イタリアの冬と言えば、暖かなイメージを思い浮かべる方が多い事だろうが、イタリア北部の冬はとても厳しい。
比較的暖かな花の都フィレンツェでも、時々雪が降る事がある。
そんなトスカーナ地方も、3月に入ると、日を追って暖かくなる。
野山は次第に緑の色が濃くなり、フィレンツェの市場では、行く度に春の野菜が増えていく。
トスカーナの春を告げる野菜と言えば、アーティチョーク(ズッキーニの花)。
それと、菜の花の一種、チーマ・ディ・ラーパ。
もう一つ、忘れてならないのが、ファーベ(そら豆)だ。
[そら豆]
イタリアで売られているそら豆は、日本のものよりかなり小ぶり。
特にそら豆の旬は短く、春から初夏にかけてしか、手に入れる事ができない。
イタリア人は、このそら豆が大好きだ。
春先のこの時期、市場に並ぶと、誰もが待ちかねたように真っ先に買っていく。
このそら豆、茹でると思ったら大間違い。
イタリア人は、そのまま生で食べる。
まだ実がなったばかりの、小指の先ほどの大きさのそら豆を、塩をつけながら齧る。
ちょっと甘く、ほろ苦いこのそら豆を口に含むと、春が来たのを感じるそうだ。
フィレンツェで最も人気なのは、羊のチーズ(ペコリーノ)との組み合わせ。
[そら豆とペコリーノ]
まず、そら豆を鞘から取り出し、口に放り込む。
そこですかさず、ペコリーノを一噛み。
こうすると、生のそら豆の苦味と、ペコリーノチーズのコクと塩気が一体となって、なんとも言えない旨味が口に広がる。
生のそら豆とペコリーノを肴に、トスカーナの赤ワイン。
フィレンツェの春を告げる、見事なハーモニーだ。
【画像出典】