話シリーズです。
(話を簡単にする為に色空間をRGBのみに限定して話しています)
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「色かぶりってよく聞くんだけどよくわからん」

うん、そうだね。慣れてないと絵を見ただけで何色にどの程度かぶっているかなんてわからないね。

「というか、その前に色かぶりそのものの意味がわからん」

あぁ、そうだったか。。。
簡単に言うと、正常な色味を基準としたら、それに対して全体的に特定の色が多すぎたり少なかったりして、不自然なキモイ感じの色味になっているということです。色転びともいう。

で、絵を見てなんとなくおかしな色だなっていうことはわかっても、それが何色が多くてそうなっているとか、足りない色はどれかなんていうのは目視ではわかりにくい。
かぶり方(転び方)が微妙であればあるほど目視での判断は難しくなると言ってイイ。

そこで、パソコンを使って色の転び方を数値化して見極めるやり方を教えよう。
これは無彩色(白~グレー~黒)のRGBピクセル値は常に揃っているという特徴を利用する方法です。
(RとGとBの値が同じということです)

一応作業にはいる前に基本だけ説明しとくけど、画像の色はR(赤)、G(緑)、B(青)の三色の濃淡を組み合わせて色を出していることを知っておかなければならない(加法混色)。
まぁこの辺はそこいら辺の本やインターネットのページでも検索すればすぐに出てくると思うから研究してみるといい。

8ビットモードなら各色の濃度はそれぞれ0~255の256段階ある。
0が一番弱くて255がフル発光。
RGBの3色とも0なら真っ黒で潰れた状態、3色ともフル発光(255)なら真っ白で白飛びと同じです。

その組み合わせから表示できる色数は、、256*256*256→16,777,216色。
いわゆるフルカラー、24ビットカラー、1600万色とか16M(メガ)色ともいう。

さらにその中で無彩色はR、G、Bが同じ値をとる256階調のグレースケールになります。

デジタルカメラで白いものを正しい露出で写して、色かぶりが全く無ければその白い部分のRGBピクセル値は各色とも揃っているはずで、しかもその値は255側に近くなっているはずです。

グレーのものを写したときも同様に各色のRGBピクセル値は揃っていますが、値自体は125とか96とかグレーの濃度によって変ってくると思います。グレーの濃度が白に近ければ大きい数値、黒に近ければ小さな数値になっているはずです。

しかし、実際に撮影してみると、撮ったときの光源によって白いはずの物が青味がかったり、他の色に転んでいることがあります。これが色かぶりです。

これを画像処理ソフトに画像を食わして、白やグレーの部分のRGBピクセル値がどうなっているか表示させてみればかぶりの状況が一発でわかります。

例えば被写体がグレーなのに撮った画像のRGBピクセル値がR=125、G=96、B=98などとなっていれば赤だけが強く出ている、つまり赤かぶりということなどが確かめられます。

「で、それがわかるとどうなるって言うんだい?」

まぁ、ココまでだと単に何色にかぶっているかっていうのと、その程度がわかるだけ。

んで、その後それを修正するときにはこの情報が大いに役立つ。
慣れてくれば絵を見ただけでこれは赤かぶりだなとかわかるようになるんだが、そういうことが判らないままで色味の修正に手をつけると、メチャメチャになること請け合い。
結局元に戻すか、機械任せの自動処理でお茶を濁すことになる。

かぶっている色と程度がわかれば、それを補正するのは比較的簡単。
多すぎる色を減らすか、少ない色を増やしてRGBのピクセル値を揃える。基本的に白を基準とするならRGBの一番大きい数字に他の二つを合わせればいい。

もちろん、絵の雰囲気とかなんとかによってわざと色味に変化をつけるのはカメラマン次第なので、RGBピクセル値を参考にしながら、実際の画像の色合いを調整するのはOKでしょう。

「早速実技のほうへ」

わはは、そうだね。能書きより実際にやってみると理解も深まるね。

操作の流れとしては、
(1)画像処理ソフトの起動
(2)対象画像の読み込み
(3)目視による無彩色の発見
(4)無彩色のRGBピクセル値の目視確認
(5)トーンカーブによる補正
くらい。実際に色味をいじるところは(5)だけだね。

「SILKYPIXの自動ホワイトバランスに食わせるのぢゃだめか?」

ダメぢゃないけど、それが上手くいかなかったときにココで説明する方法を応用したりして再調整すればいい。オートしか知らないと、上手くいかなかったり、さじ加減でもうちょっと変更したいっていうときにバンザイ状態になってしまう。
常にマニュアルでやれとは言わないけど、便利なオートと融通の利くマニュアルをうまく使い分けることが出来れば成功といえるのではないでしょうか。

ぢゃあ、今回もPhotoshop-CS3でやってみようか。
今回の操作もPhotoshopの以前のバージョンや、無料ソフトのGIMPでもOKですし、写真現像ソフトSIKLYPIX-Developer3.0でも同じに出来ることを確かめています。

ただし、Photoshop-Elementsはチョットだけ違います。
標準設定のPhotoshop-Elementsにはトーンカーブの機能が無いので(5)のステップを違ったやり方で代替するか、無料プラグインなどを使ってPhotoshop-Elementsにトーンカーブを実装するとなどの方策が必要になります。

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以下詳細な操作手順の説明。

(1)と(2)は自分で考えてやってくれ。ソフトの立ち上げくらいできるだろ。
(3)これも特に難しい操作は無い。読み込んだ絵の中で無彩色部分を目視で見つければいい。
白飛びしていないところで白に近いところを探すか、グレーっぽい筈の所を選びます。

(4)メニューから「ウィンドウ」→「情報」とたどって情報パレットを表示します(F8キーでも一発表示できます)。

イメージ 1

(モデル 石井ひな@Fresh撮影会)

そんでカーソルで無彩色部分をなぞってみます。マウスのボタンは押さなくていいですよ、ただなぞるだけです。
このときに情報パレットにRGB値が表示されるので、その値のバラケ具合を確認します。
このケースでは衣装の縫い目の白いと思われる部分を無彩色のターゲットとしています。RGBピクセル値はR=185、G=209、B=241で、青が多過ぎて、赤も足り無さそうです。

(5)メニューから「イメージ」→「色調補正」→「トーンカーブ」と選んでトーンカーブを表示します(Ctrl+Mでも一発表示できます)。

イメージ 2

トーンカーブの使い方は人それぞれでコレというものがなかなかないし、ヤマカンで適当に上下させている人も多そうです。
しかし、万全ではないとはいえ、RGBピクセル値という指針を参考にしながら使えるとすれば、あまり当たらない予想で行ったり来たりするよりは確実性が高まります。

で、今回はRGBピクセル値で得た情報から、青を減らして赤を増やしたら良さそうだと判断しました。ターゲットがもっと明るい白に近ければ一番多い数値に他の二つをあわせると言う事もでも可能です。

で、とりあえず一辺にいろいろやるとメチャンコになりそうなので、一旦青だけ減らしたところでどうなるか様子を見ることにしましょう。

なお、色味を変更する為にトーンカーブをいじる場合は、よっぽどのことが無い限りその補正量はほんのチョットです。ガバッと動かすと余計おかしくなります。

トーンカーブのチャンネル欄からブルーを選び、続いてカーブの右上端をマウスで掴んで下へほんのチョットだけドラッグアンドドロップします。
これで青の成分が減りました。

この段階で画面の画像の色味を見て、まだおかしければ情報パレットのRGBピクセル値を再び参照します。
今回の例ではまだ補正が足りない感じです。RGBピクセル値を見ると緑と青はだいたい揃ってきましたがやはり赤が足りないことが分かったので赤を増やすことにしました。
トーンカーブのチャネルで赤を選んでカーブの右上端を掴んで左にドラッグアンドドロップします。

無彩色のRGBピクセル値はキッチリそろうまでやる必要はありません。
補正の方向と量を決めるための指標のひとつと考えれば結構気楽に出来ます。

「やり方はだいたいわかったけど、どうしても無彩色が無いときは???」

ぎゃー、鋭いね。
確かに絵の中に無彩色が無いこともある。
そういうときは肌色を使う。肌色は無彩色とはいえないのでRGBピクセル値は揃ってないけど、きれいな肌色のRGBピクセル値はだいたいこんな割合だというのを覚えておけば参考にはなる。

例えばグリーンが175~200未満というのを基準として、レッドはグリーンより多くて、ブルーは逆に少ないとかそんな感じ。でもこれは超一例で、写っている人の肌の色とか実際の明るさなどによってもずいぶん変わってくるのでその辺はチョット経験が必要です。