<概略>[*1]

  • 20年後、いまと同じ社会が続いていると無意識に考えていないか。2040年、国民の年金や医療費などの社会保障負担率は驚くべき数字になる。現在と同じような医療や年金を受けられると思ったら大間違いだ。事態改善の鍵を握る、医療や介護におけるテクノロジーの進歩は、どこまで期待できるのか。60年近くにわたって日本の未来を考え続けてきた著者が、日本経済や国力、メタバースやエネルギー問題、EVや核融合・量子コンピュータなど幅広い分野について言及。未来を正しく理解し、変化に備えられるかどうかで、人生の後半は決まる!

<備忘録>

  • 内閣府が発行している財政収支試算(中長期の経済財政に関する試算[*2])の成長率(実質GDP成長率)をベースに、社会保障費等の将来試算がされている。しかし、非現実的に高い成長率を見込むことによって、問題の深刻さを(意図的にか?)見え難くしている。

  • 日本の少子化対策[*3]が重要であることは疑う余地はないものの、20年後程度の“労働力(国の成長)”を問題とする限りでは、企業の生産性向上や女性や高齢者の就業率を向上させる方が重要である。外国人労働者に関しても、他の国が成長する中で日本は低成長(相対的に貧しくなる)であることが見込まれる。そのため、日本で働く魅力が薄れ、外国人労働者の確保も期待できないかもしれない。

  • 高齢者の増加に伴い、医療や福祉分野への就業者数を増加せざるを得ない。そのため、その他の分野の就業者が減少し、結果的に財やサービスの生産は国民一人当たりで減少する。

  • 企業の賃金は大学の成績では決まらず一律であることや博士人材の活用が進んでいない[*4]等から、日本の大学では勉強しない学生が多くなる。これれは、日本の教育や社会(経済)の構造的な問題である。

  • こうした日本の構造的問題を解決し、将来に向けて国力を成長させていくことが政治家(政策)の役割の一つであると考えるが、政治家たちは次の選挙で当選することが最大の関心事になっている。20年先の日本がどうなっていようが、全く関心がなく(ないように見える)、著しい「近視眼的バイアス」(myopic bias)となっている。

<考察>

  • 日本の構造的問題が解決されることは期待できないため、一企業、一個人、一親として、将来に向けてやるべきことを考え、実行していくことが必要となる。個人に関しては、学び直し(アンラーニングやリスキリング)や副業、社会貢献等による新たな分野の開拓(2枚目の名刺[*5]等)など、自身が動き出せば方法はたくさん存在している。
  • また、情報がますます溢れる中、世の中の情報に関しても自身で本質を理解しなければ、フェイクニュースや意図的に操作された情報に惑わされてしまう。見たままの情報を鵜呑みにするのではなく、「本当か?」「実態はどうなのか?」と前提を疑い、自身で調べ、正しく理解できるようになることが重要となる。
  • 今後も「本質は何か?」を常に意識しながら、自身の引き出しとモノサシを広げていきたい。

 

=========[引用開始](p50)=========

2.OECDの予測では、2020年から2030年までの年平均実質成長率は0・9%だ。日本政府の財政収支試算は、2%を超える成長率を予測している。

3.日本政府のさまざまな長期見通しは、非現実的に高い成長率を見込むことによって、問題の深刻さを隠蔽している。財政収支試算には高成長シナリオが示されているが、これは到底実現できないものだ。

(中略)

5.日本の出生率が、政府がこれまで想定していたより大幅に低下し、歴史上最低値となった。しかし、20年後程度を問題とする限り、労働力人口などには、あまり大きな変化はもたらさない。それより、女性や高齢者の就業率を引き上げるほうが重要だ。

===========[引用終了]===========

 

=========[引用開始](p107)=========

1.政府は、2018年に作成した資料で、社会保障給付と負担の長期見通しを示した。ゼロ成長経済を想定すると、一人当たりの負担は4割も増加する。それにもかかわらず、社会保障負担引き上げの具体策に関する議論は、ほとんど行なわれていない。
(中略)
4.人材を確保できるかどうかが大問題だ。外国人労働者に期待することはできないかもしれない。

5.高齢者の増加に伴って、医療・福祉分野の就業者数が増加する。その他の分野の就業者が減少するため、医療・福祉以外の財やサービスの生産は、国民一人当たりで見て減少する。その意味で、日本人は貧しくなる。
===========[引用終了]===========

 

=========[引用開始](p175)=========

2.将来の経済成長率として現実的な値を想定すると、原子力に対する依存度をかなり引き下げることができる。
===========[引用終了]===========

 

=========[引用開始](p217)=========

4.日本人は大学入試までは必死に勉強するが、それ以降は勉強しない。それは、日本企業が専門能力を評価しないからだ。アメリカでは、大学や大学院での成績で年収が決まるため、学生は必死に勉強する。
===========[引用終了]===========

 

=========[引用開始](p221)=========

多くの政治家にとって、つぎの選挙で当選するかどうかが最大の(多くの場合に、唯一の)関心事関心事だ。20年後の日本がどうなっていようが、まったく関心がない。官僚にも同じようなバイアスがある。あるポジションに在職中は、それに関連して事態が悪化しないように努めるが、在職期間は2、3年間だ。それ以降に、その分野で何が起ころうが、関心はない。  こうした事情によって、政治や行政は、今後2、3年のことしか考えていない。つまり、著しい「近視眼的バイアス」(myopic bias)がある。

===========[引用終了]===========

 

【参照情報】

[*1]野口 悠紀雄.2040年の日本 (幻冬舎新書) Kindle版.2023年1月20日

[*2]内閣府.「中長期の経済財政に関する試算」

[*3]日本経済新聞.「首相「若者の所得伸ばす」 児童手当を24年10月に拡充

[*4]日本経済新聞.「大企業の2割「博士採用ゼロ」 経団連調査、競争力低下も」

[*5]NPO二枚目の名刺

 

(いずれも最終閲覧日:2024年2月18日)