湯浅光章著『世界をつかむ“3つの棚卸”』(言視社)を読む! | 企業のホームドクター「赤ひげ先生」

湯浅光章著『世界をつかむ“3つの棚卸”』(言視社)を読む!

著者は、40年以上にわたり、国際的なM&A~多国籍企業の監査~経営コンサルテイング業務を手掛けてきた、希少な国際会計人(現公認会計士・税理士)である。 

大学在学中に公認会計士試験に合格、卒業後ピート・マーウイック・ミッチェル会計事務所(現KPMG)という当時としては珍しい外資系会計事務所に飛び込み、米国勤務を経て、その後あずさ監査法人(代表社員)にまで上り詰めた華麗な経歴を持つ。 

その豊かな職業体験を通じて得た知見・ノウハウ等を横軸に、そして個人的な生い立ち・キャリア・パスを縦軸に、コモンセンス(共通の知識・価値観)にまで昇華させたものが本書のエッセンスであるといえる。

プロローグは、80年代~90年代の国際的なM&A等を舞台に、日・米欧企業との駆け引き・商慣習・企業体質の違い等を描き、舞台裏を一気に読ませながら、なかんずく「日本企業とは何か?」を考えさせられる。 それは端的に申し上げれば、“リーダーシップ不在”と“戦略不全”(神戸大学・三品和広教授)の姿に尽きる。 このような日本企業の姿は、今返す刀をアジアに向けながら、「21Cに入れば、変わったのだろうか?」と自問せざるを得ない。 【(注)著者の体験とシンクロさせながら、改めてエンロン事件で今は消滅したアンダーセン・コンサルテイング(会計事務所)「ビッグ・チェンジ~企業変革のルートマップ」東洋経済新報社・1999年刊を合わせ読むとき、企業継続の困難さと皮肉さを同時に感じざるを得ない。】

単なるビジネス書と思いきや、一転して著者は“第三の国難”といわれる我が国の処方箋として、グローバルな時代を生きるためにはお互いの価値観・違いを認めること、「日本人がなすべきことは、自分自身を知ることだと思う」と説く。 さらに、東日本大震災における体験(気づき・アイデンテイテイとしての互助の精神)も踏まえながら、著者が提唱する我々が明日を生き抜く方法とは・・・会計人らしく「3つの棚卸」に集約する。 

つまり、ただ時代を漂流し一回性の人生を漫然と生きるのではなく・・・何がしたいのか②何ができるのか③それができる環境なのかの根本を自分に問いかけ、そこからスタートして人生を真剣に生き、ビジネス~ライフワークにチャレンジすることを提唱する。

無論、これは組織人たるか、個人たるかを問わない。 人生の根源的な問いかけであり、究極の自己との対話である。 この点をクリアーせずして人を幸せにすることはできない、ビジネスにおいても会社経営等においても成功することはできないのではないか・・・と筆者は問いかける。(実は自らのキャリアと生きざまで証明されているのであるが)

 余談ながら、著者は筆者と大学(サークル)の同期・同窓である。 彼我の差は覆うべくもないが、筆者は今セカンド・ライフを生きながら、某大学・非常勤講師として≪キャリア・デザイン≫を指導している。 その拠って立つベースは、①「Will」(自分がやりたいこと)と、②「Can」(自分ができること)と、③「Must」(組織から求められること、今を生きるためにとりあえずやらなければいけないこと)の一致するキャリア・パス(キャリア・ビジョン)を描くことをアドバイスしている。 

40年を経て、不思議な出会いと一致(符合)を感じている。 一読をお勧めしたい。


アレンジャー&ファシリテーター:花岡信也