スクーバダイビングにあたっての医学的審査ガイドライン | 元キャビンアテンダント、元海外添乗員のダイビング教室(海外)

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元CA、元海外添乗員、現役PADIのインストラクター(MSDT)です。海外旅行にて、観光もしながら、海外で、ダイビングライセンスを取ってみたい方を応援致します。ご連絡お待ちしております!

PADIのサイトより、病歴に関する質問票、
及び、ダイビングにあたっての署名書類(日本語版)を抜粋致しました。

★海外のダイビングショップによっては、英語や、他言語の書面はありましても、日本語がない場合が多いです。ご参照下さい。

 

星医学的審査ガイドラインは、質問票、署名書類のあとに、EARTHWATCH INSTITUTE 様のサイトより抜粋させていただいております。

 

全てPADIサイトより抜粋したこれららの書類に、ご署名が必要です。

熟読されて、内容をご理解の上、ご署名下さい。

決して、ご無理のないよう、安全で、楽しいダイビングをされて下さい。

★ダイビング前に必要な健康、病歴に関する質問票が全てNOでなければいけません★

もし、YESになる場合は、ショップの担当医師を呼び、その医師の判断になります。

または、予め、お客様のほうで、医師の署名を用意されて、その書面を提出することが必要になります。

_____ 現在妊娠をしている、もしくはその可能性がある。

_____ 現在処方せんによる投薬を受けている(避妊薬、マラリア予防薬は除く)。

_____ 45歳以上の方で、以下の項目が1つ以上あてはまる。

• パイプ、葉巻、タバコを喫煙している。

• 現在診療を受けている。

• コレステロール値レベルが高い。

• 高血圧である。

• 家族に心臓発作や脳卒中の病歴がある方がいる。

• 食事療法で調整しているが糖尿病である

以前に以下の病気にかかったことがある、または現在かかっていますか?

_____ 喘息(ぜんそく)、あるいは呼吸時の喘息(ぜいぜいする)、または運動時に喘鳴が起きる、または起きたことがあった。

_____ 花粉症、またはアレルギー症状の激しい発作、あるいは頻繁な発作がある。

_____ カゼ、副鼻腔炎、または気管支炎によくかかる。

_____ 何らかの肺の病気(肺炎など)がある、またはなったことがある。

_____ 気胸がある、またはなったことがある。

_____ その他の肺の病気がある、またはなったことがある。もしくは肺(胸部)の手術を受けたことがある。

_____ 行動上の問題、または精神的、心理的な問題がある、またはなったことがある(不安発作、閉所恐怖症、広場恐怖症など)。

_____ てんかん、発作、けいれんをおこす、またはそれを抑えるための薬を服用している。

_____ 複雑型偏頭痛を繰り返し起こす、またはそれを抑えるための薬を服用している。

_____ 意識喪失や、気絶したことがある。(完全、または一時的に意識を失う)。

_____ 乗り物酔いがよくある。または乗り物酔いが激しくある(船酔いや車酔いなど)。

_____ 赤痢または脱水症状で治療が必要である。

_____ 何らかのダイビング事故や減圧症である、またはなったことがある。

_____ 中等度の運動ができない(例えば、約1.6キロの距離を12分以内で歩くことができない)。

_____ 過去5年間に、意識を失う頭部の損傷があった。

_____ 腰痛を繰り返し起こす。

_____ 腰部または背骨の手術を受けている。

_____ 糖尿病である、またはなったことがある。

_____ 腰、腕、脚の外科手術、外傷や骨折後の後遺症がある。

_____ 高血圧症の経験がある、または血圧をコントロールする薬を服用したことがある。

_____ 心臓疾患にかかっている、またはわずらっていた。

_____ 心臓発作がおきる、またはおきたことがある。

_____ 狭心症、あるいは心臓外科手術、または動脈手術を受けている

_____ 副鼻腔の手術を受けている。

_____ 耳の病気や手術を受けたり、聴覚障害、平衡感覚障害である。

_____ 耳の病気を繰り返し起こす、または起こしていた。

_____ 出血やその他の血液障害がある、またはあった。

_____ ヘルニアにかかっている、またはわずらっていたことがある。

_____ 潰瘍、または潰瘍の外科手術を受けている。

_____ 大腸や回腸の人工肛門の手術を受けている。

_____ 過去5年間に娯楽で麻薬を使用したり、治療のために麻薬を用いた、またはアルコール依存症になったことがある。

★また、このようなボートツアー及び、ダイビングに関する免責及び危険に関する同意書にもご署名が必要です★

ボートツアー及びスクーバダイビング免責及び危険引受同意書

よく読み、空欄に全て記入してから署名してください。

私__________________________は、認定スクーバダイバーであること又は認定スクーバインストラクターの
(乗客・ダイバー氏名)
管理及び監督の下にあるダイビング練習生であること、並びにダイビング場所への往復ボートツアー(以下「エクスカーション」と総称)中に発生する危険を含めたスクーバダイビングの危険を完全に理解していることを、ここに確言します。

私は、これらの固有のリスクとして、水溺、気体膨脹による外傷、減圧症、塞栓症又は再圧チャンバーでの治療を必要とするその他の高圧障害、乗船中の滑り又は転倒、ボートによる水中時の切創又は打撲、乗船又は下船時の外傷、および海に関連するその他の危険などがあり、これら全てが重傷又は死亡につながる可能性があることを理解しています。私は、再圧チャンバー及び救急医療施設から時間的若しくは距離的のいずれか又はその両方において遠く離れた場所でエクスカーションが実施されることを理解しています。私はそれでもエクスカーションに参加することを選択します。この同意書に署名することにより、私は、このようなボートツアー及びスクーバダイビングを、認定ダイバー又はダイビングクラスのダイビング練習生として行うことに伴う、これらのリスク及びその他の全ての

リスクを、十分に認識し明示的に引き受けることを証します。

私は、ダイビング専門家、ボートの乗組員及び所有者、ボート自体、PADIアメリカ(株)、その支社及び子会社、上記の個人及び/又は組織の所有者、役員、従業員、代理人、請負業者、権利継承者(以下「免責関係者」)のいずれに対しても、私がこのエクスカーションに参加した結果として又は免責関係者を含む関係者が能動的か受動的かにかかわらず過失を犯した結果として、私又は私の家族、財産、相続人又は権利継承者に人身傷害、物品損害、不法死亡又はその他の損害が生じた場合に、その責任を一切問うことができないことを理解し同意します。

私は、スクーバダイビングができる良好な精神的及び身体的健康状態にあることを確言します。さらに、ダイビングには禁忌であるアルコール又は薬物の影響下にはないことを言明します。医薬品を服用している場合、医師の診察を受け、その医薬品/薬物の影響下でもダイビングをしてよいとの許可を受けていることを確言します。また、スキン及びスクーバダイビングは身体的に激しい活動であり、このエクスカーション中は身体に無理がかかることを理解しています。心臓発作、パニック、過呼吸、水溺又はその他の要因によって傷害を受けた場合でも、かかる傷害のリスクを明示的に引き受け、免責関係者にその責任を負わせることはありません。

私は、安全なダイビング方法として、単独潜水の訓練を受けた場合を除いてバディと潜水することが推奨されていることを認識しています。したがって、自らのダイビング経験と限界及びその場の水と周囲の状況を考慮に入れて自らのダイブを計画するのは、私の責任です。私は、安全なダイビング計画を立てること、計画に沿って実際にダイビングをすること、並びにダイビング専門家/ボート乗組員の指示及びダイブのブリーフィングに従うことを怠った場合、その責任を免責関係者に負わせません。エクスカーションの前に自らの全ての器材を点検するのは私の責任であり、器材が正常に機能していない場合はダイビングをしてはならないことを確言します。

ダイビングの前に自らの器材を点検することを怠った場合、又は正常に機能していない可能性のある器材を使ってダイビングをすることを選択した場合、その責任を免責関係者に負わせません。

さらに、私は法定年齢に達しておりこの同意書に署名する資格があるか、私の親又は保護者の文書による同意を得ていることを言明します。私は、本書に記載されている条件が契約であって単なる説明でないこと、及び本書によって私が自らの法的権利の放棄に同意することを認識して自らの自由意思でここに署名したことを理解しています。さらに、本同意書のいずれかの規定が強制不可能又は無効であることが判明した場合、その規定が本書から分離されることに同意します。その場合、本同意書の残りの規定については、強制不可能な規定が最初からなかったものとして、解釈します。

私は、免責関係者に対して訴訟を起こす権利を放棄するだけでなく、私が死亡した場合に私の相続人、権利継承者、受益者が免責関係者を訴える権利も破棄することを理解し同意します。さらに、私にはそれを行う権利があり、私の相続人、権利継承者、受益者は、私の免責関係者への表明のため、異議を主張することができないことを表明します。

私_____________________________は、本書により、人身傷害、物品損害、不法死亡について、

(乗客・ダイバー氏名)

製造物責任及び能動的か受動的かを問わない免責関係者の過失であっても、原因にかかわらず、上記の全ての組織及び/又は個

人の一切の責任を免除することに同意します。

私及び私の相続人は、自分及び私の相続人を代表して署名をする前に、本書を読んでこの免責及び危険引受同意書の内容につ
いて十分な知識を得ています。

★なお、EARTHWATCH INSTITUTE様のウエブサイトに、
以前、担当医の方向けに、スクーバダイビングにあたっての医学的審査ガイドラインが掲載されていました。

私もダイブマスター、インストラクターになる際の提出書類のひとつに、
健康診断書がが必要でした。その際に、参考にさせていただきました。
ありがとうございます。

以下、抜粋させていただきます。

<< スキューバ・ダイビングをするための医学的審査のガイドライン >>

担当医の方へ:
趣味として行われるスキューバ・ダイビングは非常に安全であると記録されています。この安全性を維持するには、水中で危険を招きかねない身体の問題点を調べることが重要です。ここにあげる症例リストは、ダイバーが減圧症(肺の過膨張症候群)になる危険が高い状態にあるかどうかを調べる参考に掲載しました。減圧症になると、脳にガス塞栓が生じて意識を失い、溺死する可能性があります。さらにダイバーは、ある程度の寒冷ストレスに耐え、水の視覚的効果に慣れ、起こりうる非常事態に対処できる肉体的かつ精神的な余力を保持しなければなりません。

病歴、身体の検査、健康診断には、最低でも以下の項目を行ってください。この禁忌リストは相対的にも絶対的にもすべてというわけではありません。よくみうけられる医学的問題について記載しています。診察と特別な問診を指示通りに行いダイバーとして問題がないことを医師が確認する必要があります。米国に本拠を置く“ダイバー危険情報医師ネットワーク”(DAN)で、電話相談を受け付けています※。医学的見地からスキューバ・ダイビングは絶対に止めるべきだという身体状況があり、ダイビングによって負傷または死亡する危険が非常に高くなります。また、絶対的禁忌でない身体状況の場合、時間をかけて適切な治療を受ければ、できるようになる場合もあります。最終的には、医師が患者の状態を医学的にみて、スキューバ・ダイビングに適した身体状況であるかどうかを判断してください。

※ 日本国内については
DAN JAPAN/(財)日本海洋レジャー安全・振興協会(電話:045-228-3066)
http://www.danjapan.gr.jp/

本ガイドラインは、アースウォッチ本部発行の「GUIDELINES FOR SCUBA DIVER’S PHYSICAL EXAMINATION」の日本版です。日本版の作成に際してはDANJAPAN「スクーバダイバーのためのメディカルチェック・ガイドライン」を参照し、アースウォッチ・ジャパンのメディカルアドバイザー(医師)の助言に基づき作成しています。(2009年作成)

循環器系                                    
以下の疾患は、ダイビングに必要な運動能力が欠如していることが考えられます。このような状態は、ダイバーに心臓の虚血やそれに関連した疾患を引き起こす可能性があります。

運動能力を評価する方法として、トレッドミルなどを利用した運動負荷試験があります。(*1)運動負荷試験の最低基準は13METSといわれています。(*2)この運動基準に達するならば、まず問題はありません。
 水中に入ると、血液は、皮膚表面から中心部に移動します。この影響は、冷水中で非常に大きくなります。水に入っている間は、心臓の負荷は、著しく増加するため、左心室機能障害や、重症の心臓弁膜障害を持つ方では、肺水腫が助長される可能性があります。アメリカの剖検例では、スクーバダイビング死亡事故者の多くに冠動脈疾患が関係しています。40歳以上の人がスクーバダイビングを行う場合は、冠動脈疾患の有無を検査(運動負荷試験など)することが推奨されます。

(*1) トレッドミルなどの陸上の運動負荷試験は、循環機能を評価する最も優れた検査法ですが、スクーバ(呼吸器具)を使用して水中遊泳を行うダイビングに、そのデータをあてはめることは、厳密には異なるとの指摘があります。しかしながら、臨床的には最も有用な評価方法といえます。
(*2) METSとは、代謝コストを表現する単位で、エネルギー消費量を意味します。安静時のMETを1として、2METSは休息時レベルの2倍、3METSは休息時レベルの3倍ということです。13METSとは、およそ12分で2,500mくらいを走ることの出来る運動能力で、bruceのプロトコールでは、ステージIVに相当します。ダイビングの危険を回避するために、また、他人を救助するためには、この運動能力があることが理想的です。通常のレジャーダイビングの運動量は、4-8METSです。日常の運動能力のレベルを目安にすれば、時速8km(12分で1600m)で歩行またはジョギングが持続的に出来る能力です。(毎分140mの速度で数分間ジョギングできる程度の運動能力が9METS)。ただし、心疾患がある場合は、これらに相当する運動能力があっても、安全とは考えられないケースも多数あります。

相対的に危険な状態:
◆冠動脈バイパス移植(CABG)の既往
◆経皮的冠動脈形成術(PCTA)
◆心筋梗塞の既往:症例によっては非常に危険性が高い状態もありえます。
◆高血圧:血圧が正常にコントロールされていて、十分に運動能力があるようであれば、比較的危険性が低い(相対的に危険な状態)と考えられます。
◆ペースメーカー(*3):ペーシングが必要だということだけで、ダイビングが危険とはいえません。運動能力が十分あるか否かが問題になります。

(*3)ペースメーカーについては、ダイビングでの圧力変化に耐えうるというメーカー保証が必要です。

危険性が高い状態:
レジャーダイビングにおいても、減圧によって気泡が生じてしまうことは少なくありません。しかし、この静脈内気泡が直ちに減圧症を発症させるわけではありません。少量の静脈内気泡は、肺毛細血管で捕らえられ、呼気に排泄されるからです。静脈内気泡は、右左シャントによって脳循環や脊髄循環に入り、中枢神経型の減圧障害(動脈ガス塞栓症)を引き起こす可能性があります。

1)薬物療法が必要な場合および下記の不整脈
 
例・ 失神、失神前兆、動悸がある場合
・ 心室性頻拍発作から6ヵ月間
・ 発作性上室性頻拍発作から6ヵ月間
・ 心室細動の既往
・ 失神、失神前兆、心室性不整脈のあるWenckebach型房室ブロック
・ Mobitz型房室ブロック
・ 完全房室ブロック
・ 先天性QT延長症候群
・ 洞不全症候群
・ 徐脈頻脈症候群
・ 発作性上室性頻拍を伴うWPW症候群
・ 運動耐容能が不十分な心房細動
・ 運動誘発性の不整脈
・ 器質性心疾患のある心室性不整脈 
・ 
2)右左シャント
3)拡張型心筋症
4)アイゼンメンジャー症候群
5)チアノーゼ型心疾患
6)ワーファリン服用者

循環器疾患の潜水適性の目安
例・ 投薬を必要とする心疾患は、すべて危険性が高い状態と考えられます。
・ 虚血性心疾患の既往:48時間以上の休薬後、最大運動負荷試験で虚血性変化が認められないことが必要です。6-7METS程度以上のスポーツを禁止されている方は、危険性が高いと考えられます。
・ うっ血性心不全では、ダイビングはほとんどの疾患において危険です。
・ 心筋炎:発症後6ヶ月は危険性が高い状態といえます。心室性期外収縮の頻発および上室性頻拍のないことを確認する必要があります。運動耐容能が十分あることが必要です。
・ 心房中隔欠損・心室中隔欠損・動脈管開存:根治手術がなされていることが必要です。
・ 僧帽弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全・大動脈弁狭窄・大動脈弁閉鎖不全:程度によって危険性が変わります。程度が軽ければ潜水での危険性は少ないと考えられます。
・ 僧帽弁逸脱症候群:有意な僧帽弁逆流がなければ、特に危険性が高い状態とはいえません。
・ マルファン症候群:大動脈瘤や僧帽弁逆流を伴う僧帽弁逸脱がある場合には、非常に危険です。

呼吸器系                                     
水中で呼吸を止めたまま浮上すると、肺が過度に膨張して気圧外傷(過膨張症候群)を起こすことがあります。また、息を止めていなくても、浮上(減圧)する際に、何らかの原因で腔所(ブラや肺胞など)に空気が補足されると気胸になることがあります。浮上中(減圧中)の気圧外傷では、肺胞の空気が動脈に流入しやすいため、脳の動脈ガス塞栓症を起こすことがあります。肺の間質性疾病が、自然気胸の原因になることもあります。気管支喘息(特に運動誘発性喘息)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性肺疾患、および空洞性肺疾患は、ダイビング時に空気を補足する(エアートラッピング)ことがあり、浮上時に破ける可能性があります。
気管支喘息もダイビングでよく問題になりますが、運動負荷テストを行っても喘息症状が出現せず、肺活量が正常であれば、肺の圧外傷や減圧障害の危険性は比較的低いと考えられています。(Undersea & Hyperbaric Medical Society, 1996, symposium)。また、吸入テスト(刺激剤として、ヒスタミン、高張性塩水、またはメタコリンを使用する)では、スクーバダイビングの安全性の評価はできないと考えられています。(*4)
呼吸器疾患の多くは、運動能力を低下させるばかりでなく、肺の気圧外傷を起こす可能性もあります。
咳込みを阻害するような神経疾患や筋疾患は、ダイビング中に水を吸い込んだときに溺水の原因にもなります。ダイビング中は、密度の高いガス(一般には空気)を吸うため、何らかの疾病に起因する呼吸制限があると、呼吸抵抗が増加し、呼吸状態が悪化することがあります。

(*4) 気管支喘息は、運動で誘発されないタイプのものであっても、コントロール不良なケースがあります。運動誘発試験だけでスクーバダイビングの安全性を評価することはできないと考えた方がよいでしょう。ほとんど無症状の気管支喘息の重症度評価については、運動誘発試験よりアセチルコリン吸入負荷試験の方が優れているという報告もあります。運動誘発試験が陽性な者(異常者)はダイビングの危険性が高いと考えられますが、陰性者(正常者)のすべてが、危険性が低いとはいえないのです。

相対的に危険な状態:
◆気管支喘息の既往(*5):ピークフロー検査で正常範囲内であっても、体調の変化などから、突然、水中で発作を起こすことがあります。ダイビングを安全に行うためには、少なくとも、気管支拡張剤を使用せずにコントロール良好で、運動誘発試験が陰性(*6)であることが必要でしょう。
◆運動誘発性気管支痙攣(EIB)(運動誘発喘息)の既往(*5)
◆硬化性の病変、嚢胞性の病変、空洞を伴う病変の既往(*5):肺の気圧外傷を起こす可能性があります。
◆二次的な気胸:(外傷性気胸など):気管支喘息、肺気腫、間質性肺炎などに合併した気胸は、自然気胸と同様、危険性が高い状態になります。外傷性気胸については、治癒していれば必ずしも危険性が高いとはいえません。
◆胸部手術
◆外傷または胸部貫通創(*5)
◆過去の過膨張障害(*5)
◆肥満:肥満の方は運動能力が低い可能性があります。
◆ダイビングによる肺水腫の既往
◆運動を制限される疾病(*5)
◆間質性肺疾患(間質性肺炎):気胸を起す可能性が高いと考えられます。ダイビングを安全に行うには、運動能力が十分あり、肺機能が正常であることが必要です(*5)。

(*5)運動の前後の呼吸機能検査が正常であることが必要です。呼吸機能検査の正常域は、通常、肺活量が80%以上、1秒率が70%以上とされています。

(*6)運動誘発試験が陰性(運動前後の呼吸機能検査が正常であること)については、以下の所見が参考になる(正確には以下のすべてを満たすときに陰性と判断できる)
・最大心拍数の85%以上の運動(3分間くらい)によって息切れが出現しない
・最大心拍数の85%以上の運動(3分間くらい)によって1秒量が15%以上低下しない
・最大心拍数の85%までの運動が可能なこと
・最低9METSの運動が可能なこと9METSの運動量とは、およそ12分で1,600mくらいを走れる能力)
・安静時の呼吸機能が正常

コントロールされていない気管支喘息(*7)、運動誘発性気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺機能検査異常の既往(*8)、または運動誘発試験で陽性のものは危険性が高いと考えられます。

(*8)肺活量のみが低下している場合は、運動誘発試験が陰性であれば危険性が高い状態とはいえない。

危険性が高い状態:
自然気胸の既往、肺疾患が原因で起こった気胸の既往:自然気胸の既往のある方は、たとえ再発を防ぐ外科的方法(たとえば胸膜癒着法)を実施した場合でも、ダイビングは危険でしょう。外科的方法(ブラの切除)を行っても原因となる肺の異常(胸膜癒着、先端胸膜切除)が解消したわけではないからです。同様に、肺疾患が原因で起こった気胸の既往がある方も、原因となった肺疾患がなくなったわけではないので、危険性が高い状態と言えます。

 呼吸器疾病に起因して運動能力が低下している方:
  例 コントロールされていない気管支喘息(*7)
    運動誘発性喘息
    寒冷誘発性喘息
    慢性閉塞性肺疾患
    肺機能検査の異常者

(*7)コントロールされていない気管支喘息とは
  以下の所見が参考になる(通常、1項目でも満たせばコントロール不良と判定する)
   気管支拡張剤を使用している
   運動時に息切れ、ゼーゼー、ヒューヒューがある
   肺機能検査に異常がある
   早朝のピークフロー値が予測値の80%未満のことがある(評価には、1週間程度かけることは必要と考えられる。)
   運動誘発試験が陽性である
   気管支拡張剤の吸入で1秒量が12%以上上昇する

注:呼吸器系の異常は、気圧の変化に影響しやすいため、危険率が高くなると考えられるものが多い。

神経系                                     
ダイバーの運動能力に影響を与えるので、神経系の異常は程度に応じた評価が必要です。

相対的に危険な状態:
◆運動障害などの神経系の症状や判断能力の低下を伴う偏頭痛
◆痙攣以外の後遺症のある頭部外傷既往
◆椎間板ヘルニア
◆頭蓋内腫瘍、未破裂脳動脈瘤、ラクナ梗塞
◆末梢神経障害
◆多発性硬化症
◆三叉神経痛
◆脊髄損傷または脳挫傷の既往、脊髄または脳の手術の既往
◆自律神経障害
◆エアートラッピングを排除し後遺症のない脳のガス塞栓の既往
   

危険性が高い状態:
意識不明を起こす可能性が高い疾病はダイバーが溺れる危険性が高くなります。血流障害のある脊髄または脳の疾病は、減圧症の危険性が高くなると考えられます。
   *小児の熱性痙攣を除く痙攣性疾患の既往
   *頭蓋内腫瘍または頭蓋内動脈瘤がある
   *一過性脳虚血発作(TIA)または脳血管障害(CVA)の既往
   *脊髄損傷、脊髄疾患の既往または後遺症
   *重症減圧症(深刻な病状および中枢神経型)後遺症

耳鼻咽喉科領域                                
潜降及び浮上の気圧変化に対して、外耳道・中耳腔・副鼻腔などが速やかに圧平衡できることが必要です。圧平衡に失敗すると、疼痛が出現して、組織の損傷をまねき、機能障害を起したり、時には、致命傷を引き起こす可能性があるからです。

内耳には液体が満たされているため圧縮されませんが、内耳と中耳の間にある内耳窓(正円窓と卵円窓)は圧力変化の影響を受けることがあります。万一、これらの内耳窓が損傷した場合は高度の難聴になることが多く、たとえ治療できたとしても、再びバルサルバ法などの耳抜きによって破れる危険性が高いといえます。咽頭には空気の流れを障害するものがあってはいけません。喉頭および喉頭蓋は、誤飲しないように、正常に機能している必要があります。
マウスピースをくわえることができる機能も必要です。
顔面骨折の既往のある人は、障害部位の気圧外傷を受けやすいかもしれません。

相対的に危険な状態:
 
◆再燃を繰り返す外耳炎
◆外耳道の高度の閉塞
◆耳介の重度凍傷の既往
◆耳管の機能不全
◆再燃を繰り返す中耳炎/再燃を繰り返す副鼻腔炎
◆鼓膜穿孔の既往
◆鼓膜形成術の既往
◆乳様突起削開術の既往
◆重症の伝音性難聴および重症の感音性難聴
◆気圧外傷に関連しない顔面神経麻痺
◆総入れ歯:マウスピースを保持することができ、空洞ができないことが必要です
◆顔面骨折の既往
◆口腔外科の術後(未治癒のもの)
◆頭部または頚部の放射線治療の既往
◆顎関節異常の既往
◆外リンパ瘻または内耳窓破裂の既往 

   
危険性が高い状態:
 
◆再生鼓膜または萎縮鼓膜
◆鼓膜穿孔の残存
◆鼓膜のチューブ挿入
◆あぶみ骨切除術の既往
◆耳小骨手術の既往
◆内耳手術の既往
◆内耳手術の既往
◆気圧外傷に付随する顔面神経麻痺
◆老人性難聴以外の内耳疾患
◆上気道閉塞
◆喉頭摘出術および咽頭部分摘出術(喉頭半切術)など
◆気管切開
◆喉頭ヘルニア
◆内耳型減圧症の既往 

胃腸 消化器系                                     
相対的に危険な状態:他の臓器系や病状で見られるのと同様、慢性疾患は運動を妨げられる要因になります。その上、ダイビングは医療施設から離れた場所で行われることが多いので、急性の身体障害の再発や命に関わる症状が起きる可能性を考慮する必要があります。
 
◆胃潰瘍、十二指腸潰瘍
◆胃食道逆流症(GERD)(逆流性食道炎を含む)
◆幽門狭窄
◆炎症性腸疾患
◆吸収不良症状
◆機能性胃腸症(FD)など
◆胃切除後のダンピング症候群 

危険性が高い状態:
手術や先天異常による解剖学的な変化のために、ガスが捉え込まれると深刻な問題を引き起こしかねません。粘膜の空洞内に補足されたガスはダイバーが浮上するにつれて膨張し破裂することもあり、上部消化管で起きれば嘔吐に繋がります。水中での嘔吐は溺水の原因にもなります。
 
◆高度の胃幽門部の異常
◆慢性あるいは再発性の小腸閉塞
◆消化管憩室
◆食道憩室
◆重症の胃食道逆流症(GERD)(逆流性食道炎を含む)
◆アカラシア
◆腹壁ヘルニア
◆食道裂孔ヘルニア
◆人工肛門 

代謝系および内分泌系                              
ホルモンの状態や代謝機能が変化した状態は、ダイビング(中程度の運動、および水中という特殊な環境)による環境ストレスに耐え得るか否かを評価されるべきです。
肥満は、減圧症の誘因になると考えられています。また、肥満は、運動の雨量を低下させますし、冠動脈疾患の危険因子でもあるため、ダイビング(運動)をする際には注意が必要です。

相対的に危険な状態:
◆各種ホルモンの過剰症または欠乏症
◆肥満
◆腎不全

危険性が高い状態:
インシュリンまたは経口血糖降下剤を使用している方は、低血糖による意識消失を起こす可能性があります。水中で、そのような状況に陥ると溺死する可能性が非常に高いといえます。そのため、一般的には、ダイビングは禁忌とされています。

妊娠                                       
減圧によって、胎児に静脈塞栓が生じるか否かについては最終的な結論は出ていませんが、動物実験などでは、胎児に減圧性気泡が生じることが証明されています。よって、妊娠していることがわかっている場合には、ダイビングは薦められません。また、妊娠の予定がある方、または妊娠しているかもしれない方についても、ダイビングは薦められません。
 
血液                                       
血液の粘度に影響する異常は、減圧症を起す危険性を増加させる可能性があります。血液中に生じた気泡が、塞栓を起しやすいからです。出血傾向は、耳や副鼻腔が気圧外傷を受けた際に憎悪させる要因になるかもしれません。内耳症状のある減圧症や脊髄障害を伴う減圧症も悪化させる可能性もあります。血友病などによる関節内出血は、減圧症外との鑑別を困難にすることがあります。

相対的に危険な状態:
 
◆鎌状赤血球症
◆真性多血症
◆白血病
◆血友病/凝固能の異常  
◆貧血 

整形外科領域                                   
約20kgのダイビング器材を背負って、海からボートに上がったり、足場の不安定な岩場を歩き、波に打ち勝って、体勢を保持しなければいけないこともありえます。水中では、装置の重量負荷は軽減されますが、腰椎を後屈させた状態が長く続いたり、身体のバランス保持やマスクによる視野狭窄のために、頚椎を後屈させたり、動かしたりする機会が多くなり、日常ではとらないような体位に知らず知らずのうちにとることもあります。機材の装着時には、関節の可動域および安定性もある程度以上必要となります。

相対的に危険な状態:
 
◆四肢切断:安全を確保する意味で注意を要します。その他、身体に障害がある場合も同様に注意する必要があります。
◆脊柱側湾:心肺機能を評価する必要があります。通常、Cobb角が25゜以下であれば問題ないとされます。
◆骨壊死:続発性の場合だけでなく、後発性でも、ダイビングによって悪化する可能性があります。

 

一時的に危険な状態
頚椎(頚部・背部・腰部)および四肢の鈍痛とその既往:
重量のある器材の装着や、ダイビング中の姿勢によって、半月板や椎間関節への負荷がかかり、再燃または再発することがあります。ダイビング中に症状が現れると、安全確保が難しくなる可能性があります。また、ダイビングによって憎悪または再発した場合、減圧症の発症との鑑別が難しくなるため、ダイビング前の状態を客観的に評価しておくことは、鑑別の手がかりとなります。

神経障害とその既往:
重量のある器材の装着や、ダイビング中の姿勢(腰椎後屈保持など)によって神経根の障害を起すと、潜水中の安全確保が困難になる場合があります。憎悪または再発した際には、減圧症との鑑別が難しくなることがあります。ダイビング前の状態を客観的に評価しておくことは鑑別の手がかりとなります。

関節不安定性のある場合:
ダイビングでは重い器材を背負い、不安定な岩場を移動することもあります。また、水中では、バランスをとるために、日常ではありえない姿勢をとることがあります。膝や足関節に不安定感があると、捻挫をする可能性が高く、水中でバランスをとるときにも関節に大きな負担がかかることがあります。そのため、関節に不安定性のある人は慎重に行動させる必要があり、不安定性があることを指摘することは、ダイバーにとって重要な助言になります。また、反復性肩関節脱臼の肩は、器材装着時に発症することがあります。
なお、ダイビング終了後に、関節部などに鈍痛や違和感を生じた際には、減圧症を考えなくてはなりません。その際、前記のような負荷による鈍痛との鑑別が必要になりますが、これらの鑑別を行うことは容易ではありません。ダイバーは、潜ることに意識が集中してしまい、少々の怪我は記憶に残っていないことも多いのです。よって、現在の状態を客観的に把握しておくことも重要です。

行動の健全性について                                  
行動:ダイバーにとっては、精神的に健康で、情緒が安定していることも、安全を確保するためには重要なことです。ダイビングを習得する際、インストラクターからの説明を十分理解し、安全な行動を自分で判断し実行できることが必要です。水中では一緒にダイビングする人(バディー)や、変化する環境にも、十分適応できることが必要です。
習得しようというモチベーションがあること、また、危険な状況をある程度推測できる能力があることも、安全を確保するために必要です。

相対的に危険な状態:
◆発達の遅れ:症例によっては危険性の高い状態に含まれる
◆薬物依存またはアルコール依存の既往
◆精神的な異常に陥った既往
◆向精神薬の使用
◆協調性に欠ける性格(性格の偏り)

危険性が高い状態:
◆ダイビングを不適切な動機で始める方:単に、配偶者やパートナーの付き合いでしかたなくダイビングをする、ダイビングに対するモチベーションがあまり高くない、日常と異なった環境の変化にも冷静に対処できる精神を持ち合わせていなければ、ダイビングは危険と考えられています。
◆閉所恐怖症/広場恐怖症
◆精神病
◆パニック障害
◆薬物依存/アルコール依存
◆頻回の物忘れや痴呆