『JET STREAM』
作家が描く世界への旅。
今週は、自然写真家、高砂淳二のフォトエッセイ集『ハワイの50の宝物』より 一部編集してお送りしています。
今夜はその第4夜。
祝福として、ハワイから2つの宝物を、お届けします。
『JET STREAM』の番組WEBサイトでは、高砂淳二が撮影した写真も、ご覧いただけます。
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ハワイでは、レイはアロハのシンボルであるとされ、挨拶や友情、愛情などの印として、お互いに何かの記念日やパーティー、お祝いなどの時にプレゼントし合っている。
スポーツの試合などの時には、優勝した選手が、応援に来ていた友人たちにレイを貰い、あまりにもレイの数が多くて、頭がほとんど隠れてしまう事もあったりするほどだ。
[レイ]
マレイは神聖な気高さを表す葉で、ピカケは愛情を表す花、という具合に、レイに使う花や葉は、それぞれ意味を持っている。
元々レイは、花で出来たものだけでなく、貝やナッツ、葉っぱ、鳥の羽根、骨、海草など、色んな物から作られていた。
古いものには、マッコウクジラの歯をフックの形に削って作られた、酋長クラスの人が身に着けるような、珍しいレイもあったようだ。
最近は、キャンディーやドル紙幣などのものまである。
先日僕は、カナダの先住民の友人に会いに行ってきたのだけれども、別れ際、100年以上前の酋長が着けていたものという、先祖から伝わる大事な首飾りを、僕にくれた。
それは、フック状に曲がったイーグルの爪と、その間にムースの歯が入ったもので、見るからにパワーの詰まった、威厳のある首飾りだった。
先住民たちの住んでいる場所は、もっぱら荒涼とした砂漠のような場所が多いからか、花で出来た首飾りは見た事が無いけれども、ハワイの古い酋長がしていたものと同じようなものを、カナダの先住民の酋長も着けていたというのは、なかなか興味深い事ではある。
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ハワイアンは時々、急に雨が降ってきたりすると、
「ブレッシング(祝福だわ)!」
と言ったりする。
自然現象には何かしら意味がある、とするハワイアンたちの雨を表す言葉は、なんと300ほどもあるらしい。
[雨]
古くから伝わるハワイの詠唱や伝説では、雨は感情や物事を象徴的に表すものと見なされ、軽い霧のような雨は、喜びや生命、成長、青葉などを表し、激しく冷たい雨は苦難や無関心、喪失感、悲しみなどを表す。
例えば、軽い雨として、キリイ、ホオキリ、リリノエ、リハウ、ウワオア、まだまだある。
風に運ばれる美しい雨は、レレフナ、レレ、ウワ・レレアカ、レレフネ。
冷たい雨は、キリハウ、ウアアワ。
にわか雨は、ウワ・ナウル、パキオ、パキオキオ。
土砂降りは、ウワラニピリ、ウワロク。
大粒の雨は、ウワヘキリ、パカク。
飛沫のような雨は、エフ。
ふぅ〜、こんな感じでまだまだある。
また、雨を表す言葉の中には、特定の植物や動物、地名などを入れて、独特の性質や雰囲気を詩的に表しているものも多い。
例えば、カウアイのルカコと呼ばれる雨は、「熟したサトウキビの茎から、乾いた葉を取り去る」という意味を持つし、オアフのポワイハラは、「谷間を巡る深い霧の中の、パンダナスの木」という具合だ。
雨や風、晴れといった天気は、日本語では文字通り"天の気"。
ハワイアンたちは昔から、天の気と人間の気や自然の気が関わり合って、気象として現れている、と捉えてきたのだろう。
そんな観察力も凄いけれども、雨だけでこんなにイマジネーションを膨らませる事ができる感性も、本当に凄いと思う。
【画像出典】