ここ数年ベースがすぐそばにあっても全く触る気にもなりませんでした。
たとえかかえても動きの悪い身体ではリズムも取れず、弦を鳴らそうにもろくな音も出ず、すぐにやめてしまうという感じでした。
ところが最近手に入れたこのベースは毎日触りたくなる不思議なベースなのです。
ある日私は友人のチカラーノ氏と「掘り出し物は無いか」と町中のリサイクルショップをまわっていました。
その中の一軒で、このお宝が新品の弦やチューナー、ギグバックなどいろいろなものが抱き合わされて一万円以下のB品的な扱いでSALEされていました。
高級ベースしか興味が無かった私は、なぜか店に入ってすぐにそのベースが気になりました。
(このベース、バッカス社製のJAZZ BASSでもっとも安いタイプのモデル。多分楽器屋さんで新品が二万円弱だと。)
しかしすぐに「こんな安物で満足いく音なんて出るわけない」と思い直し、高級ベースを一本一本試奏していきました。
けれど、なかなか理想の音を出す楽器はありません。チカラーノ氏の意見も同様で満足のいくものは無かったようです。
ちなみにそのころ私は全く弾けなかったので全てチカラーノ氏が弾きました。
そこで、私は初めに気になった安物ベースを指さし「意外とあれの方がい音したりして」とチカラーノ氏に伝えると彼は(そんなわけないよ)という顔をして笑っていましたが、笑いながら試奏を始めたのです。
私たちはそのベースの音を聞いてお互い顔を見合わせてしまいました。
なぜなら、安物ベースにありがちな「こもった感じ」がほとんどせず、低音から高音まで透明感のある輪郭のはっきりした心地よい音がしたからです。
チカラーノは「この値段でこの音なら何も迷うことはあるまい」と即購入を決めました。
しばらくしてチカラーノ氏が以前から気になっていたハイクオリティーなベースを手に入れました。そこで私はこう尋ねました。
「リサイクルショップで買ったあの安物ベースでリハビリがしたい。貸してくれないか?チカラーノ氏は迷うことなくこう答えました。
「あれはもう俺には必要ないからお前にあげるよ」
こうしてチカラーノ氏を経由する形で最終的に私の手元にそのベースはやってきました。
それ以来どんなに仕事が忙しくても、疲れていても毎日練習するようになりました。
2か月が過ぎ期待以上に腕や指の動きが良くなりそれに伴ってベースの「鳴り」も良くなっていきます。
本当を言うと、もうベースを弾けるようにはならないのではという寂しい気持ちでいました。
何でもあきらめず続けることの大切さを身をもって再認識致しました。
その機会を与えてくれたチカラーノ氏に感謝です。ありがとう。
