昨年の『VOGUE』の書籍紹介の欄でJason Wu(ミッシェル・オバマが着たことで注目を浴びているNYの新鋭デザイナー)が書評を書いていて気なった「DELUXE:HOW LUXURY LOST ITS LUSTER」(高級品はどのようにその輝きを失ったのか)という本、日本でも出版されていました。


堕落する高級ブランド/ダナ・トーマス
¥1,680
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今まで、読んだファッション関連の本で一番読み応えがありましたタイトル


何といっても「ブランド」というテーマ、私には思いれがあり過ぎます!!


思い起こせば、小学生の頃から服に付いているロゴを気にし、ブランド至上主義のピークの大学時代は日本未発売だったヴィトンのヴェルニをいち早く手に入れたくて並行輸入業者から通常より高い金額で買ったりする状態だったし、「シャネルにディオール、カルティエにエルメスとブランドってすごろくみたいでもう飽きた」と言いながらも、レネ・カオヴィラやルブタンの靴に散財、昨年秋も、「パリに予約まで入れて行ったのに、バーキン買えなかった」と喚めいている始末ですし。

ともかく、この本では、ヨーロッパの一流ブランドが「品質重視」から「利益重視の企業グループ」へ変貌していく歴史と現在抱える問題点について書かれています。


中世に誕生した手工業ギルトを軸にして発展した職人たちの匠の技は、モノづくりのベクトルを量から質に向かわせることにより、一流とされる商品は王族・貴族によって保護されてきました。


こうした、ブランドにおいては、創業者の子孫が代々受け継ぐというファミリー・ビジネスが基本で、商品のクオリティとロイヤリティを守る結果として、そうした生産量の少なさが商品の希少性へと結びついて一流ブランドならではのステイタスを築けたわけです。


けれど、20世紀も後半になると、この旧スタイルの経営方針では、経営も火の車状態ということで、LVMHを築いたベルナール・アルノーに代表される経営のプロの手に渡ることでになりました。


こうした背景と、20世紀後半に増えた中産階級をターゲットとして、ブランドビジネスは、バッグやレザー小物やスカーフといったアイテムを大量に生産して、売上を伸ばしていきます。


また、DFSで売上げを伸ばし、さらに、売れ残りの商品を処分する為にアウトレットショップを作るという流れを確保していきます。


もはや、ブランド商品の大衆化

アナリスト曰く、このブランドの大衆化・民営化の最大の問題は、財務基盤が不安定になったことです。


かつては、一握りの富裕層が顧客だった頃は景気に左右されなかったが、価格を重視し、流行すれば店に押し寄せるが、流行が終われば見向きもしなくなる中間マーケットにターゲットを変えたことで、景気の浮き沈みで売上げが左右されるという不安定な経営状態となってしましました。



今後は中国やロシア、インドといった新しい市場を求めていくようですが、今ブランドが直面している危機は世界的景気後退だけではありません。


対極に位置するファスト・ファッションと手を組むことで、勢いを盛り返し、生き残りを掛けようとしている姿に、滑稽なまでの矛盾を見出している箇所は、印象的です。


重要なのは、高級ブランドのデザイナーがファスト・ファッションを手掛けるかとで、ファッション界における「最高級」と「最底辺」との境目がなくなったとう事実だ。今では金持ちが、アイザック・ミズラヒがターゲットでデザインした服を買い、逆に中間マーケットがグッチで買い物をする。ミズラヒはこの現象を「二極化ショッピングの崩壊」と呼ぶ。そしてそれをラガーフェルドはすばらしいことじゃないか、と言う。

「高いものと高くないもの――といっても、安物じゃないよ。安物という言葉が嫌いなんだ――が共存する時代に我々は生きている。ファッション市場でこんな現象が生まれたのは、初めてだ」と、彼は私に言った。


カール・ラガーフェルドに、もし質問出来るチャンスがあるなら、私はこう尋ねたいです。

あなたの作っているものは作品ですか?それとも商品ですか?」と。



誰よりもブランドを愛するファッション・ジャーナリストが描く「高級ブランド」神話の栄光と矛盾!と帯にあるだけあって、ジャーナリストがここまで暴露してもいいのかという内容も衝撃でした。


生産コストを下げる為に、中国をはじめ低賃金労働を提供する発展途上国に生産を移転したり、メディアへの注目度が高く極めて効果的なPR方法としてハリウッドスターに自社製品を身につけさせる為に何十万ドルものを小切手を切ったという話が、固有名詞を挙げて記載されています。



また、この本には、ブランドの歴史や秘話もたくさん盛り込まれているので、ファッション好きには、知ると嬉しい情報もちょこちょこ載っています。


プッチ家は15世紀にフィレンツェを統合していたメディチ家の政治顧問をつとめていた由緒正しいお家だったり、クリスチャン・ルブタンの最初のお客様はモナコ公国のカロリーヌ公妃だそうです。



本書には、ブランドが抱える様々な問題、グローバル化した経営の問題だったり、PRを巡る争いや、模倣品問題などが取り上げられていますが、不思議とブランドに対してネガティブな印象を持つことはありません。

むしろ、もっと応援したくなるような印象を感じたくなりました。