがそろっているのなら、最低5回に1回は決めておきたかった。代表の練習では、FKの練習時間は取れなかったので、各選手はクラブに戻ったら十分に練習してほしい」

Q:これが2試合目になるが、初戦と比べて進歩は感じられたか?
「それは私についてですか?(笑)守備面については、規律・組織性・忍耐強さなどの面で進歩があったと思う。攻撃に関してはもっとよくなる余地が残った。しかし強いチームというのは守備がしっかりとしているのが今のサッカーであり基礎。そういう点では進歩がなかったわけではない。スポーツを専門にしているジャーナリストのみなさんがほとんどだと思うが、今日の試合はみなさんの不満の残る内容だったのではないですか? そのことを心配しています。もっと率直な質問をしていただいて結構です。逃げませんから。日本は何に直面しているのか、とか…」

Q:スピードの変化を付ける練習をしてきたのに、前半は変化を付ける前にクロスをあげてしまうようなシーンが多かったように思います。監督はそのあたり忍耐が必要でしたか?
「私が不満に思っていることを申し上げましょう。それはDFラインのボール回しが遅く、各駅停車のようだったことです。しかも駅の多い各駅停車です。これでは前線にボールを送る前に相手の陣形が整ってしまい、DFラインを左右に動かすことができません。中盤で数的優位も作れません。目指すところは、もっと高いところにしたいと思っています。もっと強い相手がもっとディフェンシブな戦い方をしてきたら、こちらももっとサイドチェンジをしてリズムを変えていかなければなりません。まあ、言うのは簡単です。テクニックの問題でもあるので、一夜では改善できません」

Q:長期での強化策について、今後日本選手のハングリー精神などをどう刺激したいと思いますか?
「日本は豊かな国で、ハングリー精神は確かに育たないかもしれません。でも、欧州でも豊かな国、例えばイギリスなどはサッカーが弱いわけではありません。経済的な要因以外でサッカーを強くする方法、誇りや名誉、楽しみ…お金では計れないものに自分を賭けたいと思う環境作りが大事なのではないでしょうか」

Q:国内での親善試合よりもアウェイでの試合を多くするなどの強化策を考えていますか?
「ヨーロッパに遠征しても、ユーロやW杯の予選などで各国もたくさんの予定が組まれています。日本の選手たちを遠征に連れていくために招集することですら難しいでしょう。コストの面でも大きな費用がかかります。これは日本だけの問題ではなく、代表チームというのはそういう問題を抱えているものだとご理解いただきたいと思います。地理的に日本が離れていることは問題ではありません。もっと飛行機が速く飛べばいいんですよ(笑)」

Q:浦和同士・千葉同士のように同じクラブの選手同士のパス回しのほうがうまくいっていたように思います。今後もそのような選手招集をするつもりでしょうか?
「プレーにもよりますね。今日のようなプレーが続けば、1つのクラブから選出するという考えは捨てねばなりません。1つのクラブから選べばよいプレーができるという保証はないということです。千葉の選手は全員すばらしいプレーだったでしょうか? それなら私は全員、千葉の選手を選ぶでしょう。
ただ、これだけは言っておきたいのですが、浦和や千葉の選手たちは同じクラブだったから代表に選ばれたのではなく、それぞれが力を持っていたから日本代表なのです。
日本をもっと強くするためには、攻める、アグレッシブなプレーをするチームを増やさねばなりません。そのためには犠牲にするものもあります。それはエレガントなプレーをするということです。エレガントと効率性は両立しません。両立しているのはバルセロナだけです」

Q:ゴール前で多くのチャンスがありながら、決定力が足りなかった。改善策は?
「話が長くなりますよ(笑)昨日の会見でも話しましたが、守備を固めることは簡単です。攻撃のアイデアを出すのがいちばん難しいのです。そのためにトレーニングをしてきたつもりですが、トレーニングと実戦は違います。試合ではお客さんがたくさん自分を見ている。大きなプレッシャーがかかります。ここで自分が決めたら…と想像する選手もいるでしょう。でも、その場合はロクなことがない(笑)。だから失敗するのです。トレーニングに、たくさんの観客と多くのメディアやテレビカメラを入れてできたらいいのですが、そうはいきません。イエメンを呼んで練習試合をして、1週間後に公式戦…というわけにはいかないのです。
ここで、まったく違う話をします。来月、イエメンでアウェイの試合を行います。その時、イエメンは全く違うチームになるでしょう。ギリシャ神話に似た話があるのですが、自分たちの土地を再び踏みしめた時に、彼らの体内に大きなエネルギーが満ちる…。そういう効果をホームのイエメンに起こすかもしれません。今日はホームで勝ちましたが、次も楽な試合になるとは思っていません。今、これを言っておいたほうが、みなさんがガッカリしないと思ったので…」

Q:日本には、エレガントなプレーが評価されている選手がいますが、彼らはオシム監督の中でどう評価されているのでしょうか?
「意味はわかります。あまりにもエレガントなプレーは難しい。でも普通にエレガントなプレーだったらかっこいいかもしれません。その結果がどうなるか、ということです。そこを考慮したいと思います。美のために死を選ぶという生き方があります。でも、死んでしまったらサッカーは出来ない。そういう生き方をする選手がいることは自由ですが、それではサッカーができなくなってしまいます。現代のトレンドはそういう方向ではありません。どんな美しいプレーをしたかより、何勝したかが問われます。残念なことですが」

【アジア杯 日本代表 対 イエメン代表 オシム監督前日会見コメント】2006-08-15

●オシム監督(日本代表):

Q:明日の試合に向けて?
「コメントはありません。スポーツジャーナリストにふさわしいレベルにみなさんが達するまで質問を待ちたい。とにかく興味あることを聞いてください」

Q:なぜ今日、この場所(試合会場ではない)でトレーニングしたのか?
「ここですでにやっていたから、考える必要はないのではないか。明日のピッチコンディションについては、選手たちも何度もプレーしているし、大丈夫だと思う。特に千葉の選手は3日前にプレーしたばかり。後はピッチコンディションを崩したくないからプレーしないというのもある」

Q:イエメン戦については?
「まず相手について多くの情報を集めるのが大事ということは認識している。日本サッカー協会のルート以外にも個人的なルートで情報を集めた。彼らはよく走るしっかりしたチーム。アグレッシブでテクニックがあって、点差が開いても諦めない。粘り強く闘うチームだ。近代サッカーではボール扱いがうまいのは当たり前。イエメン代表に不注意なプレーをしたら取り返しのつかない結果になることもありえる。かつてのイエメン代表を知っている人から見れば、意外な結果を招くこともありえる。カリスマはいないけど、警戒を擁するチームだ。日本代表はここ最近でバーレーン代表やオマーン代表と2度、3度対戦して接戦をしているが、イエメン代表はそのチームとそれほど変わらないチームだ」

Q:初の公式戦を前にプレッシャーを感じているか?大勝しなければいけないと思っているのか?
「私はプレーしないから、プレッシャーはない。選手が感じているのではないか。もしかするとジャーナリストのみなさんが感じているのかもしれない。結果の予想、心構えについては礼儀を失するのでお答えしません。もし質問された方が日本が当然勝つだろう、どのくらいの点差で勝つのかと思うのなら、相手に失礼だ。向こうが勝つ可能性もある。全てが決まるのはスタジアムのピッチの上だ」

Q:今回、2006W杯ドイツ大会のキャプテンだった宮本が招集されていないが、今後彼は呼ばないのか?
「宮本が日本サッカー界で最も優れた選手であることは知っている。しかしG大阪の監督との関係がある。私との関係ではなく、西野監督とのことだ。つまり、彼はいつもJリーグの試合に出ているわけではない。そういう問題はある。プレーヤーとしては大変高く評価しているのは間違いない。今年の日本サッカー界では優れている選手だ。しかし2年後、4年後を考慮する必要もある。でもチャンスはあると思いますよ」

Q:イエメン戦は上背がないが、セットプレーがアドバンテージだと考えているか?
「日本には相手の平均身長より低い人が6人ほどいる。だから圧倒的身長差があれば有利だが、果たして明日はどうでしょう。セットプレーも大事だが、セットプレーに至るまでのしっかりしたプレーが必要。いい場所でのセットプレーが大事なので、それを得るための流れの中のプレーを重視している」

Q:最後の紅白戦は実践的な練習ではなかったのか?
「あれは選手も疲れていたし、レクリエーションだった。何度も話していささかうんざりしているが、私は選手にどんなプレーをしろとか、どこに動けとか、指示を出してはいない。完全な自由を与えている。ただし守るべき原則はある。どこでどんなプレーをするのか、選手が考えなければいけない」

Q:練習前後に三都主と遠藤と話していたが?
「もっと走れと言った」

Q:数的優位の状況を作る練習が多くあったが、日本人の瞬間的判断力は他の国に比べて低いのか?
「問題は日本人選手が速く判断することではない。早く考えるということが、一般社会で許されるのか? そのことを私から質問していいですか?」
(質問者が「日本では誰かから教えてもらって育つことが多い」と応えると)「サッカーというのはそういうことと違う活動だ。もし選手がピッチの上で監督の指示を待っていたら、試合に負けてしまう。私は監督が何を言うか待っている選手はいらない。試合中にちょっと待ってくれとか、タイムアウトを取ったりとか、ピンチキッカーとかランナーが出てきたり、そうやって局面を変えることがサッカーではできない。選手には必要な情報をなるべく多く与えてはいる。選手はプレーしながら考えないといけない。サッカーはクリエイティブなゲーム。考えられないアイディアはない。そんな選手はサッカーには向いていない」

【アジア杯・イエメン戦前、日本代表合宿初日から】06-08-13

「(7台のテレビカメラの照明を前にして)日光浴に来たみたいだ」

 ―代表発表当日の集合、練習は異例だが。
「何が異例なのか。発表した日に練習をしてはいけないのか? 発表のショックを1日中受けていろというのか? 代表でなくても試合の翌日はクールダウンをする。今日はそういう練習。軽く汗を流すトレーニングです」

 ―今回のメンバー選考のポイントは?
「チームを編成するために必要な選手を呼ぶ。質問の意味が分からない」

 ―千葉の選手は意図を伝えやすい?
「千葉の選手を特別扱いしない。もう千葉の監督じゃない。千葉の選手だけじゃなく、浦和の選手についても聞いてください」

 ―イエメン戦のスタメンは考え直すか。
「直前まで分からない。ひょっとすると誰もいないかもしれないし、2人だけかもしれないし、5人だけかもしれないし、この間と同じかもしれない。まだあと2日間練習がある。新しい選手はなじみがないし、何ができるか見てみたい。まあ、なじみがない選手というのはジョークだが」

 ―選手への手応えは?
「1日やそこらで選手が私のやることを理解できたら、私は魔法使いだ」

 ―勝利だけには満足しない?
「いつも同じ考えだ。イエメン戦も負けるかもしれない。いつも勝たなければいけないという義務を選手に背負わすなら、代表選手だけじゃなく、子供たちもサッカーをやらなくなるかもしれない」

【トリニダード・トバゴ戦後 オシム監督会見】06-08-09

■今日の試合の教訓は、走ることだ

就任後の初戦を勝利で飾った日本代表のオシム監督
――3日間で作ったチームへの満足感、また不満点は?

 6日間のトレーニング期間があったなら6-0で勝てたと思うか? それはやはり難しいだろう。そんなに簡単なことではない。ただし、うれしい誤算があった。日本の皆さんが本当にサッカーが好きなんだなということを、スタジアムが満員になったのを見て実感した。今日の試合は私にとって大変重要だった。しかし同時に、協会に対しても選手に対してもJリーグに対しても、非常に責任は大きいと思っている。そうした責任の大きさは感じてはいたが、今日の満員のスタンドを見て、この人たちを失望させてはいけないとあらためて感じた。

 試合内容は、最初にしては全体的によいテンポで進んだが、よくない点もあった。選手たちが十分に走る力を持っている間は十分な試合ができた。トレーニング期間が限られていたにもかかわらず、3日間ではできるとは思えないようなコンビネーションもとれた。それでも私にとって気掛かりなことはあった。それは、サッカーは90分の試合だということだ。今日出場した選手の中には90分間、走ることができない選手がいた。それは代表選手だけではなく、Jリーグ全体に言えることだと感じている。ある意味、この問題の解決は簡単かも知れないが、きちんと考えなければいけない。特に日本人のサッカーというものを考えた場合、筋肉隆々ではないし長身でもない。それゆえに非常に大事だと思う。1対1の勝負では不利が出てくる。相手より、どれだけ多く走れるかで勝負しなければならない。残念ながらJリーグはそういう習慣ではない。今日の試合の教訓は、走ることだ。

――ピッチコンディションがよくなかったが、試合のプランに狂いはあったか

 大変いい質問だが、最初の質問と関連していると思う。この試合には条件上の制約があった。私は魔法使いではないので、これほど短い時間でチームのコンビネーションを練り上げることはできない。そのほかにも、グラウンドのコンディションが悪いとか、選ぶ選手が限られていたこと、ほかにも大会が平行して行われていたわけだが、そういった条件があって、グラウンドコンディションもそのうちのひとつだった。コンビネーションの問題で言えば、短期間でそれを解消する最も簡単な方法ということで、同じJリーグのチームからグループで選手を選んだということだ。


■英雄とは、すでに墓の中にいる偉大な人物のことを指す

――今日2ゴールした三都主はMFに適正があると思うか?

 今日は彼だけがヒーローではない。英雄とは、すでに墓の中にいる偉大な人物のことを指す。三都主はまだ生きているではないか。この英雄の定義というのは私なりのものだが、ある試合で得点を挙げてヒーローになり、ある試合で失敗をしてけなされるのは、選手にとって気持ちのいいものではないだろう。私にとって重要なのは、代表に選ばれていることを(選手に)自覚してほしいということ。その一員であることに誇りを持つことが大事だ。

――自分に与えられた日本代表のミッションに希望は持てたか。難しいと感じたか

 私の未来にどれだけ時間が残されているかによる。つまり、いつまで代表監督を任せてもらえるのか、あるいは誰がそれを決めるのかが大事だということ。まあ、今日明日に代表監督でなくなることはないと思うが。

――親善試合でこれだけ多くのファンが来たということに責任を感じたといったが、あなたの責任は心地よいものか、重荷なのか。また、うれしい誤算とは具体的に何か?

 今日の試合に限らず、すべての試合は私にとって重みがある。来日したときから私は監督として責任を自覚していた。ほかの日本人監督も責任感が強い方ばかりだ。責任感がなければ日本社会ではやっていけないことを私は知っている。
 うれしい誤算とは、さっきも言ったとおりスタジアムが満員だったこと。満員だったということの重要性をご理解いただけない方が、もしこの中にいらっしゃるなら(この仕事を)お辞めになった方がいいと思う。

【トリニダード・トバゴ戦前日 オシム監督会見】2006-08-08

■新しい井戸を掘ったつもりはない

トリニダード・トバゴ戦を前に記者会見するサッカー日本代表のオシム監督=8日、千葉市内のホテル
――質疑応答から始めますか?(日本サッカー協会広報)

 今日はコメントがあるので、この場にやって来た。明日の試合のこと以外に、何を話せと言うのだろうか。サッカーが話題だと聞いて、ここに来たのだ。(広報の)彼はマスコミ関係者のようだ(笑)。では、まだ私の考えを知らないマスコミ関係者の質問を受けましょう。

――青山(直晃)の追加招集で総勢19人となりました。新しいメンバーが中心となったわけですが、試合にあたっての準備と手ごたえは?

 私のイメージでは19人ではなかったと思うが、19人だっただろうか?(「けが人を入れて19人です」という記者の答えに)彼らはプレーできますか? けがをしている人はプレーできない。フィールドプレーヤーは15人、GKは2人。今野は負傷していながらもチームには帯同しているが、それは彼のチーム(FC東京)が(韓国遠征で)日本にいなかったからだ。青山については、飛行機が無事に日本に到着することを祈っている。彼を入れても18人だ。青山は昨日の試合(U-21代表の対中国戦)に出ているし、すぐに使うわけにはいかない。
 トレーニング期間が3日しかないことについては、特に申し上げることはない。「3日しかないですが」という質問をされれば、「そうなんです」と答えるしかない。質問の中に、すでに答えが含まれている状況だ。

――就任会見の時、「古い井戸に水は残っている」と言っていましたが、結果的には新しい井戸を数多く掘っています。その理由は?

 考えは変わっていないし、新しい井戸を掘ったつもりもない。今回の選手はリーグ戦やほかの大会で試された人ばかりだ。招集できないのはA3に出ている選手、ヨーロッパにいる選手。松井(大輔)はヨーロッパにいる選手の中で唯一のレギュラーだが、(今回の)ワールドカップ(W杯)には呼ばれていなかった。彼を含めてチームを考えている。質問は何でしたっけ?(笑)

――就任会見のコメントでは、メンバーが(ジーコ監督のときと)大幅に変化しないというように理解していましたが

 私が就任する前に日本代表が最後に行った試合、つまりW杯のブラジル戦と同じメンバーで戦えば、大きな変化ではないということだろうか? そうであれば私も楽だ。誤解されているようだが、私は井戸を掘らないとは言っていない。古い井戸ではない選手も試してみたいと、同じ日の会見で言ったことをお忘れではないか? 自分自身の発言に縛られるのは嫌いだ。だから、このようなメンバーになっているのだ。こうした話を通して、私は記者の皆さんといい関係を築いていると思っている。スタートとしてはまずまずではないだろうか?


■インテリジェンスを築いていけるかどうかが問題

――(トリニダード・トバゴ戦の)スタメンは考えていないと昨日話されていましたが、基本のシステムはどうなるのでしょうか

 どういうシステムでプレーするかは、誰が出るかで決まる。なぜ、スタメンが誰かを聞かないのですか? それでは話が堂々巡りになってしまう。(「ではスタメンを教えてください」との問いに)まだ、私も分からない。一番大事なことだが、相手がどのような作戦で来るかによる。それに、あらかじめスタメンを発表するのは、相手に失礼に当たる。大体は決まっているが、相手へのリスペクトを示すためにも、(ここで)スタメンは発表しない。彼ら(トリニダード・トバゴ)は攻撃力に優れているから、こちらの守備をどうするかをまず考えている。あとは攻撃の選手に誰を選んで、いかに相手を困らせてやろうかということ。これで答えになっていますか?

――今後も、相手によってシステムが変わることが考えられますか?

 システムそのものが変わるのかどうかより、チームとしてのインテリジェンス、賢い考えを築いていけるかどうかが問題だ。これができれば、相手に脅威を抱かせることができる。そういうことができるチームのインテリジェンスを作りたい。
 付け加えになるが、日本がものすごく強いチームなら、ブラジル戦と同じメンバーとシステムで、トリニダード・トバゴ相手に横綱相撲ができるはずだ。しかし、(実際は)そうではない。それができれば世界チャンピオンになれる。真の世界チャンピオンならシステムなど変更せずに、自分たちのやりたいことをやればいい。

――チームのスタートとして、選手にまず何を教えたいですか?

 私から日本に何かを与えようという気持ちはない。日本の方が、私より進歩しているのだから。

■青山の招集は五輪世代へのメッセージ

追加招集されたU-21日本代表の青山直晃。オシム監督の意図とは?
――昨日の試合(U-21中国対U-21日本)に出ていて、即座に使うつもりのない青山を招集した意味と、彼への期待は?

「どうして今野を呼んだのか?」という質問はしないのだろうか? 今野も同じだ。けがでプレーできなくとも、(彼も)最後まで一緒にいる。青山は中国からの飛行機に乗るか、乗っている間に招集された。答えになっているかどうか分からないが、五輪世代の中から選手を呼べば、残りの選手たちに対しても「自分たちにもチャンスがある」とメッセージを伝えることになる。そういう意味も含まれている。

――明日の試合では何ができたら成功で、何ができなかったら失敗なのでしょうか。また、その価値基準は?

 勝つことはサッカーの目的で、それを目指すのは当然のこと。だが同時に、内容の分析も大切だ。しばしば勝つことと成功が同じように扱われるが、その結果として違った方向に進んでしまうこともある。勝つと、チームの中で直すべき点が見えなくなってしまう。逆に内容がよくて負けた場合などは、負けた方が修正点を見つけやすいこともある。日本の皆さんに説明するのは簡単ではないが、敗北から最も学んでいるのは日本だと世界の人たちは考えている。ちょっと精神論に入ってしまったが(笑)、これは日本の経済などについての話だ。サッカーはもっと難しい。今、話したのは経済や社会の復興の話であり、サッカーについて言うならば、日本はそこから学ぶべきことがたくさんある。歴史、戦争、原爆……。その上で、日本は先進国の仲間入りをした。サッカーでもなぜ、強国と肩を並べることができないのか。それを実現させることが私の願いだ。その考えが気に入らなければ、ごめんなさい(と言うしかない)。


■敗北は最良の教師である

――インテリジェンスのあるチームを作りたいと話されましたが、選手の意識付けには時間がかかりますか?

 短い時間では難しい。個人の知識とは違う。基礎は個人個人のインテリジェンスだが、サッカーは11対11のスポーツだ。個人だけではなく、集団的なインテリジェンスが必要になる。もし、1人だけインテリジェンスのない選手が混じっていたら、チーム全員が被害を被ることになる。

――明日のゲームは試合内容にこだわるということですか? それとA3組(G大阪、ジェフ千葉)から明日になって追加招集する気持ちはありますか?

 サッカーは哲学の授業とは違う。今はサッカーについて話しているのだ。インテリジェンスとはサッカーについてのもの。哲学の授業をこれからやろうとしているわけではない。サッカーは単純なものだが、サッカーの試合は難しいものになりつつある。選手に対してはプレーだけでなく、知性、立ち居振る舞いといったことにまで、要求レベルが高くなっている。勝つことには、さまざまなことが含まれている。ただ(結果だけで)勝ってしまえば、そういうことが見えない。敗北は最良の教師である。だが、「だから負けたい」とは私は言えない。サッカーではすべてが可能だ。明日になれば、何を学べたか、学べなかったかというひとつの結論が出る。それは私が考え出したことではなく、一般的なこと。皆さんもそう考えていると理解している。この前のW杯は終わったが、そこから何を学んだかが大事なことだ。
 A3については、その質問は挑発だ(笑)。

――キャプテンは誰か、国民の関心が集まっています

 どうして気になるのだろうか? 私もキャプテンは大事だと思っている。だが、スポンサーの力やマスコミによってキャプテンが選ばれるわけではない。スポンサーやマスコミに都合のいい人がキャプテンになることを希望していることは多いが、時にその見栄えのいいキャプテンは役に立たないこともある。
 今は、この人がキャプテンだろう、という雰囲気が出てくることを期待している。キャプテンとは育てられるものではなく、持って生まれた特徴のある人。キャプテンとして生まれる、そういう人がキャプテンだ。指導者に関してもそうで、指導者になるための学校はない。指導者に生まれつくこと、それが指導者だ。生まれついた才能があるかどうか。もちろん、民主主義も尊重しようと思っているが。

 もう十分話はしたが、私はメディアの皆さんと意見のキャッチボールのできる雰囲気を作ろうと思っている。
 このチームは若いし、(今回の)対戦相手はうまい。しかもグラウンド状態は、お客さんにお金を払わせるのに値しない状態だ。明日はエレガントな試合にはならないだろう。

【トリニダード・トバゴ戦メンバー発表 オシム監督会見】2006-08-04

■「13人でも試合はできる。なぜ、この13人を信用できないのか」

日本代表のオシム監督はトリニダード・トバゴ戦に向けて、就任後初となるメンバー発表会見を行った。
登壇者

イビチャ・オシム(日本代表チーム 監督)
田嶋幸三(日本サッカー協会専務理事)

田嶋 オシム監督になって初めての試合、キリンチャレンジカップ2006、対トリニダード・トバゴ戦の記者会見に、多くの方々にお集まりいただきましてありがとうございます。われわれは本当に強化ということを考えて試合を組んでおります。ただ、オシムさんの最初の試合で、A3とスケジュールが一緒になってしまって、協会としてはサッカー界に対して本当に申し訳なく思っています。この試合は、16日に行われるイエメンとのアジアカップ予選に向けての強化試合でもあります。そこでトリニダード・トバゴという、今回のワールドカップ(W杯)でもスウェーデンやイングランドといった強豪相手に、非常にいい試合をしたチームを迎えることは、本当にうれしいことです。ぜひ、いい試合ができるように、そして最初のスタートとして、ファンの皆さんにいい試合をお見せしたいと思います。

オシム まずは皆さんに申し上げたいことがある。最初の(就任)会見のときに、私の発言が違うように解釈されたと聞いている。私は(今の日本代表を)車に例えて全員で押さなければならないと強調したわけだが、さまざまな方向で押すのではなくて、ひとつの方向にみんなの力で押すのだと、そういう例え話をしたつもりだった。

田嶋 (メンバー発表の)コピーがまだ間に合いませんで、私に読んでほしいということですので、発表させていただきます。
 GK:川口能活(磐田)、山岸範宏(浦和)。DF:三都主アレサンドロ、坪井慶介、田中マルクス闘莉王(いずれも浦和)、駒野友一(広島)。MF:田中隼磨(横浜FM)、今野泰幸(FC東京)、小林大悟(大宮)、長谷部誠(浦和)。FW:我那覇和樹(川崎)、佐藤寿人(広島)、田中達也(浦和)。 以上13名です。

オシム こちらから説明することはない。質問があれば、どうぞ。

――13名という人数の少なさの理由、それから代表選考で重視した点について教えてください

オシム 13人でも試合はできる。なぜ、この13人を信用できないのか。13人とも90分間走れる選手だと思う。というのは冗談だ(会場、笑)。
 初めて日本の代表監督をするにあたり、代表の強化日程に影響を与えることはできない。また、各クラブの活動についても、A3のように平行して行われている大会についても同様だ。しかしながら各クラブの日程(鹿島の上海遠征など)、そして代表とA3の日程が重なってしまうという事態になってしまった。大会、代表、遠征と、多くのチームの事情が複雑に絡み合ってしまっている。
 そうした試合に関係しているチームほど、代表に選ばれる可能性のある選手を多く抱えているというのが実情だ。だから、このリストはまだ完全に閉じられたものではない。現在、大会や遠征などで代表に招集できない選手の中から、代表に新たに呼ばれる可能性もある。ジャーナリストの皆さんは、どのチームが今、大会に参加しているのか、遠征しているのか、ご存じだろう。どの選手が追加招集されるかについて、具体的な名前は差し控えさせていただく。現在彼らは、別の試合を戦っているわけだから。
 代表チームと(他の日程が)バッティングしてしまったので、こういうことになってしまった。今後は、こういうことがないように願いたいものだ。もっとも、ジャーナリストの皆さん、ファンの皆さんは、誰が追加招集されるかという楽しみを、代表監督になったつもりで、その気分を味わってもらいたい。

――キャプテンは誰ですか

オシム 全員がそろった段階で決める。あまり大事なことだとは思っていない。


■「前回の会見で述べた方針に対する自分なりの回答がこのメンバーだ」

――田嶋さんに質問です。13人と聞いたときにどう考えたかということ。それから監督から「今後はこういうことはないように」とありましたが、これは協会に向けられた言葉だと思います。これは(メンバー発表が)3日延びて、なおかつ選手を絞り切れなかったと思うのですが、それに対して協会としてどう対処するのでしょうか

田嶋 まずスケジュールについてですが、これについてはシーズンの初めに、どちらを優先させるかということで、協会、Jリーグ、各クラブと話を進めてきました。シーズンの途中で、オシムさんに(代表監督を)代わっていただいたことで、非常にご迷惑をおかけしたと思っていますし、来年オシムさんとスケジュールを考えるときには、こういうことをしないようにしたいと考えています。
また、メンバーの発表が遅れてしまったことについては、さまざまなスタッフと長時間かけてオシムさんと話をしてきたわけです。そういった意味で、今オシムさんからお話があったように、(今後、選手を)プラスするということを含めての13名ですから、これからのけがなども含めて(追加招集も考慮して)選んでいるととらえています。
 会見の日程が延びたことについては申し訳なかったと思っていますが、われわれとしては選手を決めるのは監督であって、なるべく監督が十分に自信を持って(選手選考が)できるように、時間を取りました。

――オシム監督がやりたいように、協会としてやったということでしょうか

田嶋 日程については、オシム監督のやりたいようにはできないわけですから、それについては前もってわれわれで決めて、申し訳なかったと思っています。

――オシム監督に質問ですが、今回はフレッシュなメンバーが多いですが、オシムさんが最初の会見でおっしゃった「日本らしいサッカー」「日本の良さを生かしたサッカー」というのは、具体的にどういうサッカーをやりたいとお考えなのでしょうか

オシム 質問の意味がよく分からない。何を聞きたいのですか?
 私が、前回の会見で話したことを実現するために必要な選手を選んだ。何を具体的に知りたいのか教えてくれませんか? どういう選手を選ぶか、どういう試合をするか、というところで答えを出すつもりだ。ただ前回の会見で述べた方針に対する、自分なりの回答というのが、このメンバーだ。
 ジーコさんの時代に呼ばれたかどうかということは、それほど重視していない。さまざまな試合の中で、私自身が観察して、よい選手だと確認できた選手を選んでいる。ジーコさんは、W杯の時点での最高のメンバーを選んで、ドイツに連れて行ったのだと思う。それをまったく無視することはできないが、それ以外の選手を試してみるということはできる。

■「選考の第一基準は全員が日本人であることだ」

各クラブ、代表、A3の日程が重なったことで、この日は13名のみの発表にとどまった。
――追加メンバーは何人を考えていますか? トレーニングはどういう形で考えていますか

オシム 本来ならばもっと早い時期にメンバーを発表して、もっと早くトレーニングを開始したいと思っていた。最初は6日の夜に発表する予定だったが、それは遅いと思った。新しいメンバーを含むチームになるわけだから、本格的な試合に臨む前に、丸一日の練習と、力の劣る相手との練習試合など、時間をかけて(チームを)組み立てる必要がある。だから、今回も練習試合を予定している。
 この13人は、一緒にディナーをするために呼んだのではなく、試合をするために呼んだ。練習試合は非常に大きな意味がある。サッカーはお互いに知り合いになることも大変大事なことだ。サッカーは11個のピースを組み立てて、出来上がりというものではない。
 だから、13人という最低限、練習試合ができるメンバーを発表した。
 この後、追加の発表をするが、おそらく現在別の大会や遠征があって、代表の活動ができないクラブの選手たちのコンディションやけがをしていないかを考慮して、選ぶことになる。全部のクラブから選ぶことができなくて残念だ。

 一般論だが、7日間の間隔を空けてイエメンと試合をすることはかなり無理がある。つまり、トリニダード・トバゴ戦とイエメン戦の間にJリーグの公式戦の日程が入っている。
 私の考えでは、代表チームというのは、試合ごとにころころメンバーを変えるものではない。だから、トリニダード・トバゴ戦のメンバーもイエメン戦で戦うメンバーも基本的に同じにしたい。もちろん、疾病やコンディションの悪化などが起こった場合は別だが。

 だから、呼ばれた選手もある程度安心してプレーができる。13人の中に入ったのは偶然ではないと思ってもらっていい。次もまた呼ばれるだろう。
(追加人数に関しては)全体で20人くらいになるだろう。2試合をそのメンバーで戦う。
 さらに負傷者が出た場合は、追加の追加もあり得る。大事なのは、一緒に集まることだ。

――選んだ選手の具体的にどこをいいと思ったのでしょうか

オシム ここで選手の分析をしろとおっしゃるんですか?

――冒頭で、90分間走れる選手たちだとおっしゃった後に、「それは冗談だ」とおっしゃったので、どこに基準を置いて選ばれたのかをお聞きしたいのです

オシム 話をすることはできるが、非常に長くなる。第一の基準は全員が日本人であることだ(笑)。これはもう、絶対的な条件だ。それだけだ。


■「経験がないからといって招集しなければ、いつまでたっても経験は得られない」

――全体的に経験のない選手が多いですが、そういう選手を集めたのでしょうか

オシム 若い選手だけでもないし、そんなに若過ぎる選手はいない。サッカー選手として普通の年齢だ。
 経験で言えば、誰でも最初は経験がない。経験がないからといって招集しないのであれば、いつまでたっても経験は得られない。経験というのは、試合をする中で得られるもの。試合に出なければ、経験は得られない。

――監督はトリニダード・トバゴ戦を望んでいないように感じるのですが、その中でこの試合の位置づけは

オシム 日程は私が監督になる前に決まっていたわけだが、トリニダード・トバゴがどういう選手で、どういう試合をするかという、相手の監督の権限に私が干渉することはできない。
 相手は強敵で、生易しい試合ではない。多くの日本人はトリニダード・トバゴがどこにあるか知らないだろう。国がどこにあるかは別にして、選手の多数はイングランドでプレーしている。W杯にも出場している。だから、トリニダード・トバゴは観光に日本に来るわけではないし、あらかじめ予想をたてて簡単に対応できる相手でもない。

 トリニダード・トバゴは(W杯で)イングランド、スウェーデン、パラグアイの3カ国を相手に非常に良い試合をした。ひょっとすると、日本が入っていたグループよりも、強いグループだったと思う。それを戦った選手が来るわけだから、簡単な内容、簡単に勝てる試合になるとは思っていない。
 もしトリニダード・トバゴを相手に、日本が簡単に勝てるという雰囲気ができているなら、それは取り消していただきたい。この場に座って皆さんと話しているわけだが、トリニダード・トバゴに勝った後に皆さんがどう思うかを聞いてみたい。

 客観的にどういう相手かを考えることが大事だ。日本が勝つのは確実で、どう勝つのが問題だと考えている方がいるなら、それは違う。接戦になると思うが、もし日本が1-0なり最小得点差で勝った場合、それは偶然だったということになるが、勝つのが当然という雰囲気があったならば、誰も満足しないだろう。2-0で勝って当然という雰囲気があるならそれは違う。
 では、もし負けた場合はどうなるか? 「あの監督はダメだ」という意見がすぐに出る。トリニダード・トバゴに限らず、W杯に出るようなチームの中には楽に勝てる相手は1カ国もない。
 もし、私に(マッチメークの)権限が与えられていたならば、トリニダード・トバゴを相手には選ばなかった。強い相手とやるということであれば、もう1回ブラジルとやる。
 皆さん、本気にしました?(笑)

【日本代表オシム監督、U-21代表反町監督 就任会見】2006-07-21

登壇者

川淵三郎(財団法人日本サッカー協会 会長)
イビチャ・オシム(日本代表チーム 監督)
反町康治(U-21日本代表チーム 監督)


■監督契約とは結婚のようなもの

川淵 イビチャ・オシム監督と、日本代表チーム監督の契約ができる日を迎えられたことを非常にうれしく思っています。その反面、ジェフ千葉の関係者、特にサポーターの皆さんには心配や、あるいは納得のいかない面もあるかと思いますけれども、オシム監督を日本代表チームに送り出して本当に良かったと思える日が早く来ることは間違いないと思っています。
 反町監督の契約を喜んでいないわけではないのですが(笑)、今日の主役はオシム監督ですから。反町監督の紹介は特にしなくても皆さんご存じでしょう。彼も素晴らしい五輪チームを作ってくれることは間違いないと思います。
 このコンビが4年間、日本のサッカー界を引っ張ってくれることを期待していますし、多くのファンも同じように考えていると思います。
 今日は、私が話すよりオシム監督が話した方が皆さんの聞きたいことだと思うので、これくらいにしておきます。本当にありがとうございました。

オシム 日本サッカー協会に選んでいただいてうれしく、そして光栄に思っています。監督契約はある意味で結婚です。婚姻を結ぶと最初はうまくいきますが、その後がどうなるか分かりません。
 結婚では、たいへん多くの方の力が必要で、私と川淵キャプテンと反町さんの3人だけでやっているわけではない。そういう意味で、ここ(記者会見)に来た方々の助けも必要になってくる。
 代表を車に例えてみると、全員が車を後押ししなければならないと思う。今の日本の状況を見ると、一時的に車が止まっている気がする。だから、全員で押さなければならない。
 奇妙に聞こえるかもしれないが、私は最初に日本代表チームを“日本化”させることを試みる。組織的で具体的なよりよい方法で、日本選手が本来持っている力を最大限に引き出すことが必要だ。
 これは、初心に帰って、日本らしいサッカーをしようということ。

反町 オシムさん同様、こうして選ばれたことを光栄に思うのと同時に、ここに集まったたくさんの方々の期待を感じていますし、責任の重さも感じています。
 若い世代が、これからの日本のサッカーを支えるという意味ではU-21の世代は非常に重要になってくると感じています。
 この仕事の大きなものとしては、やはり選手をセレクトするということがかなり重要になってくると感じています。なるべくいい素材を選んで、オシムさんのスパイスをかけながら、なるべくおいしい料理を作れるように、やっていければいいと感じています。

 今年度は早速8月の初めに合宿をして、U-21中国代表との試合があって、そこからアジア大会まで、広い視野を持って裾野を広げて、これから日本を背負っていくような選手をたくさん、育成というか、経験を通じての成長という形になると思いますが、その手助けをしたいと思います。


■日本はどうして多くを期待し過ぎたのか?

――川淵キャプテンとオシム監督に質問したいのですが、今回のチームの出発としてワールドカップ(W杯)での失望がありますが、問題点をどうとらえているのか、失った自信をどう取り戻していきたいと考えているのかお聞かせください

川淵 技術的なことに関しては、私は今後、あまりコメントをするつもりはありません。日本サッカー協会の技術委員会が8月中に、取り組むべき問題を分析して、報告を受けて、私が再認識する形になります。敗戦に対する私なりの感想はありますが、ここで触れることはやめた方がいいと思っています。

オシム 川淵会長自身が触れないとおっしゃったので、私はどう触れたらいいのか。W杯の時に現場にいなかったので答えるのは難しいが、私は説明するよりもむしろ質問をしたい。ドイツでの失望というが、失望というのは、より多くのものを望み過ぎたからするものだ。そういった楽観的な見方はどんな根拠に基づいていたのか?
 理由として、ひとつはこちらが十分な情報を持っていなかったのではないか? ということが挙げられる。もうひとつは正しい情報を得ていたが、相手チームを見下してしまったのではないか? ということだ。
 日本が多くを期待し過ぎた原因は、どちらなのか?

 私のこのコメントに対して、がっかりした人もいるかもしれない。だが、物事は現実的に客観的に見て、未来のことについて話し合っていかなければならない。
 ただ、自分たちの能力以上のものを望むと、そこに待っているのは失望ということになる。

――代表選手の選考基準について、両監督の考えは何でしょうか

オシム 世界基準を持っている選手と日本の基準を持っている選手がいる。大事なことは基準を満たすという話よりも、現在のサッカー(のトレンド)を集中的に見ていくこと。ただし、他国のまねはすべきではないと思う。そして今後のこと、これから先のことを考える必要がある。

反町 選手を選ぶ基準ということでいえば、古い言葉になりますが「心技体」という言葉があります。この言葉の最初には「心」がきます。つまり、サッカーに対するハートの部分。この部分は非常に大切になってくる。その次には技術、体力というものがくる。サッカーの場合は、ゲームをするわけですから、さらに戦術的な要素もかなり含んでくると感じています。大まかにその4つが、選手を選考する際に大事になってくると思います。ただしゲームを見ただけでは分からない部分も、たくさんあるわけですよね。そうなると、(選手と)コミュニケーションを取ったり、チームの指導者や関係者と話をすることで、何らかのヒントが得ることができると思うので、これからはそうしたことが大事だと感じています。

■これまでの日本代表はスピードのあるチームではない

オシム監督は1990年W杯イタリア大会で旧ユーゴスラビアを率いて8強。2003年から千葉を率い、昨年、ナビスコカップ初制覇を果たした【 スポーツナビ 】
――トルシエ監督が退任してからの4年間、日本はW杯で結果が残せていませんが、オシム監督は2010年でよい成績を残せるように、具体的にどんなプランを考えていますか

オシム まず、そのような比較はしない方がよいと思う。2つのW杯はそれぞれ状況が違うからだ。2002年は共催とはいえ、日本は開催国だったのでホームで戦うことができた。しかしジーコの時は違っていて、準備の面やさまざまな側面など、その時に直面した状況の方が難しかったと思う。それに以前にも申し上げたが、今回のW杯での成績は、がっかりするようなものだったと考える必要はないと思う。私だけではなく、川淵キャプテンや反町監督とも、これからいろいろ考えることだが。

 ここで申し上げたいことがある。日本は経済的にも政治的にも、非常に進んだ先進国である。しかし、いろいろな分野で日本が世界でトップの国だからといって、サッカーも同様であると結論付けるべきではない。日本は先進国だが、すべての分野でトップというわけではない。(W杯で)どういう成績になるかは自分自身の仕事にもよるが、それ以上に選手のプレーにかかっている部分が大きい。
 サッカーは今後もいっそうスピーディーなスポーツになるということ、そしてさらに発達するスポーツである。常に進化するサッカーに、こちらも追い付かなければならない。これは、皆さんもよくご存じのことなので、いまさら繰り返す必要はないとは思うが。

――日本らしいサッカーを目指すと言っていたが、前のチームとどのあたりを変えていくのですか

オシム 近い将来、身長の高い選手を見つけることは難しいと思う。それが決定的な問題ではないが、もし見つけたとしても、その選手が日本人らしいサッカーをするとは限らない。私が考えているのは、日本人の持ち味をいかに生かすことができるか、ということだ。日本は、ほかのチームにないものを持っているわけで、それを生かすことが大事である。具体的には、素晴らしい敏しょう性、いい意味での攻撃性やアグレッシブさ、そして個人の技術。ただし、その個人の技術が、チームのために生かせていないようにも思う。ほかにも考えるべき点がある。例えば走るスピード、展開のスピード。これまでの日本代表は、スピードのあるチームではない。もっとスピードのあるプレーができると思う。まあ、話が長くなってしまうので、今日はこれぐらいにしておこう。


■今までの主力選手をそのまま残す

2008年の北京五輪を目指すU-21代表監督に就任した反町氏は、A代表のコーチも兼任する

――両監督へ、代表チームはそれぞれ活動期間が取れない中、どのように強化を進めていくのでしょうか

反町 シーズンは必ずゲームが週末、またはウイークデーにあるわけで、それはJリーグ、大学、高校も変わらない。その中で(選手を)招集していくのは、どこの国も同じだと思うわけです。そこで、各チームの協力を得ながら代表を強化していく形になると思います。
 ただし若いチームということで、所属チームでゲームに出ている選手が少ないという現状を考えないといけない。先日の水曜日のゲームでも、U-21の世代でスタメンで出ているのが7パーセントくらいなんですね。その率が上がってくれば、当然選考も簡単になってくると思いますが、そうではない事実を踏まえると、ゲームを経験してもらうことが第一だと考えています。それを各クラブに任せることになると思いますが、遠めで見るのではなく、なるべく近くで見られるように、各クラブと協力していきながら強化していくのがベストだと思います。つまり、J1、J2、JFL、大学も含めて、ギリギリの戦いの中で選手の力が付いてくると思うんです。それを増やせるように、各チームには依頼していくつもりですし、そうでなければいけない。そうした中で、より優れた人材を集めて、それにさらに強化を加えていって、という考え方がベストではないか、という印象を持っています。

オシム 皆さんも(代表強化の)スケジュールをご存じだと思うが、非常に過密なスケジュールだといっていい。近いうちに2試合(8月9日にトリニダード・トバゴと親善試合、16日にアジアカップ予選のイエメン戦)があって、この2試合は重要性という点で、やや違ってくると思う。ただ私の考えとしては、親善試合というものは存在しない。スケジュールを変えることは、もはや不可能だ。だから、この過密スケジュールの中で、自分が何をできるかということを、まずは考えないといけない。
 基本的には2つの方法が考えられる。ひとつはラジカルな変化。根本的に何かを変えるということ。多くの方が、こうしたやり方を望んでいるのだろうが、それがいいとは思わない。それから(もうひとつは)今までの主力選手をそのまま残すということ。もちろん選手といろいろ話をして、よりよいプレーができるようにすること。あまり時間がないので、現時点で新しいことや違うことは、やらない方がいいと思う。代表(の強化)には、もっと時間が必要だ。今この時期は、何か望ましくないことが起きても、文句を言わない方がよいのではないか。私はそう思っている。