入院してから当初のマウスケアは、
黄色いスポンジで、口内を洗浄して貰えていた。
手術後は、完全寝たきりで、完全介護だった。
マウスケアはその後、
顎関固定で、口が一ミリも空かない時でも、
唇をあけて、歯の表面と歯茎を、スポンジでの洗浄が行われていた。
顎関固定が解除されてからも、
看護師さんによるスポンジでの洗浄が行われて、
時間帯は、基本的に、夜に行われていた。
ある時から、リハビリもかねて、自分で歯磨きしましょうとなった。
歯磨きする為に、ベットから洗面化粧台に移動し、
腰の支えがない椅子に座っている状態がきつかった。
でも、背もたれがなぎ事によるキツさは、想定の範囲内。
ふつうの歯ブラシが、口に入らないのは想定外だったが。
一本ブラシにすると入ってくれた。
コンクリートのフッ素ジェルを着けて、歯を磨く。
歯を磨く場所が、下の前歯の左側に行った時に、衝撃が走った。
衝撃とは、比喩表現ではなくて、
稲妻のように、ビリッと痛みが・・・・
優しく一本ブラシで、触っても、脳天にくるような痛みが・・・
放射線治療を受けたら、歯を抜いては駄目と言われる。
歯を抜くことによって、顎の骨が壊死してしまう為だ。
そんな人が、顎の骨を手術で観音開きにする為に真っ二つに割った。
大丈夫ですかと、手術前に先生に聞いていたが、
先生の答えは、「命の方が大事」だった。
歯を優しく触っても、電流のような痛みが走る。
それは、術後の合併症の一つとなった。
顎の骨が壊死しないかという恐怖。
でも、余命宣告された事により、その恐怖はいつの間にか消えていた。
恐怖が、恐怖を上塗りしていっていた。