ブログネタ:キスしていい?って聞く派? 聞かない派?
参加中学生と言うのは実に厄介だと思う。
毎年毎年、同じ時期になると試験期間だの何だのって言って、教師達はより難しい問題用紙を作成し、生徒は生徒で成績の為だ何だと徹夜までして勉強をする。
間抜けだなと思う反面、自分も同じ様に勉強に励んでいることに気分が滅入ってくる。
「解けたのかい?」
「……一応」
思考を中断してノートを見下ろすと、無意識の内に問題を解いていた様で、頭が痛くなる様な数式で埋め尽くされていた。
嗚呼、本当に無意識って言うのは恐ろしい。
声の主である先生は、ノートを手に取ると、早速採点に取りかかった。
「計算しなくても、解るんですか?」
伏目がちになって、長い睫毛で陰って見えなくなった瞳を見詰め続け、思わず問い掛ける。
だって、余りにもスラスラと丸を付けて行くものだから、本当に合っているのか間違っているのか解っているのかが危うく思えてしまうのだ。
伏目がちになっていた瞳が、私を見上げる。
思わず、どきりとした。
きりっとした太く形の整った眉、瞼は外人並に堀が深く、陰りを生む。長い睫毛の下には、闇よりも尚昏い黒曜石の瞳が静かに光を湛えている。
何処か妖艶にも見えるその瞳が何故か苦手だと、最初の頃は思っていた。
「これでも一応、教師と言う職に就いているからね」
幾人もの生徒に、何度も何度も同じ説明をし、同じ様な問題を投げ掛けるのだから、いい加減憶えてしまうのだよ。
先生は優しく微笑み、そう言った。
それに対し、私は特に何を言うでもなく、「そうですか」とだけ答えた。
自分で質問して置いて酷いのかも知れないが、突発的な疑問なんてその程度だ。
「それにしても、君は優秀で助かるよ」
まるで、小学生の問題用紙の様に花丸がつけられたノートが返される。
「先生の教え方が上手なんです。先生に教わる前は、悲惨だったし……」
「嗚呼、初めて教えた日は本当に悲惨だったね。だが、一度教えただけで解るならば、それは君の実力なのだよ」
よしよしと頭を撫でる先生は、私を小学生か何かだと思っているのだろうか?
確かに子供であることには違いないけれど、私はもう高校生だ。
子供扱いされるのは好きじゃないけど、先生のあの瞳を見ると何も言えなくなってしまう。
「―――」
不意に、名前を呼ばれて、顔をあげる。
瞬間、あの瞳が近くなった。
長い睫毛がゆっくりと閉じられ、つられる様に瞼を下ろすと、熱が広がった。
「……まだ仕事中ですよ?」
熱が離れていく切なさと、唇に残った熱の恥ずかしさを隠す為に、俯きがちに呟く。
上目遣いで先生を見れば、可笑しそうに瞳が孤を描く。
「満点の子には、ご褒美をあげないと、ね?」
すらっとした人差し指を立てて唇を当てると、妖艶に、今度は唇が孤を描いた。
それに対して、更に恥ずかしさが増して、とうとう俯く私。
でも、それすら許してくれない先生は、包み込む様に頬に触れると、再び私に“ご褒美”をくれたのだった。