「好きを仕事に」という言葉。
社会人になって、ただ目的もなく働いている私にとってこの言葉は自立した円熟した大人が発する言葉だった。
だから当時の私はとにかく自分が好きな事を探し続けた。
ある時、グラフィックデザイナーを募集する就職面接で志望動機を聞かれ、それを伝えたとところ
「好きだけでは仕事はできない」と疲れた顔で言い返された。
そんな昔の事をしばらく忘れてた、ついこの間まで。
思い出したきっかけになったのは、とある自由人を見たからだ。
ヨーロッパで開催される自転車レースの取材とバカンスを兼ねて冬の暮らしにくい南半球はオーストラリアを離れワザワザやってきた50歳にもなる男性。
私は彼がすごく嫌いだった。
弟がパリに住んでるのをいい事に3ヶ月も狭いアパートに滞在、しかもお金がない、なぜなら好きを仕事にしてるから。
そう、肩書きや華やかな生活にこだわってた私はいつしか、働く意味がお金になっていた。
もう彼の顔を見る事はないけど、時々現実が目の前に迫りすぎて、楽しい事の選択肢が少なくなって行き詰まったら何故か彼の、能天気な笑顔を思い出してしまう。