CEF分科会Ⅱ-③「トラブルシューティングのKnow-how」

コーディネーター:若尾勝己(NPO法人東松山障害者就労支援センター)

話題提供者:新荘暢孝氏(社会福祉法人南高愛隣会)

 

 就労支援のプロセスから見る質の高い「職場定着」とは、ジョブマッチングが成されているということが大前提であるといえます。これは、様々な就労支援制度における支援の時間経過と定着率を比較してみても、アセスメントを重視しその職場での適応度を引き上げるサポートが導入された場合(ジョブコーチによる職場適応支援の提供、障害者就業・生活支援センターによる就業前支援から一貫した職場調整支援の提供など)、経年の職場定着率が高い傾向にあることが示されています。つまり、質の高い「職場定着」には、就労支援のプロセスにおける初期支援からの丁寧なアプローチが欠かせない、とても重要な支援であるという事に他なりません。

 しかし、近年の就労支援の現場では、職場そのものの慢性的な人手不足と職場が要求する仕事内容に見合う人材がなかなか現れないという疲弊感、引き上がる障害者雇用率に数字そのものをクリアすることが「Mission」となっている単なる人の充てこみは、多くの職場で混乱が起きている印象です。支援する側では、より働き辛さを抱えている人のストック量が増え続けている現状、常にその脱却を図らなくてはならないというベクトルに逆らえず、採用後の多少のリスクは「ありき」として受け止める職場側に、加速度的にスライドさせようとする機関は少なくありません。また、対象となる障害カテゴリーの裾野の大きな広がりは、単一的な職場の包容力の限界や、離転職という選択に基づく「出入り支援(長く続けることに価値を持たない)」や職場ショッピング等の個性のある個別のニーズへの対応力も求められるようになりました。こうして職場で起きている様々な課題を改めて見渡してみると、職場定着の意味や意義を今一度考え直す必要性があると感じずにはいられません。

 この分科会では、障害者就業・生活支援センターの主任職場定着支援担当者として、制度開始当時から活動されている新荘氏に話題提供をいただき、全国の障害者就業・生活支援センター主任職場定着支援担当者が抱える苦悩からいくつかの問題提起と、それらへどの様にリトライすれば良いのか、そして本来的な質の高い「職場定着」にどの様に繋げていくことができるのかを整理したいと思います。あり方論だけをバイブルにするのではなく、現実的な実態を抱え、それら目の前の課題に1つ1つトライして行かなくてはならない実情、キレイ事の世界では済まされないリアリティのある現場で、それらへどう対峙すべきか、短期的な視点に立った問題解決能力を如何なく発揮するための専門性とは何が必要であるのか、これらについての方法論を導き出すことに挑戦します。