Am I Wry? | 春昼閑話

Am I Wry?



Mew
Frengers

真っ白な世界、冬のイメージに近い音楽のひとつがMew。
アルバムタイトル『Frengers』を分解すると
「Not Quite Friends But Not Quite Strangers」
近くて遠い存在。
まるで手のひらで消えた雪のようなイメージ。

そして、一曲目『Am I Wry? No』
ああ。私も捻くれ、歪んでいる。
なんて、ふっと笑ってしまうタイトルだが
イントロ、ギターの音が、高い所からすっと入って
暫くすると「Farah...」と呼び掛ける歌い出し
ここまでの流れで、ピッと背中を走る戦慄は
爽やかなストレートパンチに似ている。

私がMewの音楽を形容しようとすると
どうしても「雪の世界」が心に展開されるのだ。

雪の結晶が、空からひらひらと舞い降りたかと思うと
風にさらわれ、急上昇したかのような
ふわっと遠くまで、聞き手の意識がトリップしそうな
どこまでも続く、白い、白い、音の世界。
そして、ヨーナスの柔らかい声の質感が、優しく耳に響く。
『Symmetry』という曲では12歳の少女と歌っているのだが
幻想的という言葉がぴったりの、美しくて儚気な、
透き通った声で、ふたりが柔らかく呼応しあう。
この曲も、静かな湖面に雪のひとひらが
降って来るような情景が見えて来る、とても好きな曲だ。

ここまで書いたが『Frengers』は
ただ単に綺麗なだけのイージーリスニングミュージックではない。
実は変拍子とポップが入り交じった少し異質なソフトロックなのだ。
音にうるさいプログレ好きで元ヒッピーの私の恩師も
サマソニで見かけて嵌ったと大絶賛していたから
リスナーの層も幅広いグループであろう。

タイトルからして今の季節にぴったりの
『She came for Christmas』という
綺麗な曲だが、歌詞がちょっと切ないナンバーや
『Snow Brigade』という、ピアノが入った刹那的な雰囲気の曲もある。
冬を感じる良曲を聞きたいと思う方にはおすすめだ。

Am I Wry?
それでも心に入る音は真直ぐで、清浄だ。



Mew
Am I Wry