いきなり始まったデスカラスvsミナカタの「イチの師匠」合戦に笑った後、急転直下でヤバい奴がお出しされた。

いや、反世界とサシで話す魔女って何者よ。

シリアルキラーのサイコパスっぽいけど、そんな安直なキャラじゃないだろうしな。

 

 

キラは時々空を見上げながら、手に触れた葉っぱを撫でながら歩いている。

彼の魔法としての能力は戦闘に特化しているような気がしたが、この行動にも何か理由があるのだろうか?

ふと気が付くと、歌声が聞こえてきていた。

「これ…ラクスさん?」

透き通った綺麗な歌声。

とても優しくて、幸せそうで、聞いている方まで楽しくなるようなそんな歌声。

「うん。ラクス、歌うのも好きだからね」

昔から歌うのが好きで、花が好きで、料理が好きで…本当に素のラクスは普通の女の子だった。

昔は昔で懸命に生きていたけれど、今の穏やかな生活、カリスマを期待されない生活はかつて望んでいた「何処にでもいる普通の人間」としての生活だった。

まぁ、魔法なんだけれど。

「聞いた事ないメロディだな」

この近辺で伝わっている、或いは流行っている歌なのかもしれない。

実はそれはこの世界では誰も知らない、ラクスのデビュー曲の「静かな夜に」だった。

ガサリ、と近くの茂みからイチが顔を出した。

「うわ。イチ君!」

「イッちゃん、気配消すの上手すぎだろ」

狩りをして生きてきたのだから、当然のスキルと言えばそれまでだ。

「気が済んだ?」

「ああ!いい山だな、ここ」

キラッキラした顔で元気に答える。

「動物も鳥も虫も植物も、みんな元気で…これ、キラさんの力なのか?」

イチが無邪気に訊いた事は、ここに来た初日にマリューが言っていた事に繋がっている。恐らくイチは何も意識はしてないのだろうが。

そして今も、キラが植物の葉っぱを撫でながら歩いていたのをクムギとゴクラクも見ていた。不自然なほど、ゆっくり歩いていた事も。

キラ本人は何も言わないが、恐らく全く関係ないという事はないだろう。

「どうだろうね?」

それは関係あるよと言っているようなものだったが、やはりキラはそれ以上は話さない。

これもかつてのキラの言葉に由来していた。

『幾ら吹き飛ばされても、僕らはまた花を植えるよ』と。

この言葉が今の自分にどれだけ影響しているのかは、キラ自身にも確かな事は解らない。

でも戦闘に使うのではない、こういう能力があるのは素直に嬉しかった。こっちの力の方が強くあって欲しかったと思う位には。

尤も、この世界の魔法の法則的に全く違う能力を二つ持つというのはありえないようなので、何処かでリンクしているかもしれないが、それもキラ本人にも解らない。突き詰めようとも思っていない。

ただーーー反世界に対抗する為に必要になったら、その限りではないが…今は、まだ。

基本的にキラは必要に迫られない限りは、積極的に動かない性格なのだ。