冬のある場所 | 春昼閑話

冬のある場所

ほね

声は
腐食した
古いテープのように
途切れ また 途切れて
夜の風音と混ざりあい
混迷の時間は
長い針がめぐるのを
数えて始まる

永遠に思える季節
周波数を合わせる術を
自ずから棄てた患者のいる
吹き曝しの突端で
私の猫がその影と
そっと寄り添っている

わずかな放熱を
すかさず奪い取る
見えない粒子と
耳朶にのこる紅い色が
蘇り 消えてゆく夜

私はそれを
残酷とは呼ばない
ここは 私の好きな
静かな虚無に 似た場所だ