ある日の大学病院での出来事。
主治医の診断を待っていたら、扉が開いた。
受診が終わって、
出てきたのは、車椅子の男性。
同世代の男性。
他の患者さんをじろじろと見るのは、控えるべきだが、釘付けになってしまった。
コロナ前のマスクなしの時、
二度見されたり、じろじろ見たりされて嫌な気持ちには自分が何度もなっていたが、
その男性が出てくる所を見てしまった。
同じ主治医なので、似たような場所の癌だろう。
首は、放射線治療で、真っ赤に。
放射線治療で、後頭部だけが脱毛している。
車椅子を押すのは、高齢の男性。父親だろう。
その男性は、不機嫌そう、もしくは怒っているかのようだった。
男性が見えていない所で、高齢の母親が主治医に頭を下げた後、
扉を閉めていた。
釘付けになった理由は、まるで自分を見ているようだったから。
高齢の両親に、車椅子を押されて、通院している。
年頃も含めて、まさに自分そっくりだった。
癌という病気は、やはり高齢の方が多い。
癌になった時、アラフォーの自分は看護師さんや先生に
事あるごに、「若いから」と言われた。
その「若いから」が良い方にも、悪い方にも使われていたが・・・
そして、男性が不機嫌そうなのも、理由が手に取るように分かった気がした。
穏やかな表情、もしくは普通の表情が、出来る体調じゃないのだと思う。
心の余裕もないだろうし。
その男性に、自分がどうように映っているのか見せてもらった気がした。
見えない所で、両親が主治医に頭を下げたりしているのだろうという事も。
あの男性は、今どうしていうるのだう?