またまた腸炎で入院中していた時の回想です。

同じフロアに、わがままで迷惑なおばあちゃんが入院していました。
このおばあちゃん、目が覚めているときは、四六時中大声を
出しています。そばで誰かがかまってくれないと、

「もしもし、もしもしぃ~、もぉしもぉぉしぃぃ~~
と始まります。そして段々声のトーンが大きくなっていきます。

勿論、看護師さん達は忙しいし、緊急の用事ではないことが
わかっているので、誰も相手をしません。

すると・・・

誰か~、誰か来て!だぁれかぁぁ~~~

と更に声が大きくなります。
エネルギーに満ちた大きな声。元気そのもの。
もちろん、誰も相手にしません。

しまいには、

誰か、助けて~死んじゃいますよぉぉぉ~~

こうなると、さすがに他の患者のことも考えて看護師さんが
相手をしにいきます。
看:「〇〇さん、どうしたの?別に何ともないじゃない。
あと5分したら仕事が一段落するから、もう5分待ってね。」
その言葉に、「うん、うん」と言うのだけれど、看護師さんが
おばあちゃんの所を離れた途端に、ものの一分と経たず、
「誰か、だれかぁぁぁ~~~」
が始まります。どうやら痴呆も相当進んでいる様子。

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  このおばあちゃん、家族から邪険に扱われて、それで
寂しがるのかと思ったら、そんなことはないのです。
ダンナさんか息子さんが交代で毎日お見舞いに来て
いました。
毎日、必ず、お見舞いにくるのに、それがわかっているのに、
それでもおばあちゃんは、大変です。
お昼近くなってくると、そこらじゅうにひびく大声で、
お父さん、パパぁ~!いつになったら来てくれるの?
早くきてぇ~~~
が始まります。
家族が到着したら、到着したで、大声で、
「もぉ~~、遅いじゃない。何してたのよ。私は、死んじゃう
ところだったじゃないのよ~」と文句を言っています。
家族の方も大変だと思います。

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  とにかく、おばあちゃんの声は大きくて、病院のフロア全体に
響きわたります。「死んじゃう」と大騒ぎする声は元気そのもの、
どこが悪いのか疑問に思うほどエネルギーに満ち満ちています。
これが、毎日、毎日、おばあちゃんが起きている間は
一日中続きます。みんな具合が悪いから入院しているのに、
おばあちゃんが寝るまで、この騒音に付き合わされるのですから
たまったものではありません。困

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でも、誰も不思議と文句を言わないのです。
というか、言えないのです。
というのも、みな、「明日、自分の親が、もしかすると自分か
その連れ合いが、そのおばあちゃんのような状態になるかも?」
と思うからです。
家族も、毎日お見舞いに来て、一生懸命おばあちゃんを
介護・看護していることがわかるので、苦情が言えないのです。

私と母も、祖母が94歳の頃呼吸不全で入院した時、一晩中ナース
コールを押し続けたというので病院から呼び出しを受け「面倒みきれ
ない。」と言って叱られたことがあります。そういう経験を思い出し
苦情を言う気になれませんでした。
せいぜい、同部屋の患者同士で、「ああはなりたくないねぇ」
と言うだけでした。

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それにしても、看護師さん達は、少しでも手があいたら、おばあ
ちゃんのところへ行き、「どうしたの?寂しくなっちゃたの?」
と優しく声かけをしていました。
仕事とはいえ、毎日、毎日同じ事の繰り返し。しかも、痴呆が
進んで理屈の通じる相手ではありません。
それでも、あくまでも優しく、「だいじょうぶだよ。心配ないから」
と声掛けを繰返していました。
その様子は、本当に天使でした。