ブルガリアの谷一面に広がる、ダマスクローズの花畑。
早朝、女達は、バラの蕾を手摘みする。
わずか一雫のローズオイルに、100を超える蕾を摘まねばならない。
そのみずみずしいバラの香りは、"黄金の雫"と呼ぶにふさわしい。
南はギリシャとトルコ、北はルーマニアと国境を接する、バルカン半島の国ブルガリア。
ブルガリアと言えば、日本ではヨーグルトを思い浮かべる方が多いだろうが、ヨーロッパではバラの国として知られている。
ブルガリアのバラは、花ではなく、香りを売るバラ。
世界の70%以上の香水が、この国で取れるローズオイルを使っている。
このローズオイルの最大の産地が、バルカン山脈の南に面した渓谷。
古くからこの渓谷で、バラが栽培されてきた事から、"バラの谷"と呼ばれている。
[バラの谷]
バラの谷で、ダマスクローズと呼ばれる、小ぶりで淡いピンクのバラが咲くのは、5月の下旬から6月の初めにかけての、わずか20日間程。
ちょうど今頃、バラの谷は、そのダマスクローズの華やかな花の香りに、包まれている事だろう。
ダマスクローズは、花が開く前、ちょうど蕾が綻びかけた頃が、最も香りが蓄えられている。
バラの谷に暮らす女達は、朝早く、まだ日が昇らない内にバラの畑に出かけ、バラの蕾を1つ1つ手摘みする。
バラの谷では、この季節、午後になるとよくスコールのような雨が降り、翌朝はからりと晴れる。
この独特な気候が、世界一香りの良いバラ、ダマスクローズの秘密と言われている。
【画像出典】