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近所の八百屋とかスーパーのシャッターを見ると、開けるときは下のほうから上に向かってガラガラガラ~って開けてますよね。閉めるときは逆、上から下におろします。

カメラのシャッターはコレを超高速、超小型にしたものなのでしょうか。

まさかそんなことはないです。もしそうだとしたら、フィルム面(CCD)の下のほうはシャッターが上がり始めてから一旦全開になって、その後全部閉じ終わるまでず~っと光が当たっている事になり、逆に上のほうはようやく上がり切って光が当たりだしたと思ったら、もうすぐに下り始めることになってしまい、フィルムの場所によって露光時間が変わってしまいます。
(フィルムの下のほう→露出オーバー、上のほう→露出アンダーとなる)

で、それでは上手く撮れないので、カメラのシャッターは2枚組になっていて、開ける為のシャッターのほかに閉じる為のシャッターが仕組まれていて、連動して動くようになっています。

しかも、多くの機種では八百屋のシャッターとは逆に上から下に向かって開き(シャッターが下に落ちるイメージ)、閉じるときは更にもう一枚のシャッターが上から降りてくるような方式になっています。
(機種によっては下から上とか右から左などもあります)

カメラでは、シャッターの機械的に動作する遮光板は折りたたみ式になっていて、閉じている時に収納場所が最小限で済むように工夫されています。

ツウな人達はこの遮光板のことをシャッター幕と言います。

開ける為のシャッター:先幕(さきまく)→全閉状態~上から下に落ちながら開く。
閉じる為のシャッター:後幕(あとまく)→全開状態~上から下に落ちながら閉じる。
(追いかけっこです)

0.初期状態では先幕は全閉じ、後幕は全開になっています(完全に遮光されています)。
1.先幕が上から下に向かって開き始め、フィルム面の上のほうから光が通過し始めます。
2.先幕が全開まで開き、フィルム面の全体に光が当たります。
3.指定されたシャッタースピードに応じて感光が継続されます。
4.後幕が上から下りてきて、フィルム面の上のほうは感光を終了します。
5.後幕が全閉じになり、フィルム面全体の感光が終了します(完全に遮光されています)。
6.次のレリーズに備え、先幕・後幕とも初期状態に戻ります(0へ戻る)。

で、これはシャッター速度が比較的ゆるい場合の話。
シャッタースピードが速くなってくると、ステップ3の全開の待機時間がどんどん短くなり、しまいには先幕が全開になる前に後幕が閉じ始めます。

シャッタースピードをもっと上げてゆくと、先幕が開き始めた直後に後幕が追いかけるように閉じ始め、フィルム面は細いスリット状の隙間でフィルム面をなぞるように感光します。ステップ1の途中で2と3を吹っ飛ばして4が実行される感じです。
シャッタースピードが高速なほどスリットの幅が狭くなります。

サクラが使っているミノルタα9というカメラでは、最高SS=12000(35mmフィルム版では世界最高速)ですから、目視ではもうシャッターが開いているのかどうかわからないくらいです。
この場合ですと、先幕が開き始めてその直後、約1/12000秒後に後幕の閉じ動作が開始されます。
なお、余談ですがココの1/12000秒は「約」で合ってます→表示上のSSは概数なのです。

先幕と後幕の速度(幕速)は共に一定でなければなりません。ここにバラツキがあると、露出にムラが出てきれいに写りません。

ところでストロボを使った撮影の場合は、どのタイミングで発光するのでしょうか。
通常発光ですと、先幕が全開になったところで発光されます。発光時間はほんの一瞬、フル発光でも1/10000秒以下くらいです。

普通ならこれで問題ないのですが、シャッタースピードが高速になった場合では、先幕が全開になったときは既に後幕がもう半分とか、そのくらい閉じかかっていますので、そのタイミングでストロボを発光してしまうと、ストロボ光は後幕でケラレてフィルム面の上とか下の一部分だけ超ドアンダー(真っ黒)になってしまいます。

ストロボが通常発光し、後幕でケラレない最高のシャッタースピードを同調速度といい、X(エックス)で表します。機種によって違いますが、だいたいX=125か、250位になっていると思います。高いカメラではもう少し速い機種もあります。

通常発光ではXより早いシャッターを切ることは出来なくなっています。

X同調速度より早いシャッターを切るためにはFP発光に対応したストロボを使用します。
FP発光可能なストロボを使用してSS=1000などの高速なSSで撮影すると、先幕が開き始める時点から後幕が全部閉じ終わるまで連続して発光し続けるので、細いスリット状の感光でも適切に撮影することが出来ます。

これがハイスピードシンクロ撮影です。

この他にも、シャッタースピードとストロボ発光の仕方を組み合わせることで、様々な撮影技法が考えられます。また機会がありましたら記事にしていきたいと思います。

なお、FP発光のFPはFocal Plainの略で↑で説明した2枚のシャッター幕を使用したシャッター形式のことです。フォーカルプレーンシャッターなどといいます。

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冒頭の画像はフィルムカメラ(α9)をSS=60くらいにして連写し、デジカメ(αSweetDigital)でシャッターが落ちる瞬間を狙って撮ったものです。ISO感度3200の超高感度撮影ですのでノイジーな点はご容赦ください。
撮れたのは先幕が開ききって、後幕が真ん中あたりまで落ちてきているところと思われます。