灯りを探す旅 | 春昼閑話

灯りを探す旅



Travis
The Man Who

低い太陽が心もとなく、灯りを探す旅を続けるような季節が始まった。
訳のわからない手紙を発作的に出したくなるのは冬の所為だろうか。
一曲目『Writing To Reach You』
悲し気なギターの旋律から始まるこの曲は
そんな気分を代弁してくれる私にとっての名曲だ。

ところで、音楽を選ぶ基準とは何だろうか?
ファッションやルックスの良さ、タイアップなどの話題性…。
それらは音の付属物であり、いちばん後にまわされる選択基準であろう。
やはり、音楽を音楽として選ぶものとは、素の心で聴いて
琴線にひっかかる「詞」であり「メロディー」であり「リズム」なのだ。
涙が自然と出てしまう音楽との出会いは奇跡であり、そうそうなく、
TRAVISはまさに、私の空いた穴にすっぽりと納って
灯りをほんのりと照らしてくれるグループといえる。

最近、レコードショップに通う回数が減ってしまっているのだが
(タワレコまで家から歩いて15分位なのに!)
そんな私の情報源のひとつとして、ネットラジオが活躍している。
このネットラジオの利点は、演奏者の顔や背景も見えない状況で聴ける事、
どこかのレビューを先に読んでしまい、変な固定概念がこびりつかない事である。
淡々と、曲名、グループ名がブラウザにクレジットとして流れるだけだ。
気に入った音が流れれば、すかさずクレジットをメモにとる作業は
前に書いたが、子供の頃はまりこんだエアチェックの感覚を思い出す。
ただ耳と心で音楽を聴くこと。
これ以上の補足説明など要らない。何だか原点回帰の心境だ。
そんな環境で出会った音楽がTRAVIS。
グラスゴー出身という事は、後で知った。

 Because my inside is outside
 My right side's on the left side
 Because I'm writing to reach you now but
 I might never reach you
 Only want to teach you about you
 But that's not you
 Do you know its true
 But that wont do 


 『TRAVIS/Writing To Reach Youより』

あたたかいマグを片手に、ひそやかな時間の流れを
部屋でひとり感じて過ごしたい、そんな時には
彼等のような、自分とどこか類似した心の雫を
ゆっくりと掻き集め、精練し、
静かで優しいメロディーに乗せた音楽がしっくり来るものだ。
この冬の季節も彼等がいれば、のりこえられるだろう。