球面収差の話

話シリーズです。
--

イメージ 1

某社製大口径ズームレンズを開放絞りで使用。
(モデル 小田ひとみ)

このレンズについて、某社のHPやカタログの売り文句を見ると、非球面レンズを使用することによって球面収差を低減させるように補正したと書いてあります。

雑誌やネットでもこのレンズを悪く言う人はあまりいなくて、シャープな絵が撮れると満足している人が多いようです。

実際にこのレンズを使ってみると、開放絞りではメーカーの売り文句とは裏腹に球面収差が盛大に発生しているように思えます。1段絞ってF4としてもまだ若干の残存が見られ、更にもう半段絞ってF4半以上ではほぼ消滅することが判りました。

球面収差は入射瞳径の3乗に比例して増大するので、逆にいえば絞ると急速に消滅するタイプの収差といえます。

なお、収差とはレンズの結像性能を劣化させる要因であり、単色収差と色収差(しきしゅうさ)に分類できます。さらに単色収差は5種類に分類されていてザイデル5収差ともいい、その中の1つに球面収差が分類されています。色収差は2種類あります。

収差のメカニズム等詳細については、話シリーズで記事にすると何回か告知しているのですが、実際に書いてみたら数式ばかりで読んでも面白くなさそうなのでちょっと保留中です。

で、収差は写真としての写りを劣化させる要因なので、光学メーカーは頑張って収差が目立たないように補正しているはずなのですが、全ての収差を完璧に補正することは困難な為、多少の結像劣化が見て取れる場合があります(残存収差)。

球面収差の残存は、撮影した絵としてはフレア状の滲み(ハロ)として表れることがあり、シャープ感のない眠くてボヤけた絵の量産に繋がります。

しかし、この現象はポートレート撮影としては逆に柔らかい印象としてみることもできるため、その残存程度がわかっていれば球面収差そのものを逆手にとって、それを生かした撮影に繋げることができれば欠点となりません(もちろん程度問題です)。

掲載した作例では何枚も撮ってピントはキッチリ合わせているのですが、いくら撮ってもこれ以上のシャープ感は出ません。見方によってはぼやけた感じでダメだと思う人もいるでしょうが、なにか不思議なベールに包まれた柔らかい感じと受け止めることもできそうです。

※ソフトフォーカスレンズは球面収差を応用した光学系です。