ローマの表玄関と言えば、テルミニ駅。
1日だけでおよそ48万もの人々が行き交う、ヨーロッパ最大の鉄道駅の1つ。
正面のコンコースは、今から70年前に造られた、戦後のイタリアを代表するモダニズム建築である。
[テルミニ駅]
この駅が造られて間もなく撮影されたのが、イタリア映画を代表する名作、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の『終着駅』。
あまりに古い映画なので、ご覧になった方はほとんどいないと思うが、今でもよく使われる"終着駅"という言葉は、この映画が日本で公開されるにあたり、宣伝マンが作った造語。
今なら、流行語大賞に選ばれている事だろう。
これは、英語の映画タイトル『Terminal Station』から取られたものだが、実はこのローマのテルミニ駅、その名の由来は"ターミナル(終点)"ではなく"テルミニ(公衆浴場)"。
駅の近くに、ローマ帝国の皇帝ディオクレティアヌスが造った、公衆浴場があった事から名付けられたもの。
どうやら"終着駅"ではなく、"公衆浴場駅"だったようだ。
このローマ時代の浴場の遺跡を、リニューアルして教会にしたのは、ルネッサンスの巨匠ミケランジェロ。
古代の遺跡の雰囲気を壊さないように、巧みに設計されている。
[教会]
伝説によれば、この浴場を建設するのに際し、多くのキリスト教徒が殉教した。
そこで、この教会にはマルティリ(殉教者)に捧げるため、サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ・エ・マルティリ教会と、長い名前が付いている。
ローマのテルミニ駅を利用する時には、必ず訪れてほしい。
【画像出典】